そこはいつも、ちぎれそうな叫びで満ちていたって、
痛くないんだ、ちっとも。
だって、嘘がないから。
虚栄がないから。
あの哀しい気持ちと
燃え落ちるような激しい怒りと
ぜんぶ、そのまんまだから、
ちっとも、汚らしくないんだ。
心地いい、初夏の風みたいなところで、
深く深く、息を吸って、吐いて
まるで
そう、呼吸してるみたいなんだ。
ちっとも見苦しくなんかないんだ。
うそが、ないから。
息を吸いたかっただけなんだ。
そして、吸ったまま息を止めるなんて、人間無理だから、
思い切り横隔膜を使って、背中が曲がるほどに空気を吐き出したかっただけなんだ。
からだを一巡して、ぐるりと周遊してきた大気を、空間に返却したいだけなんだ。
ただそれだけのことで、
それは、とても難しいこと。
誰かの呼吸に、何かの呼吸に合わせようとすると、心不全になる。
でもね、またあごを上げて喉をそらして雲を見上げながら考えるんだ。
自分は、苦しいときでも、なんだかんだと、頑固に、偏屈に、
自分のブレスにこだわっていたんじゃないだろうか。
誰かのタイミングに合わせることなんて、
やろうとしたけれど、結局やめてしまったことばかりなんだろうなって。
だから、いつでも、どこでも、
残されている痕跡は、
私の息遣いそのものなんだろう。
だから、心地がいい。
どんな哀しい思い出だって、いとおしい。
この今の瞬間を、
いつか、
愛おしくかんじるときも、
憎らしくかんじるときも、
何もかんじなるときも、
感じすぎて、思い出したくなるときも、
どんなときも、
自分に何が訪れても、何を感じても、
残しておこう。
バスのガラスに息を吹きつけて曇らせて絵を描く小僧のように、
稚拙に、
飽きることなく。
何に対しても、飽き足らずに、
短い足で、追いかけて。
きっと、そこが最後のライ麦畑で、
はみ出そうになったら、ホールデン少年が、やさしく受け止めて、
また押し返してくれる。
わたしが、幽霊になってすり抜けてしまわない限りにおいて。
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なんの話?
それはね、
ネットの広大な世界に、分裂してちりばめた、私の破片たち、
部屋に散らばる、CD、本、音楽、メモ用紙
それら全部が合奏で、
全部がそれぞれのパートをきちんと担当しているから、
無理に、統合しなくていいんだ、
分けたままでいいんだって思っただけなんだ。
だって、オーボエにトランペットの音は出せない。
みんな違って、みんな別々だけど、
それでも、1つの曲を奏でている。
違うものが重ならないと、
空間に音波は広がらない。
だから
いいんだよ?
それだけ、君の手持ちの楽器が多いってことなんだ。
きっとね。