アメリカでは4人に1人がフリーエージェント!?「フリーエージェント社会の到来」という本が話題を呼んでいます。
著者のダニエル・ピンク氏は、
ホワイトハウスでの要職を捨ててフリーに転身した経験の持ち主。
ダニエル・ピンクは、
アル・ゴア副大統領の主席スピーチライターとしてホワイトハウスに勤務し、
必要の時にいつでもポケットベルで呼び出される大企業のサラリーマンであった。
週末、ポケベルがなり、
誇らしげな顔をして「ごめん、ホワイハウスから呼び出されちゃって」等と言い、
ディナーの約束をドタキャンしたりすることにステータスを感じていた誰よりも立派な大企業のサラリーマンであった。
しかし、あまりの激務に、
ホワイトハウスで嘔吐したことがきっかけで辞表を提出し、
フリーになり、どこの組織にもサラリーマンとしては属さない新しい個人がフリーとして転身した経験の持ち主。
このように個人がサラリーマンにならずに働くことができるようになったのは、
インターネットが普及したことにより影響が大きい。
大企業のサラリーマンはどんどん時代遅れになり、
これからは、「個人が組織に縛られることなく自由に働く時代になる」
最初にこの本を手にとったのは、今から10年前。
当時、尊敬していた師匠が私に対しこの本を見せてくれた。
10年前にアメリカで書かれた本だが、
今の日本にそのまま当てはまるといえる。
「成功したといえるのは、朝起きて、自分のやりたいことを自由にやれる人だ」
アメリカでは、1980年代以降、組織に属さず、
「個」を重視した「雇われない生き方」が増えはじめ、
今や社会変化をもたらす大きなトレンドになっています。
すでに全米で3300万人(アメリカの労働人口の4人に1人)の人が、
「フリーエージェント」という働き方を選択している。
フリーエージェントとは、
「組織に雇われない働き方をする人々」のこと。
言い換えると、
「インターネットを活用し、
自宅でひとりで働き、組織の庇護を受けることなく自分の知恵だけを頼りに、
独立していると同時に社会とつながっているビジネスを築き上げた」人々のことを指す。
日本で、“フリーエージェント!?”というと、
“野球選手のFA宣言?”といった具合で、
まだまだ社会のフリーエージェント化では、アメリカに大きく遅れています。
その部分について、著者のピンク氏は、
週刊ダイヤモンド誌(2002年9.7号)のインタビューで次のように述べています。
「アメリカの組織人間より日本のサラリーマンの方が、フリーエージェントになるのが、難しいだろう。それは、アメリカ人には、
“独立して自分で仕事がしたいというDNA”が入っているからだ。しかし、日本でも、よりフリーエージェント社会になるのは必至で、
もっと自分の意思で生きる人が増えてくると予想される。(中略)特に若い世代に期待が持てるのではないか。」
DNAとか言われると、
アメリカの開拓魂「フロンティア・スピリッツ」が脈々とその子孫に受け継がれているのか!と感動し、日本人の国民性とのギャップを感じてしまいますが…。
それはさておき、「『産業革命以来の社会の大変革』と称されるこのトレンドは、日本にも例外なくやってくる。」と述べています。
今なぜ「雇われない生き方」なのか?
フリーエージェントが登場してきた背景にある変化として、
ピンク氏は、本書の中で以下の4つを挙げています。
1.終身雇用制度の崩壊により、会社と個人の関係が変わった。
2.コンピュータが小型化、自在にネットワークへ接続できるようになったことで、
個人が生産手段を安価に手にすることができるようになった。
3.生活水準が高くなり、働く目的が生活の糧のためではなく、
仕事にやりがいを求めるようになった。
4.企業の寿命が短くなる反面、個人の寿命は伸びて、会社より長く生きるようになった。
つまり、
大企業が大量の社員を終身雇用する経営モデルにリスクが出てきた、
企業のライフサイクルが短命化して一生勤務できる補償が無くなってきたことで、
会社人間として忠誠をつくすような働き方そのものにリスクが生まれてきたということです。
分散型の投資をするように、
複数の企業と仕事をしてリスクヘッジすることが不可欠な時代となったわけです。
そして、パソコン&インターネットの普及が、
個人のこうしたワークスタイルの実現を可能にしています。
日本でも、経済の低迷から終身雇用制度の崩壊が進んでいます。
今後、不良債権処理が本格化すれば、大量のリストラが敢行されるでしょう。
となると、日本でも、フリーエージェント化が進むのは、そう遠い話ではなさそうです。
新しい働き方がもたらす新たな労働倫理
フリーエージェントが持つ新たな労働倫理を、次の4つのキーワードで説明しています。
これは、著者が全米を周り、1年をかけ聞き取り調査した結果によるものです。
・安定より「自由」を選択。
・大切なのは「自分らしく」仕事をすること。
・自分の仕事に「責任」を持つ。
・「自分なりの成功」を求める。
さらに、今の仕事が正解かどうかは、その仕事が楽しいかどうかがにより、
楽しくないなら間違っていると考えます。
これは、これまでの会社人間の倫理観からすると、とんでもないことです。
時代の変化とともに価値観は変わります。
いや、これからは、個人の価値観の変化が時代を変革させると言った方が正しいかも知れません。何を大事にするかによって、人の生き方やライフスタイルが変わってしまうのです。
フリーランスを生き方として選択した私は、上記の倫理観に正に合致しています。
しかし、これまでは、組織に合わないアウトサイダー、単なるわがままでしょう、という風に見られていたと思います。それが、アメリカの労働者の4分の1が、このような価値観へ転換しているというのは、かなりの驚きと喜び(仲間がたくさんいる!)です。
未来の社会はこう変わる
著者のピンク氏は、本書の最終章で次のような未来を予測しています。
●フリーエージェントの未来では、リタイヤする人は少なくなる。65歳を過ぎても、インターネ ットを駆使して働き続ける。(→「eリタイヤ」)
●様々な形で「脱学校」化が進む。義務教育は次第に廃れて、多様な教育の形態が生まれる。在 宅教育はますます盛んになる。
●2つの新しいタイプのオフィスが登場する。1つは、個人の作業スペース、もう1つは、仲間 と顔を合わせたり、協同作業が出来る場。ホームオフィスは当たり前になり、リフォーム産業 に好景気をもたらす。
●個人が株式を発行するようになり、企業と同様の方法で資金を調達するようになる。新しい金 融手段が続々生まれるだろう。
●アメリカ政治の眠れる巨人として、フリーエージェントたちが、新たな政治勢力となり、フリ ーエージェント経済に合った新しい政策を産み出す原動力になる。
●経済の生態系には、巨大企業とミニ企業が残り、中規模の企業は廃れていく。管理職は姿を消 し、その都度適材適所の人材を集めマネージメントできるプロジェクトマネージャーが生き残 る。
政府と金融の未来についてはコメントし難いが、その他については、自然な流れだ。
日本でも少なからず、傾向として出てきていると思う。
ここで、問題に思うのは、
先にピンク氏が述べていた、アメリカ人が持っていて、日本人に乏しいもの、
“独立して自分で仕事がしたいというDNA”です。
これまでの日本では、立派な組織人間を育てる教育を良しとしてきました。
個性とか、自由と責任というより、集団の秩序を重んじてきたから、
“いきなりは変われない!”と戸惑う年代層もあると思います。
しかし、見方を変えると、
「自分の人生を、自分の意思で選びとれる時代」がやってきたのです。
何を選択するかは、個人の自由。責任を持って仕事をし、相手に評価されることは、
非常な達成感と充実感をもたらしてくれます。納得した人生が送れます。
すると、この時代の変化は、
「雇われない生き方」という新たな選択肢を自分に問いただす機会とチャンスを、
全ての人に与えてくれるものと言える。