「錬ちゃん。。。ありがとう。。。」
と恭子が考え込んでいる錬太郎に小声で言った。段五郎は。。。そろそろ店に帰ると言い、諒子も目を覚ましたのでマスターは二人を途中まで送っていくことになった。段五郎は諒子さんに寄り添い。。。そしてマスターは二人を抱えるように店を出ていった。
フォリナーには。。。錬太郎と恭子、そしてタマさんが。。。カウンターに並んで座っていた。店の柱時計の音が。。。静かに時を響かせていた。曲も無く。。。時計の音だけが。。。三人はグラスを手に取り。。。恭子を真ん中に。。。グラスを傾けた。
タマさんがゆっくりと立ち上がり、カウンターの中に入った。。。
「お腹空いたわね。。。あらっ。。。白パンがある。。。」
と言い。。。白パンの上にオイルサーディンをのせたカナッペを二人に出してくれた。おまけにショートケーキ間で出てきた。
すると。。。「私、熱いレモンティーが飲みたい。。。」と恭子が言った。タマさんは、分かっていたかのようにカップを差し出した。 熱いレモンティーに息を吹きかけて。。。カナッペを頬張った。
薄汚れた椅子、壁、とても整理されているとは思えないボトルを並べた飾り棚。室内の灯りは、お世辞にも明るいとは言えないし、お洒落な雰囲気とは言えないが。。。フォリナーに集う者達にとって。。。この上なく暖かく。。。そして心安らぐ空間であることは確かなようだった。
ふと。。。飾り棚に錬太郎が目を向けた。そこに立てかけてある小さな肖像画を見つけた。これほど長く通い詰めたフォリナーだが、初めて気が付いた。いつもマスターが、そこに背を向け立っていたせいか。。。気付くこともなかったのか?。。。ボトルの陰になっていたせいか。。。。顔ははっきりしないが、ツイードのジャケットにタートルネック。まさに紳士といった出で立ちの肖像画だった。。。
「タマさん。。。そこの飾り棚の肖像画。。。そう。。。それそれ。。。見せてくれる?」
。。。錬太郎は、それを手に取り。。。描かれた人物を見た。。。 錬太郎は言葉を失った。。。肖像画をカウンターに置き。。。呆然とした。なぜ?なぜ。。。彼が描かれた肖像画がここに。。。
恭子は。。。錬太郎を見て。。。そこに描かれている人物に目を移した。。。その時、マスターが帰ってきた。
軋むドアがゆっくりと開き。。。
「もう。。。段ちゃんは玄関に放り投げたよ。。。諒子さんはタクシーに乗せて帰し。。。?」
と言いかけマスターは店内の錬太郎と恭子を見て。。。
「なに?。。。どうしたの?。。。何かあった?。。。」
と言った。
「二人とも。。。そこの。。。ほら。。。小さな肖像画を見て。。。」
とタマさんが言った。 マスターはそれを手に取り。。。きびすを返しカウンター奥の部屋へ入った。。。
「ほら。。。これが。。。本人だよ。。。」
と一枚の象牙色の古ぼけた写真を取り出して見せた。
「あっ。。。恭ちゃん。。。やっぱり。。。そうだよ。。。」
と錬太郎は少し興奮しながら。。。
「マスター。。。この人は?。。。どうしてマスターがこの写真を持ってるの?」
と矢継ぎ早に問い掛けた。
恭子は。。。ただ。。。写真を見つめていた。。。
つづく