一昨日、とても美味しいアブラの乗った鰯刺身をいただきました。あまりにも美味しく2人前を完食。つまり4匹。そして食べながら想い出した事があります
とある港町の大衆酒場でとても気性の激しい60代女性が居ました。はじめは女将か、と思うほど店を仕切っています。客人にも怒鳴りちらし、魚は美味しいのに店のヒトは怖い、という感覚だったのです。私の連れなど、「行きたいけど(怖いから)行きたくない」と言うくらい特徴的な酒場。
10年以上、年に数回通ううち、60代女性との関係が変わってきました。私が顔を出すと「昼間から呑んで良い身分やな」。女性と行くと「前と違う子連れてきて・・」毒を吐きながらも親しみを込めて話しかけてこられます。それでも、その声かけが終わるといつもの怖い顔の怖いおばさんに戻ります。
あるとき、一人で昼間に行きました。店は普段と違い余裕があります(客が少ない)。怖いおばさんは私の横にきて話しかけられます「鰯の刺身にはな、たまり醤油よりも普通の醤油が合うねん」。試してみると、その通りでした。私はこの時から鰯、秋刀魚、鯖、鯵の刺身には刺身醤油でなく普通の醤油を使うようになったのです。もちろん一昨日も。
2年くらい前、店に行くと怖い(威勢のよい)おばさんの姿はありません。店も殺気立っていず穏やかです。私は店員の女性に「いつもの方(これでわかる)お休みですか?」と聞きました。
「昨日亡くなった。あれだけ呑んで、タバコ吸ってたら当然やな。あんな生活してたらアカンねん」。私は言葉を返す事できませんでした。凄く悲しかった。「そこ、横並びに2人や。詰めて座って。」「忙しい。いっぺんに言われても覚えられへん」と怒鳴られた事が思い出されました
ヒトは亡くなったら終わり。しかし怖いおばさんのお陰で美味しい刺身のいただき方を知ったのです。大切な知恵を残していただいた怖いおばさんに感謝しています。そして鰯刺身を摂るたびに、怒鳴られて楽しかった日の事を想い出すのです。合掌。