えのこ夢 -51ページ目

えのこ夢

絵も描いてた。ゲームばっかりやってるしゅふ。

Pokemon QuestⅠ:夢の中の魔道士~The beautiful World~



「・・・キミ、ひとりぼっちなの?」


目の前にいる謎の相手に、どうしてそんな質問をしたのか。正直な話、


それはテン自身にもわからなかった。ただ何となく思ったことを、口にしてみただけだったのだ。


しかし、テンのそのなんとなくの台詞に、相手の目の辺りから、なにかきらきらと輝くものが溢れてきた。


涙だった。


それから、よく見るうちに、赤い色をしているのは元からではなく、


マトマの実の汁を被っていたからだということ、相手の正体がヤミカラスであることに、テンは気づいた。


本来黒い体をしている筈のヤミカラスが、一体全体どうしてここまで真っ赤なのか。


テンには想像すらつかなかったが、ただ思ったのは、自分から望んでこんな姿になったわけではない、


ということだ。それは、相手の寂しげな顔を見れば明らかだった。


「酷い・・・かわいそうに」


テンは持っていたオボンの実を一旦地面に転がすと、ヤミカラスに手を伸ばした。


それにヤミカラスは、酷く怯えたようにカアァッという鳴き声を上げ、後退りしようとした。


危害を加えられるんじゃないかと思ったからだ。


しかしテンは、ヤミカラスの顔に手をつけると、優しく撫でてくれたのだった。


彼は、ヤミカラスの顔についたマトマの実の汁を拭き取ろうとして、手を伸ばしたのだ。


そして、拭き取った赤い汁の下から現れたヤミカラスの真っ黒い毛を見て、テンはこう言った。


「・・・綺麗な色をしているね」


驚くどころではなかった。――「なにこの汚い鳥ポケモン」「汚いヤミカラスですねぇ!」・・・


今まで顔を合わせてきた連中は皆そう言ってきたのに、まさか綺麗だなんて。


しかしテンの目には、それは確かに綺麗に見えた。黒でも凄く艶やかだったし、


中途半端に濃い紫色の毛をしている自分にとって、何だか羨ましくさえ思えてしまう程だった。


やがてヤミカラスは、体全体すっかり元の色を取り戻した。その代わり、


彼を拭くのに使ったテンの手と、それから尻尾の先まで、マトマの実の汁で真っ赤になった。


「うわぁ・・・しまった、これで木の実を掴んだら、辛い味がうつっちゃうよ!」


テンはそう言いながらも、何故かヤミカラスに向かって微笑んでいた。


ヤミカラスには、彼のその一つ一つの仕草が新鮮でならなかった。


こんな風に相手と向き合うこと自体が、ヤミカラスにとっては初めての経験だったからだ。


ヤミカラスは、こう尋ねずにはいられなかった。


「・・・どうして、あっしに対してそう優しく接してくれるんでござんすか?」


「えっ」


するとテンは、戸惑ったような表情をしてみせた。或いは、寂しげと表してもいいのかもしれない。


そんな顔で、彼はおずおずとこう口を開いた。


「・・・どうしてそんなこと訊くの?」


今度はヤミカラスがうろたえる番だった。何でまた、このエイパムは聞き返してきたりするのだろうか。


そんなの、決まってるじゃないか。


「あっしは、嫌われ者なんでござんすよ?汚いし、力も弱いし・・・


皆あっしのことを避けるか、苛めるかしかしないんでござんすよ!?」


喚き散らすように、ヤミカラスは言った。けれどテンはそれに対し、再び優しい顔になって、こう言ったのだった。


「僕は、嫌ったりなんかしないよ。キミのこと、汚いだなんて思わない。

その黒い翼、心からこう思う。とても綺麗だって」


また、そんなことを・・・ヤミカラスは、


わけがわからなかった。ひょっとしたらこのエイパムは、嘘を言っているのかもしれない。


そう思って、じっと目を覗きこんでみたりもした。けれど、とてもその目の中に、邪なものは見つけられなかった。


それはまるで、月夜のお星様みたいに、とても綺麗に思えた。


その目のままで、エイパムは続けた。


「それに、弱いからだなんて・・・それ、僕も同じだよ。僕こそ、生まれつき尻尾が弱くて、エテボースに進化することができない。


多分、僕の方がキミよりよっぽど弱いんだと思う。・・・そんな僕を、ひょっとしてキミは、嫌ったりするかい?」


コガラシは、ぶんぶんと首を横に振った。そして、あっ、と思った。自分は、このエイパムを嫌いだって思わない。


このちょっと前、木の上にいたときには、正直、少し煩わしいなんて思ったりもしたけど・・・でも今は、


とてもそんな気はしない。そして相手も、自分のことを嫌いだなんて言わない。それはつまり、


どういうことなのだろう・・・。


「・・・あぁ、よかった!」


と、ヤミカラスが否定したのを見て、テンはとても安心したようにそう言った。そして、無邪気な顔で、こう言うのだった。


「・・・本当はね、キミのこと、怖かったんだよ!だって、いきなり真っ赤な姿で目の前に現れるんだもん・・・


襲われるのかと思っちゃった!でも、違うんだね。僕たち、同じなんだね!」


同じなんだね・・・ヤミカラスには、すぐにはその言葉の意味がわからなかった。


しかし、お互いの顔をじっと見つめあっているうちに、あることに気がついた。テンの目には、今ヤミカラスが映っていた。


ヤミカラスの目には、テンが映っていた。そして目に映るお互いの目の中には、


またお互いの自らの姿が映っている筈だった。ヤミカラスは、はっとした。つまりは、そういうことだった。


「・・・あっしも、怖かったんでござんす。また、木の実をぶつけられるんじゃないかと思って・・・


そしたらあっし、あなたの前に飛び出してたんでござんす。威嚇するつもりで・・・」


まさか、優しくされるなんて、思ってもみなかったのだった。


「・・・木の実をぶつけられたって?」


と、テンはヤミカラスの台詞から、ようやく気付いたことがあった。・・・そうか、もしかしたらこのヤミカラスは、


うちの兄ちゃんたちに苛められて、ああなっていたのかもしれない。そう思うと、非常に申し訳ない気持ちで一杯になった。


「・・・ごめんね!うちの兄ちゃんが、悪いことしちゃったみたいで・・・」


テンは、そう言って頭を下げたが、ヤミカラスはまた、びっくりしてしまった。


どうしてこの子が謝ったりするんだろう・・・その優しさが、温もりが、よくわからなかった。


よくわからなかったけれど、なんだかとても胸がいっぱいになった。


「・・・あっ、そうだ!お詫びの印に・・・はい、これ」


そう言って、彼は持ってきたオボンの実の一つを、尻尾で掴むと、ヤミカラスに渡した。


「これ・・・食べて、いいんでござんすか?」


「うん、勿論!」


ヤミカラスは、それを口に入れた。表面は、少し辛かった。さっきのマトマの実の汁が、


テンの尻尾についていたからだった。


「あっ・・・ごめん!ちょっと辛かったでしょ!?」


けれど、ヤミカラスには気にならなかった。それよりも、中身の果実があまりにおいしくて、びっくりした。


好物の味とはまた異なっているけれど、言葉にできないおいしさが、その中に含まれているような気がした。


胸の奥から込み上げてくるような何かが・・・テンがくれた優しい気持ちが、沢山その中に詰まっていたのだった。


「ごくっ・・・ぷは!・・・す、すっごく美味しかったでござんす!」


一つの実を全部食べ干すと、ヤミカラスはそう言った。それに、テンは笑ってこう言う。


「本当?ありがとう!よかった、頑張って持ってきた甲斐があったよ!」


ありがとう?ヤミカラスは首を傾げた。それは、彼が初めて耳にする言葉だった。


でも、その言葉の中に込められた温かいものを、彼は感じとることができた。


ありがとう・・・彼は、その言葉を頭の中で反芻してみた。


「こちらこそ、ありがとう、でござんした・・・」


そして、自分も実際に口に出して言ってみた。使い方が正しいか間違っているかは、正直自信はなかったが、


響きとしては、とてもよかった。そして、言われた方のテンもまた、にっこり笑った。


よかった、どうやら間違っていなかったようだ。


「ねぇ」


と、再びテンは口を開いた。


「僕たち、トモダチになろうよ」


・・・トモダチ?


それも、ヤミカラスの知らない言葉だった。けれどもその言葉に、ヤミカラスは視界がぼやけるのを感じた。


また、わけがわからなかった。一体、どうしたというのだろう、これは・・・哀しみでもない、憎しみでもない。


嬉しくて涙が出てくるなんて、今までのヤミカラスには考えられないことだった。きっと、


テンもそう思うに違いない、と思った。ヘンなやつだと思われるだろう、そう思って、少し怖くなった。


けれどエイパムは、そんなヤミカラスを馬鹿にしたりなんてしなかった。


優しい顔でヤミカラスに微笑みかけると、手で翼をぎゅっと握った。元々発達していないエイパムの手だ、


殆ど感触すら無いようなものだった。けれど、溢れるような温かい気持ちは、とても強く感じることができた。


風が、再び訪れた。今度は、まるで二本の大きな手で抱きしめるように、この一羽と一匹の体を優しく包むと、


微かな笑い声を木の葉のざわめきとして残し、どこかへ過ぎ去っていった。


テンは、兄たちがいないことが、最初は怖かった。なんと不幸な目にあったのだと思った。


けれど今は、こうやって新しいトモダチに巡り合えたことを、心の底から喜んでいた。


ヤミカラスもまた、ついさっきまで、ひとりぼっちだった。そしてこの深い森に辿り着いたことを、


酷く絶望的に感じていた。だが、お蔭で生まれて初めて、心を通じ合える他者と出会うことができた。


それは、彼が生まれて初めて感じる、幸せ、というものだった。


この一羽と一匹を結びつけたものは何だったろうか。やはり、優しさでは物足りない。だとすれば、


お互いがお互いを認め合うという、心の清さだろうか。どちらの心も今は、森の中の小川を流れる水のように、


とても透き通っていた。その心を持ち合うことで、お互いの強さも、弱さも、認め合うことができた。


それこそが、自分ひとりの強さを誇ることよりも、もっと貴重で、大切なことなのかもしれない。


と、その時だった。


突然、場の温もりを消し去ろうとするような激しい風が吹き、


それと共に、ばっさばっさと何か大きな鳥が羽ばたくような音が聞こえた。


それは、ヤミカラスの聞き覚えのある音だった。

えのこ夢-7


<<第8話 目次 第6話>>


えのこ夢


水の表現がむつかしいぃ


詳細に描き込めるようになりたいです。



10・4日から追加レッスン配信、150円。。。



Pokemon QuestⅠ:夢の中の魔道士~The beautiful World~


地面に落ちて潰れたマトマの実を食べるヤミカラスに、面長のエテボースはこう叫んだ。


「きっっっっったない!汚いヤミカラスですねぇ!」


「へへっ、違えねぇや!きったねぇヤミカラスだ!俺の食いかけを、しかも潰れてんのに、アイツ、食ってやがる!」


先程までの怒りはどこへ消えうせたのか、太っちょも面長に応じるように、そう叫んだ。


言いたいやつには、言わせておけばいい。ヤミカラスはそう思った。どうせ、嫌われてるのは前々からだ。


べちゃっ・・・。


だが、エテボースは口でいうばかりではなかった。ヤミカラスの顔で、マトマが潰れた。


汁が飛び散り、ヤミカラスの顔は、まるで返り血を浴びたように赤く染まった。


「へへっ、前よりマシになったんじゃねぇのか?」


「より極悪度が増しましたねーっ」

エテボースたちはケラケラ笑いながら、ヤミカラスにマトマの実を投げつけてくる。


しかし、ヤミカラスは体中真っ赤になりながらも、黙々とマトマの実を食べ続けていた。


彼らは、ご馳走してくれているのだ。そう思えば、ありがたいことじゃないか。


それに、ぶつけられることだって、別に痛くもない。マトマは軟らかい実だから。そう、努めて考えようとしながら。


やがて、ヤミカラスの反応が無いことで、エテボースたちも飽きてしまったようで、マトマの実を投げるのを止めた。


「ちぇっ、つまんねぇやつ・・・」


最後に太っちょが、捨て台詞のようにそう呟くと、二匹は何処かへ行ってしまった。それに、ヤミカラスはホッとした。


・・・いや、ホッとするなんて、おかしいじゃないか。自分は今、マトマの実を投げて貰って、


嬉しかったはずじゃないのか?だったら逆に、それが貰えなくなって、がっかりするのが普通じゃないか?


ホラ、今自分の周りには、こんなに沢山のマトマの実が落ちている。


自分が大好きな、辛い木の実だ。これを食べれば、体だって温かくなってくる筈だ。


彼は何だかムキになったように、その一つを食べた。辛さの強い果汁が、口の中で広がる。


しかしおかしなことに、体は全然温かくはならず、逆にどんどん冷えていくようだった。


それに、自分の好物のはずのこの木の実が、全然美味しく感じられない。


熟れてなかったわけじゃない、むしろ綺麗な真っ赤で、丁度食べごろの色をしているのに。


フッ・・・。


ヤミカラスは、笑った。ここで、泣いてはいけないと思った。例え偽りであっても、笑わなければならないと思った。


でないと、またあの夢を見てしまうから。ひとりぼっちで、誰からも助けてもらえなくて、誰からも嫌われていて。


森の外には何もなくて、自分はどこへも行けなくて・・・。もう、二度とあんな夢は見たくなかった。


風が吹いて、木々が揺れた。そよ風程度ではない。ちょっと強めの風に、木々はざわざわと音を立てた。


まるで、森全体がヤミカラスを攻め立てているようだった。だが、取り乱してはいけない。


凛として立ち向かわなければ。もっと、強くならなければ。


苦しいことはまだ、山ほどあるんだぞ。ヤミカラスは必死に、自分にそう言い聞かせた。



一方その頃、エイパムのテンは、兄に言われた通り朝食になるような木の実を見つけ出し、元の場所へ戻ってきていた。


その手の中には、溢れるほどのオボンの実があった。ただの1個や2個では、またあの太っちょの兄にどやされる心配があるからだ。


しかし、そんなに沢山の木の実を抱えたまま、これまでのように木から木へ飛び移って移動するのは至難の技だ。


だから、彼は地面の上を走ってくる他なかったのだが、何だか少し恥ずかしい思いがした。


「だから、エテボースに進化した方がいいって言ってんじゃねぇか」そんな、兄の言葉が蘇ってくるから・・・。


そりゃ、進化できるんだったらしてみたい・・・今すぐにでも!実際、テンはそう思っていた。


ところが、彼にはそれができなかったのだ。


エイパムは、ダブルアタックという技が使えるようになって初めて、エテボースに進化することができる。


手のように自由に動く、長い尻尾を素早く動かして繰り出されるその戦闘の技を使えるようになるには、


それだけ充分尻尾が丈夫でなければならない。


けれども彼の尻尾は生まれつき、移動には大して困らないにせよ、戦いに適するほど丈夫ではなかったのであったのである。


だから、彼が戦いの無い街に行き、音楽家として生きることを望むのは、そのためであった。


けれど、その夢を語るたび、兄たちはあんな台詞でテンの夢を踏みにじろうとする。


それでも・・・!テンは、そんな兄たちに付いていかなければならない。


でないと、この物騒な森の中で自分のような弱い者は、暮らしていくことなどできないのだ。


例え仲間はずれにされようとも、必死にしがみ付いていかなければ・・・。


「おーい!」


と、今ようやく元の場所に辿り着いたテンは、木の上を見上げ、そう叫んで兄たちを呼んだ。しかし、返事は無かった。


「おーい!?兄ちゃんたち、ゴハン見つけてきたよ!?」


不安そうな声になりながら、再び叫んだ。それから2度、3度、同じことを繰り返したが、


聞こえてくるのは木の葉のざわめきだけだ。それでようやく、自分が置いてけぼりにされたことを知り、その顔に絶望を浮かべた。


絶望は、音になる。木の葉を震わせ、サワサワと心を惑わせるような不安な音を立てる。


絶望はまた、風になる。冷たい息をテンに吹きかけ、彼の心を凍えさせようとする。


そして、その絶望が形になったように、空から真っ赤な色をした何かが飛んできて、テンの前に降り立った。


突然のことにテンは驚き、ビクッと体を大きく震わせ、危うく手の中の木の実をこぼしそうになった。


が、その絶望の赤い敵は、こちらを威嚇するような厳しい視線をこちらに注ぎつつも、


その中に深い哀しみを隠していた。恐らく本人も気付いていないその感情を、テンには読み取ることができた。


それと同時に、その赤い生き物が敵でないのも、テンは知りえた。



えのこ夢-6


「・・・キミ、ひとりぼっちなの?」


そしてテンは、謎の赤い相手に向かって、そんな質問をしたのだった。


それに対して相手は、敵意を失い、驚いたような丸い目で、テンを見た。


同時に、その生き物は、今自分の目の前にいる相手が、今まで見てきた相手とは随分違っていることに気付いた。


優しさ?いや、そんなものではない。


わからない・・・けれども、温かく感じる何かがそこに含まれているのを、彼は感じていた。


風が、二匹の間を流れた。それは、木の葉を大げさに震わせることもなかったし、ヒヤリとした冷たさも含んでいはしなかった。


それは、絶望ではなかった。


<<七話 目次 五話>>