諒子が。。。
「恭子さん。。。線香花火。。。新しいのあげますよ。。。恭子さん??」
と声を掛けた。すると恭子は
「えっ?。。。えぇ。。。ありがとう。。。」
と少し戸惑いながら線香花火に火を点けようした。その時。。。右手に何かを握ったままであることに気がついた。そう。。。子安貝。。。恭子は静かに指を開いて貝を見つめた。
諒子がそれを見て
「恭子さん。。。それって?なんです?」
と言うと
「ほらっ。。。さっき。。。」
と言い掛けて言葉を閉じた。
錬太郎は。。。静かに恭子と諒子の会話している様子を眺め。。。やはり。。。そうだったんだ。。。恭ちゃんは。。。
恭子は。。。周りを見回して。。。
「あの。。。老紳士の方は?」
と言った。すると。。。そこにいる錬太郎以外の皆は顔を見合わせ。。。
「誰のこと?。。。恭ちゃん???」とマスターが不思議な顔をして聞き返した。そこにいるのは段五郎と諒子。。。店内で寝息をたてているタマさん。。。そしてマスター。。。老紳士を知っているのは恭子だけ?。。。
いや。。。もう一人知っている。。。それは。。。
恭子は。。。自分の記憶の中の父を消してない。。。父が心の中に。。。記憶の世界にちゃんと残ってることを。。。今。。。確かに感じた。それを確信した恭子の頬から涙が零れ始めていた。。。空を見上げ。。。小さな声で言った。。。
「おとうさん。。。恭子の記憶の中にいるんだね。。。もう。。。どこへも行かないでね。。。おとうさん。。。ずっとそばにいてね。。。ありがとう。。。おとうさん。。。」
。。。そう恭子は呟いた。もう自分の記憶が揺らぐことはないと。。。
皆が店に入り、錬太郎も恭子を連れ店に入ろうとした。その時、月明かりに照らされ立ち尽くす恭子の頬を伝う光を見た。彼女が子安貝を握り締めていた手を。。。錬太郎は自分の手で優しく包むように握り、背中から恭子の耳元で囁いた。。。
「おとうさんに会えたんだね。。。恭ちゃん。。。よかったね」
と。
恭子は振り返り。。。
「うん。。。おとうさんは。。。恭子の心の中に。。。記憶の世界にちゃんといる。もう。。。大丈夫だよ。。。」
と涙を堪えながら錬太郎を見た。そして、錬太郎は。。。
「目を閉じても見える。。。おとうさんが。。。そうだろう。。。恭ちゃん。。。」
と言った。
続けて錬太郎が言った。。。
「僕がそばにいるよ。。。ずっと。。。」。。。
恭子と錬太郎はフォリナーの前で。。。月光に照らされながら一つのシルエットになっていた。。。互いに心を通わせる。。。その幸せを感じ取りながら。。。
意識。。。そして思考。。。それだけが自分であると。。。そう思うことは決して誤りではない。。。そう思える世界を、錬太郎は今。。。確かに感じ取っているのかもしれない。
見ること。。。見えていることは違う。見えずとも考えられる人。。。見えても考えられない人。。。見えない世界にこそ。。。本当に見えていると思える世界が広がっているのか。。。
1時間の間にしか存在しないと言っていた彼は。。。なぜ錬太郎だけが恭子が父と会ったことを理解していたのか?。。。ミラクルナンバーの7は何を意味していたのか。。。他の皆はどこまで記憶として留めているのか?
錬太郎はこの世界に。。。恭子のそばに存在し続けることができるのか。。。
フォリナーの夜は。。。まだ続いていく。。。
月が隠れ、静かに雨が降り始めていた。
つづく