教育の場で差別は原則として絶対に駄目だと考えます。しかしあくまで原則です。差別で救われる事もあるのです。
私の大学院時代2年目の話です。生意気なエリート(某有名歯学部卒)が入局してきました。そして当時の教授も顔をしかめる程の大きな態度で何でも知っているように話ます。若手教員に対してはまったく敬意を払いません。
当時、今では考えられないくらい私は感情の起伏が激しかったのです。そして爆発しそうになった時、私の指導医が演技をしたのです。私たち2人が居る場で、です。
指導医 『malignant ameloblastoma(悪性エナメル上皮腫)を診た事あるか?病態を説明してみ。』
嫌な奴 『・・・』
指導医 『そんな基本的な事も知らんのか。図書館行って調べてきなさい』
指導医は厳格な方でしたが、頭ごなしに命令口調で詰問するような場面ははじめてでした。ですから私は驚きましたしショックでした。悲しくなりました。
ところが、奴が出て行くと、(悪性エナメル上皮腫なんて)自分も診た事ないわ・・と笑っておられました。そして、私が爆発する前に一芝居を打ったと言われていたのです。
それからしばらくして、奴は辞めていきました。再び平和な教室に戻ったのです。この有難い経験を通して、時に差別は必要だと思いました。平等に扱われていれば私の方が潰れていたはずです。
当時の指導医は今では教授になられました。ご当人はお忘れかもしれませんが、私には懐かしい想い出です。
ちなみに悪性エナメル上皮腫というのは顎骨に見られ、骨を破壊しながら進展する悪性度の高い腫瘍です。学会での症例報告ででてくるくらいの珍しい腫瘍で、歯科医師国家試験でも名前が出る程度です