「Christmas」 | 我ここに在りてここに無し

我ここに在りてここに無し

青きBOUGAの果て

ひとりごとのように

詩と小説を書き綴ります。

何か心に響くものがあれば

それだけで。





車から街の煌びやかなクリスマスのイルミネーションを女性は眺めていた。助手席に置いたバッグから携帯電話を取り出した信号待。


鳴るはずの無い着信音と点滅する男性の光を待っていた。


贈ることのない彼へのクリスマスプレゼントを助手席に置き、夜の街から海へと車を走らせていた。


すれ違う車のライトやクラクションは、女性には何も感じ無かった。


二人寄り添い見つめた思い出の浜辺に着き、車から両脚を滑らすように降ろし車のドアを閉めた。


潮風は何故か温かく感じられた。


女性は、海へ向かって歩き出していた。


ハーフコートの襟を立て、手には携帯が握られていた。


何度彼に電話しようとしたか。


過去のメールを何度読み返したことか。


しかし、その時は過ぎていた。


ただ、打ち寄せる静かな波音が彼女を包んでいた。


砂地に彼の名前とハートのマークを描いては消し、そして、また描く。


小さな流木で描く名前が途中で止まった。


彼女の手を、上から覆い包むように温かく厚い男性の手が握っていた。


その手と腕をそのまま女性が自分の胸に引き寄せると同時に、男性は女性を背中から抱きしめていた。


鳴るはずの無い、光るはずの無い彼女の携帯の着信シグナルは、沖の灯台の光よりも二人の歩む道を照らしていた。


きっと。。。二人で歩いていける。。。


何も言葉は無く。。。ただ抱きしめあう二人を。。。


冬の月が照らしていた。。。