2002年、北朝鮮に拉致されていた被害者のうち5名が電撃帰国という大きなニュースがありました。そのころから「北朝鮮拉致被害」に関してニュース等で知っていくのですが、ちょうどその前後だったと思います。

正確な時期は覚えていませんが、披露宴の音響の打ち合わせでの話し…。

 

 

新郎さんが日本人、新婦さんが在日韓国人の娘さん。

その新婦さんから手紙朗読か花束贈呈で「アリラン」か「トラジ」を使いたい、というリクエストをいただきました。やはりお母様に故郷の曲で感謝の思いを伝えたいのですね。

 

「アリラン」と「トラジ」は北朝鮮、韓国に共通する民謡です。

当時、「アリラン」は知っていたのですが、「トラジ」は知りませんでした。

「アリラン」を知っていたのは、白竜という俳優がCDを出していて、その中で「アリラン」について歌っ曲があったから。

ただ当時の記憶では、「アリラン」は地名だと思っていました。

曲もマイナー調で、確か故郷へ逃げる内容だったような記憶で…、とその程度の知識しかありませんでした。

 

「トラジ」はまったく知らず、新婦さんに尋ねたら、先述の北朝鮮、韓国に共通する民謡ということだたのです。

 

で、やはり曲を聞かないと提案するにも提案しようがないので、時間をいただき曲を探して後日、提案することにしました。

 

リクエストは尾崎豊。~音響の仕事をはじめたころのエピソード Vol.1」でも書きましたが当時はスマホなんてなく、インターネットも自宅でデスクトップパソコンでやっていた時代です。

そこで、タワーレコードやHMVに行ったんだと思いますが、情報量が少なかったのかCDを見つけることができませんでした。その後、たぶんインターネットを使ったのだと思いますが、東京・文京区にコリアブックセンターというお店をみつけたのです。

 

よく古本屋に中古CDって売っていますが、そういう感覚で、韓国の書店を探していて見つけたんですね。

ところがコリアブックセンターとは言いながら、朝鮮総連が直営する北朝鮮専門の書店だったのです。

 

繰り返しますが、時は、北朝鮮拉致被害者の帰国というニュースの前後。

そんな時期に、仕事とはいえ、北朝鮮専門書店に行くなんて、どう思います?

 

もちろん、行きましたよ。

 

しかし、お店の前まで行ってもスグには入れず、前を2~3往復して「このまま俺、帰れなかったらどうしよう」と思い、恐る恐る入店しました。

 

店内は、神田の古書店のように壁一面、所狭しと北朝鮮、韓国の書籍で埋め尽くされていました。

 

イメージはこんな感じです。

 

で、中をひと通り回ってみると、ありました、ありました、向こうの国のCDが。

 

ところが!

向こうの国のCだから読めない、視聴機もない。

 

どうする、どうする?

知らないで買うだけ買って、もし提案できそうもなかったら来た意味ないし。

 

そこで意を決して、女性店員に話しかけました。

「日本語でいいですか?」

 

そこから?

 

そこからです。

だって向こうの言葉しかしゃべってくれなかったら、どうしようもないですから。

そしたら日本語OKでした。

 

そして実は…ということで、披露宴で「アリラン」か「トラジ」を流したいが良い感じの曲はないか?と相談しました。

するとこちらのイメージとは異なり、とても親切にいろいろ教えてくれました。

 

もっとも印象的だったのは、「アリラン」は基本はあるが決まった曲はなく、北朝鮮、韓国内の土地々々で歌い継がれている民謡なのだ、と。

ということは、同名異曲ではあるが、でもベースは一緒、ということで音源化されているものも数多くあるということ。

 

で、日本の披露宴の手紙朗読、花束贈呈がどういうものかを説明して、暗くなく、スローな感じのもの、ということで提案されたCDが4枚。

しかし視聴はできず、かといって、4枚のCDを買うと1万円越えてしまう。でも使うのは1曲。

う~む、どうしよう?

 

で、妙案が浮かんだんです。

 

「必ず、必ず! 2枚は買うから、4枚貸してください!」

 

あろうことか、北朝鮮専門の書店で、開けてもいない売り物のCDを借りるという大胆とも、奇想天外ともいえる発想です。

使うのは1曲なのに、なぜ2枚買うと言ったかというと、4枚借りて1枚しか買わないのは申し訳ないから。

 

そしたら、そしたらですよ、

 

 

貸してくれたんです。

今ではありえないような交渉が、できたんです。

名刺で身元を証し、丁寧にお礼を言って貸していただきました。

 

こうして後日、新郎新婦と再打ち合わせをおこない、4枚のCDからそれぞれ聞いていただき選んでいただきました。

そして購入したCDがこちら。

 

 

どちらもクラシックに属していて、左の「リムジン江」は、韓国の指揮者、東京シティフィルハーモニック管弦楽団が演奏しています。

こちらには「舞曲"トラジ"」という曲が入っています。

 

右は、完全に向こうのCDで読めません。しかし盤面には英語で「Arirang」と表記されているので「アリラン」だということがわかります。

 

どちらもオーケストラで歌が入っていないので、聞いているぶんには普通にクラシックだし、曲によっては起承転結があってスターウォーズっぽいドラマチックなものもあり、楽しめるアルバムです。

 

 

「舞曲"トラジ"」か「アリラン」、新婦さんがどちらを選んだかは記憶に残っていないのですが、でもお母様も喜んでいたのは間違いありません。

 

 

で、コリアブックセンターで借りた4枚のCDは、打ち合わせ後、すぐに持っていき約束通り、2枚を買って、2枚をお返ししました。

返した2枚は、普通、開封したら売り物にならないと思いますが、そこは日本と違い売るんですね。まぁ、海外のCDなんてパッケージに入っていないものなんて普通にありますからね。

 

 

ということで売り物のCDを借りるなんて、誰もやらないようなことをしてリクエストにお応えした、音響の仕事をはじめたころのエピソードでした。

(今、同じことできるのかな?)

 

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2020-05-08 リクエストは尾崎豊。~音響の仕事をはじめたころのエピソード Vol.1

 

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またデジタル配信されている曲は、Amazonデジタルミュージック (MP3音楽ダウンロード)で視聴&購入ができます。ぜひご利用ください。

★また、ご披露宴では著作権の観点から市販のCDでしか流すことができませんので留意されてください。

 

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