ゴッッ!!!

硬いもの同士がぶつかり合う、鈍い音が耳に鋭く突き刺さった。

「…不意打ちとは卑」

ドゴッッッ!!!

アヤミは聞く耳を持たない。
能力で敵を壁に打ち付けては戻し、打ち付けては戻しと休むことなく叩きつける。

やがてコンクリートに亀裂が入り、陥没し、白色の壁紙が血でどす黒く染まった。

ドゴッ!!!
ドゴッッッ!!!

ななみの顔はもはや原型をとどめていない。

「フフフ…アキトく~ん…」

前歯の折れた真っ赤な口がニヤリと裂ける。

「今から私の本当の姿を見せるけど…嫌いにならな」

バゴッッッ!!!

今までで一番惨い音が響いた。

コンクリの壁に穴があき、敵は膝から崩れ、受け身もままならず仰向けに倒れた。

「はぁ…はぁ…」

アヤミはゆっくりと立ち上がりヨロヨロと俺の元へ歩み寄る。
俺はボロボロになった彼女を抱きかかえその場に座らせた。

もの凄い熱だ…

「な…ななみは死んだのか?」

ピクリと動かないななみを指し、聞いた。

「いいえ…。この程度ではガルバルドは死なないわ…。」

「…そうか。」

俺の命を奪おうとした奴だけど知人が故に、死なれても困るな…
なんか複雑な気分だ。

「…で、これからどうする?この部屋から出られないのか?」

「あそこ…」

アヤミは壁にあいた穴を目で指す。

「あの穴から外へ脱出できるわ。そのためにあたしはガルバルドの石頭を利用して壁にメッタ打ちしてたの。」

可愛い顔して恐ろしいことを言うね。

「さぁ…行きましょう。」

人が余裕で通れる大きな穴ではないが、余程のデブじゃなきゃ通れない訳でもない。

俺は一向に起き上がる気配のないななみを見て、なんとも言えない気分に浸った後、脱出路をくぐった。