50.「Pickles」 | 我ここに在りてここに無し

我ここに在りてここに無し

青きBOUGAの果て

ひとりごとのように

詩と小説を書き綴ります。

何か心に響くものがあれば

それだけで。




 「仕方ないわね。。。錬ちゃんが決めたんだから。。。」

 とタマさんはポツリと呟いた。錬太郎はタマさんの顔を見て自然と頷いてしまった。錬太郎の。。。この頷きはいったい何を意味しているのか?。。。つい頷いてしまったが。。。錬太郎自身。。。自分の心の中で頷く理由はあるものの。。。なぜタマさんは。。。“錬ちゃんが決めたんだから。。。”と言ったのか。。。?不思議たった。  

 錬太郎は。。。拙い言葉を尽くして言うなら“今の自分は見えないものを考える夢のストーリーの中で旅している”。。。とでも日記に書き残したらいいのか。。。と。。。

 ただ、その旅の終わりは。。。どこにあるのか。。。それは錬太郎と老紳士しか知らなかった。。。 一人心の中で。。。これでいいんだ。。。と。。。

  自分の気持ちと。。。勝手な思い込みとは。。。別物だ。。。だが。。。今は。。。一つのように感じていた。。。錬太郎は。。。ただ。。。一人を守りたかった。。。

 それが彼女に辛い想いをさせると思えたが。。。自分で決めたこと。。。

 恭子は、錬太郎の様子を見て何かを感じつつあった。  

 「段ちゃん。。。段ちゃんってお守りって持ってるの?」

 と錬太郎が聞いた。

「お守り?。。。ん。。。あっ、一つだけある、あるよ!お稲荷さんのお守り。それと。。。石。。。うん、そうそう。。。石。おやじから貰ったんだ。俺の実家は山奥なんだ。。。よくおやじと一緒に山奥まで行ったよ。何でも鷲の巣から落ちてきた石だから大事にしろって。。。おやじから貰った。よくわかんないけどご利益がある石だから。。。いつも胸から下げてるお稲荷さんのお守りの中に入れてる♪。。。なんで?」と段五郎が言うと「そうか。。。それ。。。大事にしなきゃな。。。」

 としんみり言った。  

「錬ちゃん。。。なんだよ。。。急に。お守りの話しなんか聞いて。。。?」

 と段五郎は錬太郎を見た。

「いや、俺もいつも持ってるんだ。おふくろから貰ったんだよ。親って。。。本当に子供のことを按じてくれてるんだな。。。って。」  

「ところで♪タマさん!タマさんの彼氏って。。。今まで何人いらしたんですか?♪」

 と諒子がもう一度聞いた。

「ふふっ♪そうね。。。星の数ほど。。。って言いたいところだけどね。。。本当に愛した人は。。。たった一人。。。さっき夢に出てきたのよ♪。。。他はアドリブ人生の遺産かな?」

 とタマさんが答えると、諒子はそれを聞いて

「ワァオ♪。。。素敵!私も。。。たった一人でいいから。。。愛する男性と出会ってみたいな。。。♪」

 と弾むように言った。

「そうよね。。。きっと近くに。。。自分では気が付いていないのかもしれない。いつも側で見守っていてくれる人が。。。どこかに。。。きっといるわよ♪」

 と恭子が言った。

 すると諒子はバーボンを口に含み。。。

「でも。。。そんなに都合良く見つからないもん。部長!部長!。。。紹介してください♪。。。部長♪。。。」

 。。。おいおい。。。酔いが急に回ってきたのかな?絡むのは勘弁勘弁。。。

「段ちゃん。。。お~い。。。段ちゃん♪」

 と錬太郎は段五郎に振った。

 段五郎は顔を紅潮させていた。マジ???。。。錬太郎は少し驚いた。。。この場を洒落か冗談にしようと思ったら。。。

「段五郎!恋に歳の差なんてないと思う。鯛焼き焼いて。。。うん十年。。。真面目な男子。。。ここにあり!」

 と宣誓した。。。が。。。諒子はテーブルに頭を載せ眠り始めていた。

 ふーっと。。。錬太郎はため息をついた。段五郎は立ったまま。。。諒子の寝姿を見てうな垂れた。

「まぁ。。。段ちゃん。。。一息ついてさぁ。。。お互い歳なんだから。。。一杯おごるから。。。」

 とマスターが段五郎を慰めていた。そんな様子を恭子は穏やかに見ながら、錬太郎の隣の席に移ってきた。

 恭子はテーブルの上に子安貝を置き。。。それを見つめながら言った。。。

「今夜は。。。記憶じゃなく。。。今。。。この瞬間を。。。私たちが止めている。。。そんなように感じる。。。錬太郎。。。」

 と言った。  

 マスターも段五郎も。。。そして諒子も。。。老紳士のことは記憶にないようだった。タマさんは。。。なぜ。。。あんな。。。俺に頷きを誘うような。。。言葉を掛けたのか?。。。錬太郎は暫し考え込んだ。。。  

 錬太郎はブリッキー・ヌウ(鼠の糞)という世界最高の唐辛子に耐えられるほどではなかったが。。。卵のピクルスに。。。今夜は。。。むせることは無かった。。。

つづく