「ん?地球は救えたのか?みんな大丈夫か?」
と錬太郎が声を張り上げて周りを見渡した。
するとマスターがカウンターの中で眠そうな顔をしてグラスを拭いていた。
「ん?マスター!いやホルス!タマさんやほかのみんなは大丈夫?」
と錬太郎が血相を変えていった。
「なんのこと?錬ちゃん。しこたま酔ってたよ。眠ってたから、もうみんな帰ったよ。変なこと言ってないで、さぁ、朝の5時だよ。シャキッとして。大丈夫?またエジプトか何か神話の夢でも見たんじゃないの?妄想かな?しっかりして!はい、水!」
とマスターが呆れ顔でコップを差し出した。
「ちょっ、ちょっと待って。いや、俺たち地球を救う使命があったろう。ほら、ネテルが言ったじゃないか!俺が見えない世界から戻って、それでみんなに説明してさぁ!俺が見えない世界でトラになってこの世界と見えない世界の番人のウルシュになって、マスター!がホルスでさぁ。聞いてる?!!!」
と声を大きくして言った。
マスターは錬太郎の言葉には耳も貸さず
「店閉めて家に帰るよ!錬ちゃん、ほら!帰るよ!」
と言った。二人は店を閉めて出ようとした。錬太郎が席を立とうとしたとき足元が少し濡れているのに気づいた。不思議に思ったが、頭は割れるように痛く、とりあえずフォリナーを出た。マスターと別れた後、錬太郎は一人肌寒い公園のベンチに座っていた。
桜の花びらが地面に敷き詰められていた。
途中コンビにで買ったホットコーヒーを両手で温め口に含んだ。
いったいどうなってるんだ?全部が夢?洒落か?そんなはずはない。
でも、マスターは何も覚えていなかった。他のみんなも同じなのだろうか?そういえば、錬太郎も自分の記憶が途切れているのに気づいた。みんなと共に光に包まれた後の記憶が無かった。あの後、いったい俺はどうなったんだ?
錬太郎は混乱した。自分が今いるのは見える世界。ならば、見えない世界へ戻らなければならないはず。だが、まったく自分にそんな気配も焦りはない。
なぜだ?
錬太郎の記憶が揺らぎ始めていた。
すると錬太郎の背中をポンッと誰か軽くが叩いた。振り返ると、男の子が立っていた。
ネテルだった。彼は身体の傷を隠しもせず無邪気に微笑んでいた。
そして、錬太郎に一冊の本を手渡し、ある言葉を告げ朝靄の中に消えていった。
「。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。」
錬太郎は、その言葉で自分を取り戻し、生きる力を得たように感じた。
人の記憶、それは見えない世界で全て繋がっていた。
現実の見える世界では、目で見て触れることのできるものに囚われ、偏った世界になっていく。
繋がりの無いものなど何も無い連鎖の世界。
誰ひとりとして、独りで生きることすらできないこの世界。
心の揺らぎは記憶の世界全てを揺らし、現実の世界に起こりうる物理的な現象にまで力を及ぼす。
神話は人間のありようを伝え、生きる術を伝えていた。
我々人間は忘れてはならない。過去が今を成していることを。
そして確実な遠い未来を憂うるより、近い明日を変えるため今を精一杯生きるしかないということ。
一つ所に住処などない、彷徨える人々。
全ては一瞬、しかし、全ては確実な未来へと繋がっている。
明日を変えるのは今日、今この時しかないということ。
錬太郎は、そう思った。
手に古びた本を一冊携え朝日に向かい静かに立っていた。
2030年 春 桜を眺める季節が来たら 僕らを思い出して下さい。
月光族三銃士と仲間達は、彷徨える人々を救う旅を、これからも続けていくのかもしれません。
光りの中、子供達が叫んだ言葉。
ペル(家)・アァ(大きい)。。。。。。
それはファラオ。。。世界は一つの大きな家に集うもの
あるもの全て、地球に住む家族なのかもしれません。
音は風に乗り、香りは頬をなで、心は雲に乗り。。。
このフォリナーに集う者達、その時の心がいつか解き放たれ、また洒落気たっぷりなドラマを見せてくれる日を、一人待ち望みながら前編を閉じます。
フォリナースタッフ一同、みなさんお目にかかる日を心待ちにしながら。。。後編を待ちます。。。拙い物語をお読み下さった皆様に心から感謝します^^
。。。みなさんありがとう。。。
マーク^^