「脚のないトカゲ」も存在するが、学問上「ヘビとトカゲの違い」は | メインウェーブ日記

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来年、2025年は巳年だ
しかし、ヘビには申し訳ないが、人間社会では一般的にヘビは嫌われ者であるしかし、生態や人間社会・文化とヘビの関係を知れば、決して悪い奴らではないと分かるに違いない
日本で唯一のヘビの動物園であり、ヘビの生態・毒についての研究機関でもある「ジャパン・スネークセンター」(群馬県太田市藪塚)の研究員たちが得意分野を分担して書いた話題の新刊『ヘビ学 毒・鱗・脱皮・動きの研究』(小学館新書)より、「ヘビとトカゲの違い」について解説する

日本は「キラリと光るヘビ小国」

ヘビ類は毎年のように新種が発見され、全世界で確認されているヘビは4100種ほど
そのなかで日本に生息するのはわずか43種である

分類ごとに見ていくと、ナミヘビ科(19種)、コブラ科(12種)、クサリヘビ科(7種)に、メクラヘビ科(1種)、セダカヘビ科(1種)、タカチホヘビ科(3種)を加えた6科のヘビが生息する
世界には20科以上いるので科数においても日本は“ヘビ小国”だが、その一方でコブラ科に属するウミヘビ類を除けば、大半が日本の固有種である

日本に生息していなかった種が、海外から入ってきて定着した生物は「国外外来種」と呼ばれる
日本における国外外来種は、ユーラシア大陸や台湾が原産地で、沖縄に移入・定着したタイワンハブとタイワンスジオのみだ

日本は国土の割には多くの固有種が生息している
本土が温帯に、南西諸島が亜熱帯に属していること、日本列島が大陸から切り離されて島国となった後に、種の分化が進んだことが固有種の増加に寄与したと思われる
日本は数のうえでは“小国”ながら、独自の進化を遂げた“ヘビ独立国”なのである

現在は日本固有種として扱われているものの、かつては大陸産と同種とされていたヘビもいる
そのため古い図鑑ではヤマカガシやニホンマムシは日本の固有種とされていないことがある
また、対馬(長崎県)固有のツシママムシは、別種と判別されるまではニホンマムシにまとめられていた時代がある

このように、日本国内においても種数は増加傾向にある。遺伝的な研究が進めば、外見では区別できない違いから新種と認められるヘビも現われよう

ヘビとトカゲは何が違うのか?
ヘビという生き物を解説するにあたり何から始めればいいかは悩みどころだが、まずは「ヘビの定義」から説明することにしたい
そのためには、同じ爬虫類でヘビに近いとされるトカゲとの違いがわかりやすい

「トカゲには脚があって、ヘビにはない」──爬虫類に特別な思い入れがない方々(つまり大半の人々)は、そのように認識しているだろう
しかし脚の有無だけでは両者の違いを正確に説明しきれない
なぜなら「脚のないトカゲ」も存在するからだ
その名も「アシナシトカゲ」
四肢が存在しないが、有鱗目トカゲ亜目のアシナシトカゲ科に分類される、れっきとしたトカゲの一種なのである。

ヘビとトカゲの違いを説明するには、ヘビの「眼」「耳」「顎」の特徴について理解しておく必要がある

ヘビの眼には「瞼(まぶた)」がなく、目を閉じることができない。代わりに「アイキャップ」と呼ばれる眼球を保護する膜があり、眼球の乾燥も防ぐことができる
ヘビの抜け殻(脱皮後の皮膚)にはアイキャップが固い鱗としてもしっかり残る
ちなみにトカゲを含む爬虫類も脱皮するが、ヘビのように体全体が丸ごと脱げない
部位ごとに分割されるか、バラバラに脱げるかのどちらかである

ただし、瞼の有無もヘビとトカゲの違いを説明するには不十分だ
トカゲの一種である「ヤモリ下目(かもく)」はヘビ同様にアイキャップを持つからである

続いて「耳の違い」についてだが、ごく簡単に説明すれば「ヘビには耳がない」という特徴がある
耳たぶはもちろん、耳孔(耳の穴)もない
一方のトカゲは、基本的に「耳孔」を有する。つまり「耳があるのがトカゲ」で、「持たないのがヘビ」ということだ
しかしながら、こちらもヘビとトカゲを区分する特徴のひとつに過ぎない

ここまでに説明した「脚」「眼」「耳」の違いは、ヘビとトカゲの外見的な特徴なので、スネークセンターを訪れた方々にも解説する内容だが、分類するうえでの重要な違いは体の“内側”にある

 それはヘビが獲物を捕らえる際の最強の武器となる「顎」で、その骨格は非常に特徴的である。ヘビが自身より大きな獲物を丸呑みにする様子は、自然番組や生物の授業などで見たことがある方もいるだろうが、それを可能にするのが下顎の骨の構造である。

自然番組での丸呑みシーンでは「顎を外して獲物を呑み込む」と説明されがちだが、それは半分正しく、半分間違いである
ヘビ類は下顎の骨が左右で独立しているので、右と左を別々に動かすことすら可能なのだ(先端が軟組織の靱帯でつながっているので、可動域に制限はあるが)

下顎のように左右の骨の間が広がることはほとんどできないが、実は上顎も左右が分かれていて別々に動かすことができる
さらにトカゲの上下の顎骨が1ヶ所の関節でつながっているのに対し、ヘビの上顎は下顎と直接つながっておらず、頭骨の後端に鱗状骨(りんじょうこつ)、方骨(ほうこつ)がつながり、そこに下顎がつながっているため関節が多く、上下にもかなり広げることができる

このようにヘビとトカゲの区別は、一つの明確な外見的な違いでは説明できない
いくつかの要素を重ね合わせることで明確になる

なお、厳密には「ヘビには脚がない」というわけではない
機能としての脚を失っているものの、一部のヘビには構造上の脚は小さいながら存在している
前脚は外見で判別できないが、後脚の名残は「蹴爪(けづめ)」という器官として視認できる種も存在する
読者を混乱させるばかりの“蛇足”の情報ではあるのだが・・・


※ジャパン・スネークセンター『ヘビ学 毒・鱗・脱皮・動きの秘密』を元に一部抜粋して再構成

ジャパン・スネークセンター/一般財団法人「日本蛇族学術研究所」が運営するヘビ専門の動物園・研究施設として1965年に開園(群馬県太田市)
毒蛇咬傷の疫学調査や抗毒素(血清)の製造・研究を行なう一方、国内外の貴重なヘビを飼育・展示する
咬まれた際の対処を案内する「毒ヘビ110番」の活動のほか、ヘビの咬傷や逸走(脱走)の際に捜査機関に協力することもある
同センターによる話題の新刊『ヘビ学 毒・鱗・脱皮・動きの秘密』(小学館新書)は4人の研究員(堺淳、森口一、高木優、吉村憲)がそれぞれの得意分野を分担して執筆

(この記事は、マネーポストWEBの記事で作りました)

ヘビとトカゲの違いは「脚」「瞼」「耳」「顎」だ

なお、厳密には「ヘビには脚がない」というわけではない
機能としての脚を失っているものの、一部のヘビには構造上の脚は小さいながら存在している
前脚は外見で判別できないが、後脚の名残は「蹴爪(けづめ)」という器官として視認できる種も存在する
読者を混乱させるばかりの“蛇足”の情報ではあるのだが・・・



 

 


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