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今回から債権編に入ります。
債権の意味はおわかりですね。 対比される物権との違いを再確認しておきましょう。
今回は債務不履行に関する基本的な問題です。
やさしいところですから失点するわけにはいきません。
[債務不履行]
■□問題編 (正解と解説はすぐあとにあります。)
以下の問で, 正しいものには○, 誤っているものには×をつけなさい。
【問 1】 (62-6-2)
Aは, Bに対して金銭債権を有している。 この場合, Bの債務の履行について確定期限があるときであっても, Bは, Aから履行の請求を受けるまでは履行遅滞とはならない。
【問 2】 (62-6-3)/類題(54-5-全)
AはBに建物を売却する契約を締結した。 この場合, Aの父の死亡後3か月後に当該建物を引き渡す旨定めた場合は, AはAの父の死亡した日から3か月を経過したことを知った時から遅滞の責任を負う。
【問 3】 (62-6-4)
AはBに建物を売却する契約を締結した。 この場合, 当該建物の引渡し期日につき特段の定めをしなかったときは, Aは, BがAに対し引渡しの請求をした時から遅滞の責任を負う。
【問 4】 (18-8-1)
AはBとの間で, 土地の売買契約を締結し, Aの所有権移転登記手続とBの代金の支払を同時に履行することとした。 決済約定日に, Aは所有権移転登記手続を行う債務の履行の提供をしたが, Bが代金債務につき弁済の提供をしなかったので, Aは履行を拒否した。 この場合, Bは, 履行遅滞に陥り, 遅延損害金支払債務を負う。
【問 5】 (2-2-1)/類題(60-2-2)
金銭債務の不履行については, 債権者は, 損害の証明をすることなく, 損害賠償の請求をすることができる。
【問 6】 (60-2-3)
Aは, Bに対して金銭債権を有している。 この場合, AがBの債務不履行を理由として損害賠償を請求してきた場合, Bは, 不可抗力をもって抗弁することはできない。
【問 7】 (3-9-2)/類題(2-3-4)
AのBに対する貸金に関して, AB間で返済時期について別段の定めがないときは, Aは, 相当の期間を定めて, 返済を催告することができる。
【問 8】 (2-2-4)/類題(14-7-3)(16-4-3)
債務不履行による損害賠償額の予定をした場合, 債権者は, 実際の損害額が予定額より大きいことを証明しても, 予定額を超えて請求することはできない。
【問 9】 (14-7-4)
AB間の土地売買契約中の履行遅滞の賠償額の予定の条項によって, AがBに対して損害賠償請求をする場合に, Aは, Bの履行遅滞があったことを主張・立証すれば足り, 損害の発生や損害額の主張・立証をする必要はない。
【問 10】 (14-7-1)
AB間の土地売買契約中の履行遅滞の賠償額の予定の条項によって, AがBに対して損害賠償請求をする場合, 賠償請求を受けたBは, 自己の履行遅滞について, 帰責事由のないことを主張・立証すれば, 免責される。
【問 11】 (14-7-2)/類題(60-2-4)(22-6-4)
AB間の土地売買契約中の履行遅滞の賠償額の予定の条項によって, AがBに対して損害賠償請求をする場合に, Bが, Aの過失を立証して, 過失相殺の主張をしたときは, 裁判所は損害額の算定にその過失を斟酌することができる。
【問 12】 (6-6-4)
Aは, Bから土地建物を購入する契約 (代金 5,000万円, 手付 300万円, 違約金 1,000万円) を, Bと締結し, 手付を支払ったが, その後資金計画に支障を来し, 残代金を支払うことができなくなった。 このとき, Aの債務不履行を理由に契約が解除された場合, Aは, 実際の損害額が違約金よりも少なければ, これを立証して, 違約金の減額を求めることができる。
【問 13】 (22-6-2)
両当事者が損害の賠償につき特段の合意をしていない場合において, 債務の不履行によって生ずる損害賠償請求権に関しては, 債権者は, 特別の事情によって生じた損害のうち, 契約締結当時, 両当事者がその事情を予見していたものに限り, 賠償請求できる。
【問 14】 (22-6-3)
両当事者が損害の賠償につき特段の合意をしていない場合において, 債務者の責めに帰すべき債務の履行不能によって生ずる損害賠償請求権の消滅時効は, 本来の債務の履行を請求し得る時からその進行を開始する。
【問 15】 (16-4-4)
共に宅地建物取引業者であるAB間でA所有の土地について, 平成16年9月1日に売買代金 3,000万円 (うち手付金 200万円は同年9月1日に, 残代金は同年10月31日に支払う。) とする売買契約を締結した。 このとき, Aが残代金の受領を拒絶することを明確にしている場合であっても, Bは同年10月31日には 2,800万円をAに対して現実に提供しなければ, Bも履行遅滞の責任を負わなければならない。
正解&解説
【問 1】 ×
履行遅滞に関する初歩的な問題です。
債務の履行について確定期限 (弁済期) があるときは, その確定期限が到来した時から, 当然に履行遅滞となります。
履行の請求があってから遅滞となるのではありません。
【問 2】 ○
これも初歩です。
人の 「死亡」 は, 到来することが確実ですが, その時期は不確定ですから, 不確定期限になります。 履行について不確定期限があるときは, 債務者は, その期限の到来を知った時から遅滞となります。
建物の引渡しについて, 「父の死亡後3か月後」 という不確定期限を定めたときは, 売主Aは, 父の死亡後 「3か月を経過したことを知った時」 から遅滞の責任を負います。
【問 3】 ○
これも同様です。
履行について期限を定めなかったときは, 債務者は, 履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負います。
建物の 「引渡し期日につき特段の定めをしなかった」 のですから, 売主Aは, 買主Bが引渡しの請求をした時から遅滞となります。
【問 4】 ○
「同時に履行する」 という約定がある以上, 決済約定日 (弁済期) に, Aが履行の提供をしたにもかかわらず, Bが履行の提供をしなければ, Bは履行遅滞となります。
したがって, Bは, 履行が遅滞したことによる損害賠償として遅延損害金の支払債務が生じます。
【問 5】 ○
金銭債権の特質に関する問題です。
金銭債務の不履行については, 債権者は, 損害が発生したかどうかの損害の証明をしなくても, 債務不履行があったという事実を立証するだけで損害賠償請求ができます。
※ 金銭債権 (債務) というのは, 「代金 100万円を支払う」 というように, 一定額の金銭を支払うことを目的とする債権のことで, 「最も債権らしい債権」 といわれます。 現代の取引関係では, すべての債権が, 最終的には金銭債権によって解決されます (損害賠償金のように)。
【問 6】 ○
金銭債務の不履行については, その原因がたとえ不可抗力 (たとえば, 大地震の発生により代金の支払期日に遅れたなど) によることを証明しても, 損害賠償の責任を免れることはできません。
これも金銭債権の特質によるものです。
【問 7】 ○
金銭消費貸借 (金銭の貸し借り) について返済時期を定めなかったときは, 貸主Aは, 相当の期間を定めて返済の催告をしなければなりません。
※ 普通の債務で履行期限を定めなかったときは, 債務者は, 履行の請求を受けた時 (催告の時) から履行遅滞となります。
しかし, 金銭消費貸借の場合には, 貸主は相当の期間を定めて催告することとなっていますから, 催告の時からではなく, 相当期間経過後から遅滞となります。
5月20日に 「5月末日までに返還せよ」 と催告されたら, 5月末日から履行遅滞となるのであって, 請求された5月20日からではありません。
【問 8】 ○
賠償額の予定をした場合, 債権者は, 実際の損害額が予定額より大きいことを証明しても増額請求をすることはできません。
そもそも賠償額の予定は, 損害の有無とか損害額についての立証を問題とせずに, 一律に解決するという趣旨でなされるからです。
反対に, 債務者が実際の損害額が少ないことを証明しても減額請求はできません。
※ したがってまた, 裁判所も増額・減額をすることはできません。 ただし, 賠償額が高すぎて暴利行為となるときは, 公序良俗違反 (民法90条) を理由に, 全部または一部を無効とし, 過大な賠償額を減額することができます (大判昭9・4・21)。
※ 賠償額の予定は, 契約と同時にする必要はなく, あとで追加的に定めてもかまいません。
【問 9】 ○
賠償額の予定を定めた場合, 債権者は, 債務者の債務不履行という客観的な事実があったことを証明すれば足ります。
実際に損害が発生した (損害の有無) とか, 実際の損害額を証明する必要はありません。
債務不履行が債務者の責めに帰すべき事由によるものであるかどうか (帰責事由) も証明不要です。
【問 10】 ○
賠償額の予定は, あくまで債務不履行が成立する場合の問題ですから, 債務者が, 自己の履行遅滞について帰責事由がない (自分に責任はない) ことを立証すれば, 債務不履行そのものが成立せず, したがって免責されることになります。
【問 11】 ○
債務者が, 債権者の過失を立証して 「過失相殺の主張」 をすれば, 裁判所は損害額の算定について, その過失を斟酌することができます。
賠償額の予定というのは, 損害の発生や損害額の立証を不要とする合意であって, 過失相殺の主張までも排除する趣旨ではありません。 相手方に過失があれば, 当然にこれを考慮しなければ不公平です。
※ 債務者から過失相殺の主張がない場合でも, 債権者に過失があったときは, 裁判所は, これを考慮して損害賠償の責任およびその額を定めます。
債務不履行における過失相殺は必要的なもので, 不法行為の任意的な過失相殺の主張とは異なります。
【問 12】 ×
売主Aの債務不履行を理由に契約が解除された場合,Aは, 実際の損害額が違約金よりも少ないことを立証しても,その減額を求めることはできません。
違約金は,賠償額の予定と推定されますから,実際の損害額を証明しても,予定額の増減を請求することはできないのです。
買主Aが減額を求めるには,賠償額の予定という推定そのものをくつがえして,違約金が賠償額の予定ではないことを立証する必要があります。
【問 13】 ×
「特別の事情によって生じた損害」 は, 当事者がその事情を予見していたとき,または予見することができたときに賠償請求できます。
また,予見しまたは予見できた時期は 「契約締結当時」ではなく,「債務の履行期」です。
【問 14】 ○
履行不能によって生じる「損害賠償請求権」は,本来の「履行請求権」と法的に同一性を有するものですから,その消滅時効は,本来の債務の履行を請求できる時から進行します。
【問 15】 ×
債権者があらかじめ弁済の受領を拒んでいるときは,債務者は,弁済の準備をしたことを通知して受領の催告をすれば,弁済の提供となり,この時から,債務不履行によって生じる一切の責任を免れます。
債務者Bは,10月31日に 2,800万円を「現実に提供」しなくても,履行遅滞の責任を負うことはありません。
以上のことは条文に書いてあります。 一読をおすすめします。
【重要条文】
■履行期と履行遅滞 (412条)
① 債務の履行について確定期限があるときは, 債務者は, その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。
② 債務の履行について不確定期限があるときは, 債務者は, その期限の到来したことを知った時から遅滞の責任を負う。
③ 債務の履行について期限を定めなかったときは, 債務者は, 履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
■債務不履行による損害賠償 (415条)
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは, 債権者は, これによって生じた損害の賠償を請求することができる。
債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも, 同様とする。
■損害賠償の範囲 (416条)
① 債務の不履行に対する損害賠償の請求は, これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
② 特別の事情によって生じた損害であっても, 当事者がその事情を予見し, または予見することができたときは, 債権者は, その賠償を請求することができる。
■過失相殺 (418条)
債務の不履行に関して債権者に過失があったときは, 裁判所は, これを考慮して, 損害賠償の責任およびその額を定める。
■金銭債務の特則 (419条)
① 略
② 金銭の給付を目的とする債務の不履行の損害賠償については, 債権者は, 損害の証明をすることを要しない。
③ 金銭債務の損害賠償については, 債務者は, 不可抗力をもって抗弁とすることができない。
■賠償額の予定,違約金の性質 (420条)
① 当事者は, 債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。 この場合において, 裁判所は, その額を増減することができない。
② 略
③ 違約金は, 賠償額の予定と推定する。
■返還の時期 (591条)
① (消費貸借について) 当事者が返還の時期を定めなかったときは, 貸主は, 相当の期間を定めて返還の催告をすることができる。
以上
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