皆さん、こんにちは。

またも緊急事態宣言が出てしまい、皆が楽しみにしていたであろう『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の公開が再延期となってしまいました。

映画界隈は2021年に入ってもにっちもさっちもいきませんね。

アニメは『ゆるキャン△』の続編が始まりましたが、BS11だとその1時間後に『ひぐらしのなく頃に業』が配置されるという鬼シフトが組まれました……。その後の『アイドルマスター』再放送で心を癒せというオヤシロ様のお告げなんでしょうかねこれは。

 

さて、今回は『映画鑑賞こぼれ話』、昨年最後となる12月分となります。

 

先月鑑賞した映画は、全部で「6本」

 

1.Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット- 前編Wandering;Agateram

 

 

 

大ヒットゲーム『Fate/Grand Order』初の劇場アニメ化作品。

感想記事も結構読んでいただいているようですが、はっきり言って普通に出来が良くない部類のアニメーション映画だと思いました。

俵藤太の抹消、カルデア側の事情もほぼ全カット、元ネタのアーサー王伝説についてもかなり断片的な解説しかしない。

原作を知っているからこそ不満が出る一面もあるのかもしれませんが、じゃあ知らない人が見に行って楽しめるものなのかと言われてもかなり厳しいものがあり、最早誰向けなんだこれはという気持ちにしかならない話運びの杜撰さが気になります。

アニメ化自体がまず難しい題材にしたってもうちょっとターゲットを定めて考えて作りを考えて欲しかったです。

[Heaven's Feel]が成功したのもファン向けに振り切ったからこそだと思うので。

作画も言うほど良いところがありませんでしたが、後編は少なくともそこは良くなってそうでどうなるかといった感じです。

 

2.魔女がいっぱい

 

 

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズなどを手掛けたロバート・ゼメキス監督最新作。

原作は『チャーリーとチョコレート工場』のロアルド・ダールで、プロデューサーはギレルモ・デル・トロ。

アン・ハサウェイ主演ということでなんとなくキラキラした感じの予告や広告が打たれていましたが、この製作陣の名前で気付くべきでしたね。

ゴリッゴリのダークファンタジーでした。

まずギョッとしたのがアン・ハサウェイを代表とする「魔女」たちの悪趣味フルスロットルなビジュアル。スキンヘッドで口が裂けてて手の指が3本、足の指は1本だけというあの見た目は子供が観に行ったら普通にトラウマになりません……?

ストーリーは要は悪い魔女を懲らしめるぞ!というおとぎ話的な内容ではあるのですが、『ヘンゼルとグレーテル』なんか生温いレベルでその展開もハードコア一直線。

鼠にされた子供がそれでも愛してくれる人を見つけるという筋書き自体は良いものの、肝心の鼠にされた子供の適応力がいくらなんでも高すぎるのと明らかにやりすぎている後半の反撃シークエンス。更にそこからブレーキのぶっ壊れたままアクセルを踏み続けて終わるラストと「倫理観は⁉倫理観はどこなの⁉」と叫びたくなるような展開が胸を打ち、思わず泣いてしまいました。

オクタビア・スペンサーの台詞回しはなかなか軽妙で楽しかったです。

最後の世界旅行の写真とか完全に「意味が分かると怖い話」なやつでしたけどね。

鼠視点での冒険シーンなども含め、かなり奇妙な感覚が楽しめるのでそういうのに飢えている人にはおすすめしたい1本です。

 

3.劇場短編仮面ライダーセイバー不死鳥の剣士と破滅の本/

 劇場版仮面ライダーゼロワン REAL×TIME

 

 

 

 

 

新型コロナウイルスの関係で座組が変更となった『仮面ライダー』シリーズの劇場版最新作。

2本立て方式で新作と旧作の劇場版を作る方式になりましたが、どちらもアクション面やキャラ立ちはかなりしっかりしていて、作り手たちの意地を感じさせられる手応えではありました。

『セイバー』は20分ほどしか無いながらも「日常を守る」というヒーロー然とした主張で全体の戦いにしっかり正当性を持たせていましたし、『ゼロワン』は本編以上にキャラ同士がしっかり連携を取って戦う様が印象的でそれぞれ良さがちゃんと出ていると思います。

ただ『ゼロワン』に関してはその他の本編の良くなかったところに関して悪い意味で開き直っている感じもあり、Twitterで上がる制作秘話も若干内輪ネタ感が垣間見える部分もあって、これはもう一種の特性として諦めるしか無いのかなという気分になってきますね。

そんなわけで全体としてはだいぶ複雑な評価になりますが、伊藤英明さんは文句なしに良かったです。

 

4.ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!

 

 

キアヌ・リーヴス、アレックス・ウィンター主演の映画シリーズの約30年ぶりの最新作。

過去シリーズは未履修(予備知識はラジオで概要を聞いた程度)でしたが、キアヌ・リーヴスのコメディというので少し引っ掛かっていたのでこの機会に鑑賞してきました。

いやーバカな映画でしたね……(良い意味で)。

「世界を一つにする曲」という課題に対し、「曲ができた未来に行けばいいんじゃね?」というズルが通用しないタイムトラベルものならではの展開も面白ければ、クズになっていたアナザービルとアナザーテッドのコミカル具合も最高。

そしてその「世界を一つにする曲」というテーマをちゃんと真正面から描き切るその過程とラストには素直に感心しました

変なメッセージ性とか乗っけずにひたすら行動で見せ続けるこの説得力こそ映像ならではの醍醐味。「音楽で世の中にエールを!」とか言い出すどこかの放送局にも見習ってほしいですね。

あと主役2人の娘が凄くかわいかったですね。この2人がバカやってる下りもかなり楽しかった。

 

5.えんとつ町のプペル

 

 

……はい、現在色々な意味で話題沸騰のアニメ映画でございます。

未だに映画の出来に関してしっかり意見を述べる人をあまり見ないので僕が敢えて述べますが、映像と演技は一流、脚本はド三流といった感じの作品です。

それ「っぽく」作っている場面は色々とあるものの、あくまで「ぽい」だけで細かいディティールが作り込まれておらず、話の強度が非常に弱い。

特にサブキャラの扱いの雑さは看過し辛い。

折角小池栄子や藤森慎吾と芸達者を揃えているのにやることがただの主人公のイエスマンという勿体なさ。

原作者は変に色をつけようとせず脚本もプロに任せればよかったのでは……という出来です。

あと劇中で「良き親父」として描かれているブルーノがエゴ全開のはっきり言って凄く嫌なタイプの親で、言いたいことは山ほどあるのですが一つ挙げるなら「せめて息子の名前ぐらいちゃんと呼んでやれ」と思いました。

 

テーマが良ければ作品の質が良くなるわけではないということは作り手も観る側も肝に銘じてほしいですし、肝に銘じたいですね。

 

 

6.ワンダーウーマン1984

 

 

今年は公開延期が相次ぎ散々な目に遭ったアメコミ実写化映画の最新作。

DCユニバースは滑り出しが良くなく、『アクアマン』でようやく見始めたぐらいで『ワンダーウーマン』に関しては前作をブルーレイで予習してから観に行ったのですが、どちらも最高でした。

まずドルビーシネマで観た主演のガル・ガドットさんがもう最っ高に美しかったでしたね。この人の存在感だけでもう満点みたいなところすらあります。

バーバラとの社会人百合も良ければ、前作から引き続きのクリス・パイン演じるスティーブとの切ないけれど温かい恋愛模様も非常に出来が良く、人間ドラマとしての完成度がとても高かったように思います。

そしてこの『1984』、戦争映画だった前作からテーマがぐっと現代的になり、文明社会においては普遍的ともいえる「夢(欲望)」の危うさをしっかり描き出している点が非常に素晴らしかった。

手段を選ばない実現は周囲にとっても、本人にとっても良い結果を生み出さないというメッセージがオープニングのダイアナの過去の場面から繰り返し描かれ、アメリカはおろか世界中が混沌に包まれていくクライマックスの阿鼻叫喚ぶりは皮肉にも現実と重なってしまう部分もありそれが無類の面白さに繋がっているタイプの作品でもある。

『プペル』の後だと特に感情を揺さぶったのが夢と息子に板挟みにされる父親がヴィランという点。

息子との間で願いが行き違うという親のエゴから発生するドラマをしっかり描き出しており、「『プペル』よりよっぽど親が観るべき映画では?」と思いました。

ダイアナと敵対することになるバーバラの「フェミニズムの象徴たる『ワンダーウーマン』への憧憬」から来る悲劇も男女同権が進んだ80年代らしく同時に今だからこそ多くの人に刺さりそうなテーマであり、全体にヒーローもの(ジャンルもの)であるということに甘え切らずに「おためごかしでない現実」を画面に現出しようとしているという点で、監督のパティ・ジェンキンス氏、非常に良い仕事をされたのではないでしょうか。

まあラストの少しメッセージ性が強すぎる部分や、バーバラとのドラマの決着が不完全燃焼気味なのは否めない面もありますが。

 

ともあれ『プペル』がなんだか心に靄がかかるような味わいの作品だったため、大晦日にこの作品を観られたのは一年の締めとしてとても満足のいくものでした。

 

 

……というわけで、以上が「映画鑑賞こぼれ話」12月号でした。

今年も楽しい映画ライフを送っていきたいです。

それではまたお会いしましょう。

ここまでのお相手は、たいらーでした。