今日朝起きて、真っ先にCD屋さんに行って本日発売日の平野綾ちゃんのPV集のDVDを買ったんだ。

テレビの彼女は僕に微笑みかけてくれる。
フヒヒ可愛いなぁオイ
擦り切れるまで見てやるぜっ



明日水曜日の午後八時半から金山駅南口でお歌の会始めるから
来れる方ぜひ遊びにおいでよ~
ゴッッ!!!

硬いもの同士がぶつかり合う、鈍い音が耳に鋭く突き刺さった。

「…不意打ちとは卑」

ドゴッッッ!!!

アヤミは聞く耳を持たない。
能力で敵を壁に打ち付けては戻し、打ち付けては戻しと休むことなく叩きつける。

やがてコンクリートに亀裂が入り、陥没し、白色の壁紙が血でどす黒く染まった。

ドゴッ!!!
ドゴッッッ!!!

ななみの顔はもはや原型をとどめていない。

「フフフ…アキトく~ん…」

前歯の折れた真っ赤な口がニヤリと裂ける。

「今から私の本当の姿を見せるけど…嫌いにならな」

バゴッッッ!!!

今までで一番惨い音が響いた。

コンクリの壁に穴があき、敵は膝から崩れ、受け身もままならず仰向けに倒れた。

「はぁ…はぁ…」

アヤミはゆっくりと立ち上がりヨロヨロと俺の元へ歩み寄る。
俺はボロボロになった彼女を抱きかかえその場に座らせた。

もの凄い熱だ…

「な…ななみは死んだのか?」

ピクリと動かないななみを指し、聞いた。

「いいえ…。この程度ではガルバルドは死なないわ…。」

「…そうか。」

俺の命を奪おうとした奴だけど知人が故に、死なれても困るな…
なんか複雑な気分だ。

「…で、これからどうする?この部屋から出られないのか?」

「あそこ…」

アヤミは壁にあいた穴を目で指す。

「あの穴から外へ脱出できるわ。そのためにあたしはガルバルドの石頭を利用して壁にメッタ打ちしてたの。」

可愛い顔して恐ろしいことを言うね。

「さぁ…行きましょう。」

人が余裕で通れる大きな穴ではないが、余程のデブじゃなきゃ通れない訳でもない。

俺は一向に起き上がる気配のないななみを見て、なんとも言えない気分に浸った後、脱出路をくぐった。
前回までのあらすじ

~アキトくんが恋人のななみちゃん(ガルバルド星人)の鋭い爪で襲われそうになってるんだよ。~




「アキトさん!」

アヤミが俺の名前を叫んだと同時に俺の中肉な体は広葉樹の葉の如くヒラリと宙に浮き、次の瞬間後ろの壁に叩きつけられた。

渾身の一振りを空振りしたガルバルドはうざったそうに舌打ちをした。

今のは…アヤミが助けてくれたのか?
だったらもっと優しく突き飛ばしてくれよ…
コンクリに頭打っていってぇ…。

「往生際が悪いですよ~?あなた達に勝ち目はないんですよ~?」

うん…。
確かに納得してしまう…。
アヤミが助けてくれなかったら今頃俺の首は胴体とサヨナラをしていただろう。

しかもその彼女が左腕を負傷しているときた。

「…?」

ななみの後ろで膝を崩すアヤミが何か俺にジェスチャーを送っている。

「…???」

血まみれの左腕を小さく横に振っている。

そこをどけってことか?

「往生際の悪い男は私あんまり好きじゃないよ?」

俺達のやり取りに気付いていない敵は自分が望む男性像について語っている。

俺は怪しまれないように、あくまで自然と、壁に背をつけた状態でジリジリとカニ歩きを始めた。

「今までエルスの男性と付き合ったことあるだけど~どいつもこいつもエッチが下手くそすぎるのよ~。ガルバルド星じゃ考えられないわ~。」

“もっと、もっと左に寄って…!”

真剣な眼差しを送るアヤミと目が合うと、彼女の心の声が聞こえてくる気がした。

「やっぱり男は腰使いが重要よ~♪今夜あたり私がアキトくんに調教してやりたかったんだけどなぁ…。」

「それは惜しいことをした…。」

ついにアヤミは左手の親指と人差し指で○を作った。

何を企んでいるかわからんが、頼んだぞアヤミ…!