49.「A shadow」 | 我ここに在りてここに無し

我ここに在りてここに無し

青きBOUGAの果て

ひとりごとのように

詩と小説を書き綴ります。

何か心に響くものがあれば

それだけで。



 タマさんは転寝から目が覚めたようだった。目じりから。。。少し涙が零れた痕があった。

「おや。。。みなさんどちらへいらしてたの?」

 と店内へ戻ってきた面々を見て言った。すると段五郎が

「花火!線香花火してたんだよ。月明りの下でね。タマさん。。。ムニャムニャ。。。寝言聞こえてたから、そのままほっといたの」

 と言った。

 「ふーん。。。」

 とタマさんは酔っているのか。。。眠いのか。。。まぁ、どちらでもいいが幸せそうな表情をしていた。 恭子は。。。兎の目を見せないように俯きかげんで錬太郎と共に入って来た。諒子は「ほんと。。。まだ春にならないけど。。。こんな時期に線香花火なんて。。。とっても綺麗だったな。。。またやりましょうよ♪」と屈託の無い明るい顔で言った。

 恭子と錬太郎も、その言葉に誘われ笑顔で答えた。 マスターと段五郎はなにやら話し込んでいた。

「どうもおかしいんだ?。。。」

 とマスターがみんなに問いかけた。

「私はグラスを人数分しか出さないんだ。いつもね。。。」

 と首を傾げていた。段五郎が言った。。。

「それで。。。マスターが言うには、グラスがひつと多いんだって!ほらっ、錬太郎の隣にバーボングラスが一つあるだろう。錬太郎の隣って。。。誰か座ってた?」

 錬太郎は恭子に目を向けた。その時タマさんが。。。

「人間の頭なんていい加減なもんさぁ。。。マスター。。。きっとそこには私の昔のダーリンでも座ってたんじゃなんい?だって。。。私。。。いま夢を見てたもの♪背のすらりとした紳士だったのよ。。。彼♪ふふ。。。」

 と微笑みながら言った。タマさん。。。錬太郎と恭子はタマさんを見た。

「タマさんの彼氏って。。。何人いたんですか?」

 と恭子が茶目っ気のある表情で聞いた。

「あら、聞きたいの♪ここのフォリナーの住人にも聞かれたことがないのに。。。まぁ、今夜は特別に。前夜祭だもの♪」

 と70歳を過ぎた女性とは思えないほど弾む表情で答えた。  

「俺、俺だってあるんだよ!諒子さん♪。。。」

 と段五郎。。。負けじと言った。

「やめといた方がいいんよ。。。段ちゃん。またいつもの人のことだろう。。。小学校5年生の時の!それは彼女じゃなくてさぁ。。。」

 とマスターが言った。

「恋に歳なんか関係ない!俺にとっては彼女だったの♪。。。!!!」

 と。  

 いつものフォリナーの宴に戻っていた。  

 恭子は、穏やかな心の時を感じているようだった。タマさんは錬太郎を時より見ていた。その時だけは、いつもの穏やかな目とは少し違うように錬太郎は感じた。タマさんが席を移り錬太郎の隣に座った。

「よっこらしょ♪と。。。ふ。。。年寄りに夜更かしはきついわ。。。ねぇ。。。錬ちゃん♪」

 と話し掛けてきた。  

 タマさんはカウンターのバーボンボトルを見ながら。。。錬太郎に寄り掛かり。。。小声で。。。

「錬ちゃん。。。あなた。。。影。。。」

 と言い掛けたが。。。その先の言葉は無かった。話すのをためらったように。。。錬太郎はタマさんを見た。  

 タマさんは、何を話そうと。。。影。。。


つづく