28.「心の影」 | 我ここに在りてここに無し

我ここに在りてここに無し

青きBOUGAの果て

ひとりごとのように

詩と小説を書き綴ります。

何か心に響くものがあれば

それだけで。




 ほんの数分。。。沖を眺めていただけだった。しかし、とても長い。。。長い時に思えた。二人のシルエットは、店から漏れる温かい光に淡く照らされながら。。。風に揺られていた。恭子は。。。

「私。。。少し怖い。。。でも、このままじゃ。。。」

 とポツリと言った。錬太郎は、その言葉を飲み込むように頬を寄せ。。。

「ゆっくりと。。。ゆっくりでいいんだ。。。焦らないで。。。ゆっくり。。。大丈夫。。。」。

 恭子は。。。くるりと回り。。。錬太郎を向いて両腕を彼の腰にまわし。。。しっかりと胸の中に顔を埋めていた。。。錬太郎はただ、少し震える恭子を優しく包んでいた。言葉が途切れ、静に互いの温もりと鼓動を感じていた。。。これほどまでに彼女が深く思い悩むことに触れることは。。。錬太郎は沖を見つめた。

 なぜ、こうも愛しく思える。幼い頃、可愛らしく自分を慕う妹のように思い。。。それだけと思っていた錬太郎にとって、今腕の中にいる彼女は。。。どう感じたらいいのか。。。いまこうして二人が佇んでいることを。。。言葉で言い現すことさえ。。。無意味に思えた。。。ただ守る。。。それしかなかった。。。

 二人は裏にある小屋に向かい。。。薪を箱に詰め店に戻った。マスターとタマさんは既にバーボンに移っていた。夜は更けていく。。。長い旅になりそうだと、錬太郎は呟いた。タマさんが

「お二人さん。。。さっきの話し。。。恐らく時間と空間が重なる場所だと思うのよ。。。」

 と言った。

「今の世の中なんて不条理なことばかりよ。。。でも、現実にあり得ないことが。。。時間と空間が重なる場所で一つになるの。。。今の世界では考えも及ばぬことが。。。ね」。。。。

 タマさんの言葉に力がこもっていた。

「その。。。時間と空間の重なる場所とは?いったいどんなところなの?」

 とマスターがケンタッキー・スピリッツを口に含みながら言った。すると錬太郎も

「うん。。。そんな場所ってあるの?」

 と聞くと、タマさんは

「やっぱり。。。そうくるよね。。。貴方たちは知らない?前も一度話したと思うけど。。。」

 と神話の話しをし始めた。。。

 恭子は静に聞き入っていた。彼らの不思議な会話に引き込まれつつあった。神話。。。そして。。。錬太郎が頭に浮かべているキーワードが時間と空間の重なりを持って。。。散逸していたものがまとまり始めてきた。。。やはり。。。でも、これ以上の深いことは今考えるへきではないと。。。すると恭子が

「もう少し。。。時間を掛けます。。。みなさんと一緒に。。。旅に出ましょうよ♪」

 と明るく言った。旅の話は来週金曜日くらいに出ることで決まった。行き先は決めていない。。。当日錬太郎が決めることで一致。集合場所はフォリナーということになった。

 その夜、恭子は何かを感じていたようだった。自分の記憶に隠されたキーを一つ。。。心に受け止めていたようだった。錬太郎はあえて聞かず他の二人も楽しく賑やかに過ごし解散した。恭子は終電で帰り、錬太郎はマスターをタマさんの店に置いたまま車で社に出勤した。

 眠い目を擦りながらデスクの上に目を向けると伝言があった。折りたたんだメモ用紙をぶきっちょに開くと。。。「月光族三銃士。。。諸君の旅の安全を祈る」と。。。えっ?誰だ?五人意外は誰も知らないはずだぞ!錬太郎の頭の中に?マークが。。。


 このメモの主とは?。。。旅の始まりが近づく。。。今。。。いったい誰なんだ。。。錬太郎はメモを握り締めたまま。。。窓の外へ目を向け目じりの皺を深くした。

つづく