「お帰り。。。」
裕子だった。
錬太郎は
「ゆうちゃん。。。」
と言い掛けた。
裕子は錬太郎に駆け寄り。。。
「生きていたんだ。。。うん。。。うん。。」
裕子は覚えている。。。あの出来事を全て。。。覚えている。
紫陽花の傘をアスファルトに放り投げ。。。錬太郎の胸に顔を埋めた。
「錬太郎さん。。。貴方を好きになって良かった。。。」
「君。。。全て知っているのかい?」
「泉さんから。。。全て。。。」
そう言いかけて、錬太郎に背を向けた。
「私。。。待っていました。本当は私。。。消えていたかもしれないのに。。。ありがとうございました。泉さんや。。。他のみなさんの支えがあって。。。私。。。ここにいるんですよね。。。私は、まだ。。。この世界で生きていくことができるんですね。。。錬太郎さんのそばで咲いていることができた。。。それだけで幸せでした。これからも咲き続けられます。錬太郎さんのそばで。。。」
「えっ。。。君。。。えっ。。。こっちを向いて。。。顔をよく見せてくれ。。。」
裕子は零れる涙を見せたくなかった。。。自分が人間として生きていくことと、一人の人間を愛し続けること。。。ただ、その願いだけを頼りに生きていた。。。裕子。。。
錬太郎は裕子の肩を背中からそっと抱きしめていた。。。
裕子の肩は。。。僅かに震えていた。。。
二人は、暫くその場に立ちすくんでいた。
裕子が言った。
「額紫陽花。。。終わりますね。。。」
遠くから。。。近づく靴音が聞こえ、錬太郎は顔を向けた。。。
小雨が降り始めていた。
泉だった。
自販機と街灯の灯りが照らす中、錬太郎と向き合うように立っていた。
「錬太郎。。。」
と声を泉は言った。裕子は俯きながら
「さぁ、行って。錬太郎さん。。。私はもう大丈夫です」
えっ?
二人の容姿を見て錬太郎は言葉を失った。。。
泉と裕子は。。。髪型や化粧が違っていただけなのか。。。そんな。。。何故気付かなかった。。。
声の響きに違いはあるが。。。
錬太郎は二人を見比べていた。。。似ている。。。
二人は。。。
泉と裕子は互いに近づき
「やっと。。。一つになる時が来たようね。。。ゆうちゃん」
泉が裕子に言った。
「はい。やっぱり一人の人を二人で好きになっちゃ錬太郎さんがつらそう。。。」
と、裕子が最初に泉の肩に手をのせ、互いに近づいた。
周囲は薄紫色の淡い光に包まれ始めた。そして、あのコインを入れた時と同じ光に包まれた泉と裕子の二人は。。。
その後に一人の女性が立っていた
「。。。君。。。は。。。」
「命に名前って。。。あると思う?あわてんぼうなの。。。あたし^^」
と、その女性が言った。。。
つづく