錬太郎はとても古そうな紙に書かれたメモ書きを手帳に折りたたんで閉った。コンビにで買ったブラックコーヒーを一口。月光族という言葉そのもの、普通。。。耳にすることなど誰もそう無いはずだが。。。
ブルーグラスの名曲のひとつに「カッパー・ケルト」というのがある。アルバート・F・ベッドゥが1953年に作り、カントリージェントルメンの歌った「銅の釜」とでも訳すべき曲は「銅の釜を手に入れて、銅のコイルも手に入れ、新しく作ったトウモロコシの引き割り(コーン・マッシュ)を煮たものを満たせば、あとは何の苦労もいらない。そいつを月の輝いている間にヒノキの樹の近くに据えつけ、青白い月の光のもと、瓶(ジャグ)が満杯になるのを見ていればいい」。。。つまり主人公は月光族(ムーン・シャイナー)。。。すなわち密造酒造り(ブーツレッカー)。。。フォリナーの住人。。。マスターに疾風のタマさん。。。そして俺。。。洒落で名付けた“月光三銃士”。月光族の意味すら他の人間が知っているはずがない。。。例え“月光族”を知っていても“三銃士”はつけない。これは社内の人間?。。。いや。。。そんな洒落た奴はいないだろう。。。錬太郎は日中何度もぼんやりと考えていた。その日は7時半過ぎに仕事を終え、夜9時半には帰宅した。
朝のメモを手帳から取り出し、テーブルの上に置いた。よそ見をしながらポットからカップにお湯を注いでいると、お湯がカップから外れメモ用紙を濡らしていた。慌てて拭こうとしたとき。。。メモ用紙全体にうっすらと何か大きな文字のようなものが。。。ん?待てよ。。。錬太郎はレモンを絞り、その絞り汁に綿棒に浸し文字の周りを紙が破れないように丁寧に濡らし。。。もう一度ドライヤーを当て乾かし始めた。。。すると。。。そこに。。。“7”という大きな数字が浮かび上がってきた。
錬太郎は頭の隅の引き出しからG.Aミラーを思い出した。彼は不思議な数に魅了されていた。。。“7”である。広辞苑を引いても分かるが。。。七色、七音、七つの海、七曜、七福神、七賢、七つ道具、寺の七堂、七草、七道。。。と。。。限りない。。。そして、そしてミラーは“7”を“マジカル・ナンバー”と表現していた。そして、もう一人。。。イギリスの経済学者のウィリアム・スタンリー・ジェバンスは、我々人間は6個まではひとつひとつを数えることをしなくとも、ひとまとまりとして正確に数を言い当てられると(豆を放り投げ即座に数を言い当てる)。。。ひとつの区切り(チャンク)である。つまり知覚範囲と記憶範囲の類似した働きがあるらしいということと。。。“6”が1つの区切りになっているような話を思い出した。。。
とすると、それを超える“7”。。。とは人間の知覚や記憶を超えることを指しているのか?。。。このマジカルナンバーの“7”にどんな意味を持たせるべきなのだろう。。。そして誰が。。。何の目的で。。。錬太郎の机の上にメモを置いたのか。。。錬太郎の頭はフル回転し始めていた。
部下の誰に聞いても知らなかった。時間帯からして深夜か早朝のどちらかだろう。。。警備の関係からその時間は限られている。ビルメンテナンスの社員?。。。ん。。。違うな。。。錬太郎うとうとし始めていた。
錬太郎は暫くソファーで横になっていた。潮風に当たったせいかくしゃみが出始めていた。風邪など引いていられない。。。金曜の夜から旅が始まるのに。。。と錬太郎はシャワーを浴びすぐにベットにもぐった。
新たなキーマンか?何かのシグナルなのか。。。はたまた。。。神話の世界からの使者。。。妖精?などと。。。空想が始まり。。。思考の旅は果てしなく夜を埋め尽くしていった。。。
つづく