ねずみ。

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HUNTER X HUNTER


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主にHUNTER×HUNTERのことばかりだけど、妄想とか夢とか漫画・アニメの感想とか妄想とか妄想とかを綴っているだけのブログです(^∇^)



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背中合わせに座って、それぞれ好きなことをしていた。トランプタワーの崩れる音を聞きながら、わたしはただ呼吸だけをしていた。

背中はたしかに温かいのに、空気だけはどことなく冷たい。今日はへんてこりんな服を着ないでトランプタワーを作ってる。いい大人が、ふてくされた子どもみたいに座り込んで。

何度も何度も、タワーは崩れる。未完成のまま、何度も何度も。



うまくいかないな。



ぽつりと、そう呟いて。髪をかきあげていた。らしくない、そう言おうとした、はずだった。



一緒に作ろう。



きっとそんなの無理。そのはずなのに。らしくもなく、彼はうなずいたの。




寝癖がぴよぴよと揺れる。あなたはそんなことも気にせずにぼんやりとコーヒーをすすっていた。あなたがほんとうは朝に弱いんだって知っているのは、わたしだけ。

あくびをひとつして。窓の外の、くもった白い空を眺めて。ねむい、なんてつぶやいて。



わたしを、縋りつくようにして抱きしめるあなたの腕が。



格好つけてばかりいるんだから。リーダーは大変ね。寝癖もきれいに直して出かけていく。わたしはだいすきなのに。格好つけないあなたは、とても優しいよ。

欲しいものが、もし別にできたら。わたし。あなたの傍にいられなくなるのかしら。もし、新しいものが。あなたの手に入ったら。わたしが要らなくなってしまったら。



たまらなく好きなの。



縋りつくようにして抱きしめてくるあなたが。その腕が。柔らかい髪が。たまらなく、好きなの。わたしだけが見られる、その寝癖が。






泣いていたら、うさぎのぬいぐるみがわたしの涙をぬぐったの。



もう笑わないで。偽りの笑顔なんて要らない。あのときの優しさは本物だと信じ続けているわたしを、きみは冷たく突き放したけれど。そうやって笑うきみを見るのが、いちばん傷つくから。

いつのまに愛想笑いなんて覚えたの。出会った頃はめったに笑わなかったのに。いつのまに、そんなふうに笑うようになったの。



泣いていたら、うさぎのぬいぐるみがわたしの涙をぬぐったの。泣かないで、って。きみが、困ったように笑いながら。あのとき、きみの操るうさぎのぬいぐるみが、どれほど温かかったことでしょう。



ああ、そうか。わたしが、泣いたから。わたしが泣いたから、きみは代わりに笑うように。

そうか。そうかあ。きみから本当を奪ったのは、わたしだったんだ。



オレは優しくなんてないよ。ばいばい。これ、あげる。



そう言って、きみがわたしに投げつけたうさぎのぬいぐるみが、泣いていました。

そうね、ばいばい。わたしは、うさぎのぬいぐるみを抱きしめて、今日もきみのことを思い出している。





いってきます。

いってらっしゃい。



これがあなたとのさいごの会話。ねえ、わたし、安心していたの。ハンターになることができて、念というものを身に着けたと言って喜んでいたあなたに。もう怖いものなんてないと思っていた。ねえ。それなのに。



なんにも帰ってこなかった。わたしが作ったあの帽子さえ。へたくそで、形が悪かったのに、あなたは気に入ってくれた。いつもかぶってくれた。でも、帰ってこなかった。



いってきます。



帰ってこないなんて思いもしなかったの。だから、笑った。いってらっしゃい、って。笑って、あなたはわたしに手を振って、いってきますって言った。

もう一度、会いたいよ。






紅茶に砂糖を入れるしぐさ。本に向けるまなざし。昼下がりのテラスでくつろぐあなたを、遠くから眺めるのが好きだった。たとえば、洗濯物を干しているとき。部屋の掃除をしているとき。洗い物をしているとき。ふと手を休めて、あなたのほうを向くのが、わたしの癖だった。



わたしの知らない言葉で、寝言を言うときがたまにあるの。そのときのあなたの声は、いつも怒っていて、泣いていて。飛び起きたあなたと顔を合わせれば、あなたの目は月明かりに照らされていつも赤く光っていた。



帰りたいのね。ほんとうに愛していたのね。



目が合ったら、笑いかけてくれた。それから紅茶をひとくち飲んで、あなたはまた本の世界へと帰ってゆく。その姿を遠くから、眺めて。近くへと寄って。わたしもここでひと休みする。






大事なものなんてない。そう言ったときのあなたの目、どれほど寂しそうだったかあなたは知らないでしょう。一緒に星を見たね。夜がいちばん好きだって言ったね。星を見られるから。星を、きれいだと思うからって。

あなたがそう言ったとき、なぜだか、わたしは泣きそうになったのよ。



ゴミばかりが広がる街で、星だけがきれいだった。あなたにもそれが分かったの。それが嬉しかったの。

お金も食べ物も洋服も、命さえ。あなたは誰からだって奪えてしまう。そうでしか生きられなかった。善悪の概念もなく。



ああ、会いたいな。



いまでも星を見ているでしょうか。あなたは何がほしいの?あなたが今いる場所にいれば、いつかは手に入るの?



大事なものなんてない。だから、ここで別れるね。



そう言ったときのあなたの目が、どれほど揺れていたか。知らないでしょう。あなたは知らないでしょう。

星は、手に入らないのよ。知らないでしょう。あなたは、わたしが大事だったんでしょう。






小鳥がね、一羽、きみのそばに飛んできたよ。木の下でお昼寝していたでしょう。きみの肩にとまって、鳴いていたよ。



あのとき、どうして手を離したのでしょう。もしわたしがきみの手を握ったままでいたら、こんなことにはならなかったのかな。きみが憎しみを覚えることも、自身を捨ててもいいなんて思うことも。なかったのかな。ねえ。なかったのかなあ。



小鳥がね、一羽、きみのそばに飛んできたよ。木の下で膝に顔をうずめていたでしょう。きみの肩にとまって、鳴いていたよ。



きみは、泣いていたね。






スケートボードに乗れないって、むすりとしながらわたしを見たの。あの日、からだ中に傷を作って。

練習して、コツをつかんで、今ではもうわたしの支えなど要らないくらい。ほんとうは、縋りついてくれたことを、今でも嬉しいと思っているの。



血だらけで帰ってくるたび、あなたの目は暗くなっていた。わたしに向ける表情は、どれも無邪気な好奇心だったのに。

何を覚えたの?何をさせられたの?聞かなくても分かっている。こんなとき何て言えばいい。どうすれば傷つけなくて済むだろうか。などとくだらないことを考えているうちに、あなたはわたしの横を通り過ぎていった。



嬉しいと、思っていたの。



嬉しかったの。あなたが、スケートボードの乗り方を教えてほしいと言ったとき。笑っていてほしい、なんて、願ってしまったの。きっとここがそういう場所ではないから。この先きっと、あなたが傷つくことを知っていたから。






医者になりたいんだ、って。笑ってた。



白い花が咲いていた。ここから見える景色がとても好きだった。きらきらと煌めく海と、大きなベルが見えたから。

白いシャツがとても眩しかった。机にかじりついて、一生懸命。その横顔を見ているのが、好きだった。



好き、だった。



医者になりたいんだ。知ってるよ。そんなに悲しそうに笑わないで。誰のせいでもない。それでも。それでもきみは、負い目を感じてしまうのでしょう?

やさしいね、きみは。ほんとうに、やさしいね。わたしが摘んだ白い花をなでて、水を取り替えて、笑ってた。



笑ってた。



やさしさが胸に沁みこんで、わたしの視界は滲んでしょうがない。好きで好きで、しょうがないの。