┃忙しい人のための宅建民法一問一答ドリル┃ -5ページ目

┃忙しい人のための宅建民法一問一答ドリル┃

宅建試験の合否はズバリ民法で決まります。 しかしはじめての人には民法はかなり難しい科目です。
このドリルは過去問から必須テーマを精選し, くわしくやさしい解説をつけました。
忙しい人でも十分合格できる民法の実力がついてきます 。
 [平成24年4月22日開講]



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  今回は担保物権で, 抵当権以外の練習をします。 

  過去問に出た基本事項をしっかり押さえておきましょう。

  担保物権では, 付従性と物上代位性が重要です。 それぞれどういう内容なのか, どうして認められるのかを正確に理解しておく必要があります。




[担保物権通則]


□■問題編 (正解と解説はすぐあとにあります。 以下同じ)


  以下の問で, 正しいものには○, 誤っているものには×をつけなさい。



【問 1】 (3-7-1) 

  不動産を目的とする担保物権の中には, 登記なくして第三者に対抗することができるものもある。



【問 2】 (3-7-3) 

  不動産を目的とする担保物権の順位は, すべて登記の先後による。 



【問 3】 (3-7-4) 

  不動産を目的とする担保物権は, 被担保債権の全部が弁済されるまでは, 目的物の全部の上にその効力を及ぼす。



【問 4】 (3-7-2) 

  不動産を目的とする担保物権の中には, 被担保債権が将来のものであっても, 存在するものがある。



【問 5】 (21-5-1) 

  抵当権者も先取特権者も, その目的物が火災により焼失して債務者が火災保険金請求権を取得した場合には, その火災保険金請求権に物上代位することができる。



【問 6】 (21-5-4) 

  留置権者は, 善良な管理者の注意をもって, 留置物を占有する必要があるのに対し, 質権者は, 自己の財産に対するのと同一の注意をもって, 質物を占有する必要がある。



□正解&解説編



【問 1】 ○ 
  留置権と一般先取特権は, 権利の性質上, 対抗要件としての登記は不要です。
  留置権は, 目的物を事実上支配する占有が成立要件であり存続要件ですから, 登記ではなく占有がそのまま留置権の公示方法となります。
  また一般先取特権は, その種類・債権額が限られているため登記不要とされています。 第三者を害するおそれはないとして認められた特例です。



【問 2】 × 
  担保物権の順位は, 原則として登記の先後で決定されます。
  しかし, これには例外があって, 登記をした不動産保存・不動産工事の各先取特権は, 登記の先後に関係なく, 常に抵当権に優先します。
  不動産の保存や工事は, 抵当権者にも利益になりますから, とくに優先して保護されているのです。



【問 3】 ○            
  担保物権は, 債権全部の弁済を受けるまで, 目的物の全部について権利を行使できるのが原則です (全部を競売できます。 もちろん弁済を受けられるのは債権額ですが)。
  これを担保物権の不可分性といい, 担保物権の効力を強めるためにすべての担保物権に認められています。



【問 4】 ○  
  担保物権は, 債権を担保することが目的ですから, 債権が存在しなければ担保物権も存在しません (これを担保物権の付従性といいます)。
  しかし質権と抵当権については, 金融取引の需要から, 債権が現実に成立していなくても, 将来発生する債権を担保するためにも, あらかじめ設定することができます。
  付従性が緩和されているのです。



【問 5】 ○ 
  抵当権や先取特権は, その目的物が火災により焼失して, 債務者が火災保険金請求権を取得した場合には, その火災保険金請求権に対して物上代位することができます。


 ※ 担保物権には物上代位性がある
 担保物権は, 目的物がもっている交換価値 (金銭に換算したときの価値) を支配する権利であって, 目的物自体を使用する権利ではありません
  したがって, 何かの原因でその交換価値がほかの価値物に代わった場合には, その価値物に担保物権の効力が及ぶことになります。
  たとえば, 目的物の売却・賃貸・滅失・損傷などによって, 債務者が受け取ることになった売買代金・賃料・火災保険金・損害賠償請求権などに効力が及ぶのです。
  これを物上代位性といい, 先取特権,質権,抵当権には認められていますが, 留置権にはありません。



【問 6】 ×  
  留置物・質物の保管については, 留置権者も質権者も, 「善良な管理者の注意」 をもって占有しなければなりませ。 これを善管注意義務といいます。
  債権担保 (有償) のために他人の物を占有するのですから, 自己の財産に対する (無償) のと同程度の注意では足らないのです。



【重要条文】


■物上代位 (304条)
  ① 先取特権 (質権および抵当権も) は, その目的物の売却, 賃貸, 滅失または損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても, 行使することができる。
  ただし, 担保物権者は, その払渡しまたは引渡しの前に差押えをしなければならない




[留置権]


□問題編  


【問 1】 (9-3-1)

  建物の賃貸借契約における賃借人Aが, 建物賃借中に建物の修繕のため必要費を支出した場合, Aは, その必要費の償還を受けるまで, 留置権に基づき当該建物の返還を拒否できる。



【問 2】 (9-3-2)
  建物の賃貸借契約における賃借人Aの債務不履行により, 建物の賃貸借契約が解除された後に, Aが建物の修繕のため必要費を支出した場合, Aは, その必要費の償還を受けるまで, 留置権に基づき当該建物の返還を拒否できる。



【問 3】 (19-7-2)
  建物の賃借人が賃貸人に対して造作買取代金債権を有している場合には, 造作買取代金債権は建物に関して生じた債権であるので, 賃借人はその債権の弁済を受けるまで, 建物を留置することができる。



【問 4】 (17-5-4)
  不動産に留置権を有する者は, 目的物が金銭債権に転じた場合には, 当該金銭に物上代位することができる。 



【問 5】 (9-3-4)
  建物の賃貸借契約における賃借人Aは, 留置権に基づき建物の返還を拒否している場合に, さらに当該建物の修繕のため必要費を支出したとき, その必要費のためにも留置権を行使できる。



□正解&解説編



【問 1】 ○ 
  建物の賃借人Aは, 必要費の償還を受けるまで, 留置権に基づいて建物の返還を拒むことができます。
  留置権は, 他人の物の占有者が, その物に関して生じた債権を有するときに, 債権の弁済を受けるまで, その占有物を留置できる担保物権です。

  建物修繕のための必要費は, まさにその物に関して生じた債権にほかならないのです。



【問 2】 × 

  債務不履行により賃貸借契約を解除され, その結果, 占有すべき権利がないにもかかわらず不法に占有する悪意の賃借人Aが, 必要費・有益費を支出しても, 留置権の行使はできません。


   占有権限のないことについて悪意の場合だけでなく, 善意有過失の場合にも留置権は認められません (最判昭51・6・17)。



【問 3】 × 
  判例は, 造作買取代金債権は 「造作」 に関して生じた債権であって, 「建物」 に関して生じた債権ではないから, 造作買取代金債権に基づいて建物を留置することはできないとしています。



【問 4】 ×  
  目的不動産が金銭債権に転じても, 留置権者はその金銭に対して物上代位することはできません。
  留置権には物上代位性はないのです。

  もともと留置権というのは, 目的物自体を留置して債務の弁済を促す担保物権であり, 目的物の交換価値を支配する権利ではないからです。

 
   たとえば, 留置建物が焼失して火災保険金に代わったとしても, 建物所有者が有する火災保険金債権の上に, 留置権を行使することはできません。



【問 5】 ○ 
  留置権に基づいて建物を留置中に, さらに必要費を支出したときは, その必要費のためにも留置権を行使できます。




[先取特権]


□■問題編  


【問 1】 (21-5-3)/類題(12-3-1)
  留置権は動産についても不動産についても成立するのに対し, 先取特権は動産については成立するが不動産については成立しない。



【問 2】 (17-5-1)
  不動産の売買により生じた債権を有する者は先取特権を有し, 当該不動産が賃借されている場合には, 賃料に物上代位することができる。



【問 3】 (12-3-3)
  Aが, Bに賃貸している建物の賃料債権の先取特権を有する場合に, Bがその建物内のB所有の動産をDに売却したときは, Aは, その代金債権に対して, 払渡し前に差押えをしないで, 先取特権を行使することができる。



【問 4】 (12-3-2)
  Aが, Bに賃貸している建物の賃料債権の先取特権を有する場合に, Bが, 建物をCに転貸したときには, Aは, Cが建物内に所有する動産に対しても, 先取特権を有する。



【問 5】 (12-3-4)
  Aが, Bに賃貸している建物の賃料債権の先取特権を有する場合に, AがBから敷金を預かっているときには, Aは, 賃料債権の額から敷金を差し引いた残額の部分についてのみ先取特権を有する。



【問 6】 (19-7-1)/類題(21-5-2)
  建物の建築工事の費用について, 当該工事の施工を行った者が先取特権を行使するためには, あらかじめ, 債務者である建築主との間で, 先取特権の行使について合意しておく必要がある。



□正解&解説編



【問 1】 ×
 
  留置権も先取特権もともに, 動産, 不動産の上に成立します。

 

   たとえば, 不動産の売買の先取特権は, 不動産の代価とその利息に対して, その 「不動産」 について存在します。
  なお, 建物賃貸借の場合には, 賃貸人は, 賃借人が建物に備えつけた 「動産」 の上に先取特権を有します。 その範囲は, ①賃借人所有の家具類などには限定されず, ②その家族の時計・宝石類・金銭・有価証券など広く個人的所持品も含まれます。



【問 2】 ○ 
  不動産の売主は, 代金・利息について, その不動産の上に先取特権を有し, 不動産が賃貸されている場合には, 賃料に対して物上代位により先取特権を行使することができます。



【問 3】 × 
  賃貸人が物上代位によって, 賃借人の有する動産の代金債権に対して先取特権を行使するためには, 必ず代金の払渡し前に差押えをしなければなりません。
  払渡し前に差し押さえることが, 絶対に必要です。



【問 4】 ○ 
  建物の転貸があった場合には, 賃貸人Aの先取特権は, 転借人Cの動産にも及びます。
  転貸借の場合, 賃借人Bの備えつけた動産が, そのまま転借人に譲渡されることが多いためで, 先取特権の行使に支障がないようにするためなのです。



【問 5】 ○ 
  賃貸人が敷金を受け取っている場合には, 賃料債権の額から敷金を差し引いた残額 (敷金で弁済を受けない部分)についてのみ, 先取特権を有します。
  先取特権は, 賃料債権の全額について行使できるのが原則ですが (担保物権の不可分性), 敷金がある場合は例外とされています。

  敷金で保証されているからです。



【問 6】 × 
  先取特権は, たとえば, 従業員の給料債権を優先するというように, 社会政策的な理由から, 法律に基づいて当然に発生する法定担保物権です。
  不動産工事費用の先取特権も法定担保物権ですから, その行使について, 債務者との合意は必要ないのです。




[質権]


□■問題編 


【問 1】 (19-7-3)
  質権は, 占有の継続が第三者に対する対抗要件と定められているため, 動産を目的として質権を設定することはできるが, 登記を対抗要件とする不動産を目的として質権を設定することはできない。



【問 2】 (10-3-1)
  建物の賃借人Aは, 賃貸人Bに対して有している建物賃貸借契約上の敷金返還請求権につき, Cに対するAの金銭債務の担保として質権を設定することとし, Bの同意を得た。 この場合, Aは, 建物賃貸借契約が終了し, AからBに対する建物の明渡しが完了した後でなければ, 敷金返還請求権について質権を設定することはできない。



【問 3】 (14-5-2)
  Aは, Bから建物を賃借し, Bに 3,000万円の敷金を預託した。 その後, Aは, Bの承諾を得て, この敷金返還請求権につき, Cからの借入金債務を担保するために, Cのために適法に質権を設定した。 この場合, CのAに対する利息請求権は, 常に満期となった最後の2年分についてのみ, この質権の被担保債権となる。



【問 4】 (14-5-4)/類題(10-3-3)
  Aは, Bから建物を賃借し, Bに 3,000万円の敷金を預託した。 その後, Aは, Bの承諾を得て, この敷金返還請求権につき, Cからの借入金債務を担保するために, Cのために適法に質権を設定した。 このとき, CのAに対する債権の弁済期が到来した場合, Cは, Bに対し, Bがこの質権設定を承諾したことを根拠に, この敷金返還請求権の弁済期の前に, 当該敷金を直ちにCに交付するよう請求できる。



□正解&解説編



【問 1】 × 
  「占有」 の継続が対抗要件と定められているのは, 動産質権ですが, 不動産に関する質権については, 原則どおり 「登記」 が対抗要件です。
  したがって, 「登記を対抗要件とする不動産を目的として質権を設定することはできない」 は誤りです。                           
  対抗要件が 「占有」 か 「登記」 か異なるだけで, 動産にも不動産にも質権を設定できることに異論はありません。



【問 2】 ×  
  賃借人Aは, 建物賃貸借契約の終了・建物明渡しの完了後でなくても, あらかじめ敷金返還請求権に質権を設定することができます。
  敷金返還請求権が具体的に発生するのは, 契約終了後, 建物明渡しが完了した時ですが, 抵当権と同様, 質権についても付従性が緩和されており, 現に具体的に発生していなくても, 条件付・期限付に発生するものであれば, あらかじめ質権を設定できます。



【問 3】 × 
  質権の場合, 利息については, 抵当権のように 『満期となった最後の2年分についてのみ』 行使できるという制限はありません。
抵当権は, 同じ抵当物の上に多数成立する可能性が大きいためこうした制限があるのですが, 質権では, 質権者が債務者から受け取った物を占有 (占有移転)するため, 同じ質物の上に多数成立することはまれであって, 他の権利者を害するおそれが少ないからです。



【問 4】 ×  
  Bの敷金返還債務の弁済期が到来していない間は, Bには期限の利益 (弁済期まで払う必要はない) がありますから, 質権者Cの債権の弁済期が到来したからといって, Bに対し, 敷金を直ちにCに交付するよう請求することはできません。
  Bが質権設定を承諾したからといって, その承諾に, 期限の利益を放棄する意思が含まれているものではないのです。

 

 問3と問4は難問ですね。



以上



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