59.A hasty type | 我ここに在りてここに無し

我ここに在りてここに無し

青きBOUGAの果て

ひとりごとのように

詩と小説を書き綴ります。

何か心に響くものがあれば

それだけで。




 




錬太郎は、その女性の顔を見据えた。声だけは。。。どこかで。。。


ん?。。。君は。。。







「私が誰だか知ってる?声は聴いてたでしょう。。。お話もしたわよ」




「君。。。もしかして。。。ヒマちゃん。。。あわてんぼうのヒマちゃん?アッ君と一緒に自販機の前で話し掛けていた。。。」




「あったりー♪」


「えっ、君。。。実体があるの?」


「失礼しちゃうわ。もう、私だってアッ君と一緒よ。もとは人間だったもの」


「君たちがどこから来たか知らない。僕ら人類を創造したということだけは聞いたよ。。。アッ君からね」


「そうよ♪でも。。。”愛”って知らなかったの。。。アッ君も言ってたでしょ。。。ほら。。。自販機伯爵がね。。。」


「今はそんなことより、二人はどうしたんだ!どこへ消えたんだよ!今やっと再会できたんだ。。。」


「う。。。ん。。。錬太郎。。。ごめんね。。。ヒマはあわてん坊でさぁ。。。アッ君はいたずら好きだし。。。二人ともどっか。。。ちぐはぐなんだよね。。。ごめんね」




「なに、なんだよ。。。それ。いいからちゃんと説明しろよ!」





ヒマちゃんの顔立ちは、裕子と泉そっくりだった。背格好も。。。そして薄紫色のワンピースを着ていた。ただ、裸足だった。髪はショートだが、確かに彼女達とそっくりだ。





「実はね、二人とも私と一つになったのよ。アッ君は人間世界を創造し、ヒマは自然の生き物。。。つまり植物とか人間以外の生き物を創造したの。でもね、植物の中にも人間と同じ感情をもつもの達が生まれて来たのよ。それが彼女たちなの。人間になりたいって。。。不思議なの。。。彼女達。。。草花の中にも人を愛する心があるのよ。。。私はそんなプログラムをした覚えはないんだけど。。。だから、一度だけ。。。その願いを叶えてあげようって思ったの」






 

 裕子が落とした紫陽花柄の傘を拾った。







「初めは、アッ君も反対していたのよ。自分たちに持ち合わせない”愛”を草花に持たせるなんて。。。まして人間にするなんて反対だったみたい。。。世界が混乱するからってね。でも、何?人間も草花も。。。お互いに”愛”を受け入れあっている。木だってそう。。。でしょ!」



「なんだ、じゃこの世界で今まで起きたことは君らが原因なのか?」



「きっかけはそうかもしれない。でも、その後は地上に生きとし生けるもの、形あるもの全てに心が生まれ始めているの。君たちの祖先には人間とオオカミ、人間と月。。。そんな結ばれ方もあったのよ。。。今じゃ考えられないでしょうけどね。。。」


「そうなのか?それより。。。俺の心や彼女たちの心はどうなるんだ。君らみたいに、勝手に人間や植物、自販機なんかになれないんだぞ!心も身体も一つなんだ。一つしかないものが、たった一つのものを大切に守ろうとして来たんだ。。。その気持ち。。。その心はどうするんだ!勝手なこと言うな」




「そうなの。。。アッ君にも困り果ててるのよ。瑠菜ちゃんと一緒に暮らしてるのよ♪」


「はぁ?なんだよ。。。それ。なら裕子と泉も返してくれよ。今やっと会えたんだ。ヒマちゃんもそれくらい出来るだろう!」


「ごめん。それは無理なの。だって私の分身だもの。。。分るでしょ。。。私なの。。。」


「ヒマちゃんなの?なんで。。。」









 錬太郎は困惑した。。。泉と裕子。。。二人が。。。目の前にいるヒマちゃんという創造主の分身だった。。。とは。。。




 どうする。。。錬太郎。。。





 いくらいい加減な錬太郎でも。。。これから自分がこの世界でどう生きていけばいいのか戸惑い始めていた。自分が選んだ世界。しかし、以前の世界での生活はどうするんだ。。。







「ヒマちゃん。。。俺が以前暮らしていた世界はどうなるんだ?」







「あっ、あの世界ね。ごめん。。。ヒマは慌てん坊でさぁ。。。アッ君も何も言ってくれなかったのね。。。実は。。。今、この瞬間一つになっちゃったの。。。」






「そっ、それって以前の世界で暮らしていた。。。俺が住んでいた自分のマンションに帰れるってこと?」






「そうよ。。。私も一緒にね」




「それは困る。いや、違う世界だから良かったけど、俺には。。。幼馴染の茂木和也はいいけど。。。今野美由紀との生活がスタートし始める時だったんだ。君が一緒に来たら混乱する。いや、でも君は裕子と泉が一つになった人間?愛していたことは事実だし。。。俺にどうしろって言うんだよ。。。勘弁してくれよ。。。」




「君は?。。。ヒマちゃんはどうするの?。。。」




「知りたい?^^。。。錬太郎。。。貴方にも私たちと同じ力を持っていることを忘れないで。。。身の回りにあるもの全てに心が芽生え始めていることを。。。貴方は怪我や病気をしたことがある?」





 ん?そう言えば。。。前にも少し感じたことがある。。。怪我や病気に掛かったことなど一度も無い。。。自分がいったい何者なのか。。。





 錬太郎は。。。二人の創造主と一つになった世界で生活を始めることになるのか。。。




 ただ。。。一つの心だけは。。。まだ。。。二つの世界を彷徨っていた。。。






つづく