「火の技術」を手にした人類が大発展した深い理由 | メインウェーブ日記

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私たちの生活に必要不可欠な「火」
料理をする、暖を取る、明かりになる
はたまたキャンプファイヤーで火を囲み、団らんの時間を過ごすこともできます
一方で、火事や災害につながることもある火は、付き合い方を間違えると一大事にも発展しかねない、諸刃の剣と表現することができるでしょう
そんな私たちのくらしを支え、ときに危険な側面も有する「火」と人類史のクロスポイントについて、左巻健男氏による最新著書『化学で世界はすべて読み解ける』からご紹介します

■「大気」と「空気」はどう違う? 

ここからは、「火の技術と燃焼」についてお話しします

物が燃えるためには、火だけではなく、空気が必要です

では、「大気」と「空気」はどう違うのでしょうか? 

地球には大気圏があり、宇宙の隕石や太陽の有害な放射線から地球を守っています

大気は地上約500~1000キロメートルまで存在するといわれ、最下部の対流圏(地上から約8~18キロメートル)、その上の成層圏(地上約50キロメートル)、さらに上の中間圏、熱圏、外気圏があります

私たちにとって身近なのは、対流圏と成層圏です

対流圏と成層圏の大気を、私たちは「空気」と呼んでいます

空気は地上から高くなるにつれて密度が小さくなっていきます

密度は単位体積あたりの質量ですから、空気の密度が小さくなるということは、空気が薄くなるということです
地上から7キロメートルの高さで、空気の密度は地表付近の2分の1になってしまいます

私たちは大気圏の底、つまりは対流圏の底に暮らしています

ジェット機は、地上から約10キロメートル(1万メートル)付近の対流圏を飛んでいます

この高さでは、空気の密度が地上の33.7%まで小さくなりますが、ぎりぎりエンジンに必要な酸素が得られ、また空気が薄いのでその抵抗力が小さいのです

対流圏では、雲や雨などの対流現象が起こります
また、対流圏では高さ1キロメートルにつき、気温が約6.5℃ずつ低下しています

成層圏は、暖かく軽い空気が上、冷たく重い空気が下になるので、対流が起こりにくいです
そして成層圏には、太陽光中の有害な紫外線を99%吸収するオゾン層が存在します

■地表付近と富士山の頂上の「空気の成分比」は、同じ? 

面白いのは、空気が薄くなっても空気の成分組成(割合)が変わらないことです

地球上であれば、空気の成分比はほぼどこでも同じです

空気の成分は、乾燥空気(水蒸気が含まれていない空気)の体積比で窒素約78%、酸素約21%、この2つで全体の99%を占めます
ほかにアルゴン0.9%、二酸化炭素0.04%などが含まれます

しかし、実は細かく見ると、場所や季節により多少変化があります
例えば、場所では植物が生い茂る森や林で、季節では夏に、光合成が盛んになります
光合成が盛んだと、酸素の量が増え、二酸化炭素の量が減ります

乾燥空気で考えるのは、空気に水蒸気が含まれていて、その量には幅があり、一定していないからです

例えば20℃の空気1立方メートル中は最大17.3グラムまで、また30℃の空気1立方メートル中は最大30.4グラムまで、水蒸気を含むことができます

温度が高い空気のほうがたくさんの水蒸気を含むことができるのです

最大限まで水蒸気を含んだ空気は、相対湿度100%です
その半分なら相対湿度50%になります

空気は、生物の呼吸や植物の光合成に深く関係しています

また、物が燃える、金属がさびるなど、物質の変化にも関係しています

■空気の成分と、ほかの物質との反応の違い

空気の各成分は、性質に違いがあります

 【酸素】
ほかの物質と反応しやすい性質(酸化力)を持っています

生物の呼吸や物の燃焼に不可欠の気体です
水に少しは溶けるので、水中で魚などの生物が生活できます
酸素吸入などの医療用や鉄板の溶接用にも使われています

成層圏にあるオゾン層を構成する「オゾン」というガスは、酸素原子が3個結びついてできた分子です

酸素原子が2個結びついた酸素分子よりも酸化力が高いため、高濃度のオゾンは人や生物には有害です

 【窒素】

ほかの物質と反応しにくい性質を持っています

食品は酸素によって変質しやすいので、これを防ぐために、食品を入れた容器中に窒素を充塡することがありす

高温では酸素と結びついて一酸化窒素や二酸化窒素などの窒素酸化物をつくります
これらは人間に有害です

 【二酸化炭素】

光合成の原料です
植物は、光合成で太陽光のエネルギーを利用して、水と二酸化炭素からデンプンなどをつくって成長します

空気中の二酸化炭素は、生物の呼吸のほかに、火山の噴火、石油・石炭や天然ガス、木材などの燃焼によって空気中に放出されています

 【アルゴン】

ほかの物質と反応しない気体です
そのため、空気中にひっそりと存在し、1894年になってやっと発見されました

反応性に乏しいことから、ギリシア語の「なまけ者」にちなんで名づけられました

アルゴン、ネオン、ヘリウムは、「貴ガス」と呼ばれます
かつては「希ガス」と呼ばれていました

しかし、アルゴンのように大気中にたくさんあって「希なガス」とはいえないものもあります

またこれらのガスが、英語では「(別の元素と反応しない)高貴な元素」と呼ばれているので、それまでよく使われていた「希ガス」を「貴ガス」と書くようになりました

空気を約1億倍に拡大してみましょう
するとそこでは、直径1ルほどの分子が数種類、非常に速いスピードで荒れ狂うように運動し、衝突し合っています

20℃だと、酸素分子が秒速500メートル近くのスピードで動き回っています

気体は、分子が1個1個ばらばらになって飛び回っている状態です
私は、中学生に「気体の分子は、ばらばらびゅんびゅん」と教えていました

■人類だけがなぜ「火の技術」を持てたのか? 

人類史は、約700万年前にはじまったと考えられています

非常に大まかに次のように時代区分をすることができます

・約700万年前~ 初期猿人の時代

・約400万年前~ 猿人の時代

・約200万年前~ 原人(ホモ・エレクトス)の時代

アフリカで原人が誕生
脳が拡大し、知能が発達しはじめる
本格的に道具を作製するようになる
初めは死肉をあさっていたが、のちに積極的に狩りを行うようになった

・約60万年前~ 旧人の時代

アフリカで旧人が誕生
手・脳・道具の相互作用が進み、さらに脳が大きくなる
中・大型動物の狩猟を盛んに行うようになった

・約20万年前~ 新人の時代(現在まで)

アフリカでホモ・サピエンスが誕生

・約6万年前~

アフリカからホモ・サピエンス(一部、旧人との混血)が世界中に拡散した

・約1万年前~

農耕と牧畜を開始

ここで、初期猿人、猿人、原人、旧人、新人という用語を並べて見ると、例えば旧人から新人が進化してきたと思ってしまうかもしれませんが、それは違います

人類の進化の道筋は、直線的なものではないのです
それは、多くの種類に枝分かれし、それぞれが栄枯盛衰をくり返し、絶滅に至ってしまう種もあるという、とても複雑なものです

それでも、初期猿人、猿人、原人、旧人、新人という用語は、進化のグレード(等級、程度)を表すうえで便利なので、日本ではよく用いられます

人類は、森の中で生活していた猿の仲間を祖先とし、やがて地上で直立二足歩行をするようになったという大きな特徴があります

そのときに、2本の前足が自由になり、その前足で道具を使うようになりました

道具としては、木や石といった天然のものを材料とし、道具をつくるための道具もつくりました

チンパンジーのように道具を使う動物もいますが、「道具をつくるための道具をつくる」動物というのはいません

■人類が火を使うようになった歴史

さらに人類がほかの動物と大きく違う点は、火を使えるようになった点です

いつ頃から、また、どうやって火を使えるようになったのかは、はっきりとはわかっていません

火山の噴火あるいは落雷によって起きる森林火災などから火種を取り、火を活用するようになったのかもしれません

考古学上、人類が火を使用した可能性がある遺跡はいくつか見つかっています

例えば150万~100万年前のものでは、焼けた骨が見つかった南アフリカのスワルトクランス洞窟、また焚き火と関連して高温に熱せられた石が見つかったケニアのチェソワンジャ遺跡などがあります

これらは、原人の時代のもので、おそらく彼らは、本格的な道具づくりと並行して、火も使うようになっていたと考えられます

火を使用した明確な証拠がたくさん発見されているのは、旧人のネアンデルタール人の遺跡です

ただし、ネアンデルタール人が自然の火から火種を持ってきたのか、火おこしの技術を持っていたのか、あるいは持っていたとしたら、それはどのような方法だったのかといったことは、未だ明らかになっていません

火が日常的に広い範囲で使用されていたことを示す証拠は、12万5000年前のアフリカの遺跡から発見されています
この頃人類は、火おこしの技術を持っていたと考えられます

普通の動物は火を恐れますが、人は野火などの草や木が燃えているところに接近します
恐れを知らない好奇心のかたまりのような子どもが火に近づき、火遊びをするようになった可能性もあります

火遊びというのは、とてもインパクトのある言葉ですが、遊びに火を使う段階から、やがていつも火を使うという段階へ移行したのでしょう

最初、火種は天然の燃えているものでしたが、その後、人類は天然の火種がなくても火をおこせるようになったと考えられます
それが発火技術です

火をおこしやすい木と木の摩擦法が発火技術の中心だったと考えられますが、木は遺物として残りにくいため、発掘数が多いわけではありません

進化の初期段階で火をコントロールできたこと
これは人類の進化にとって非常に重要なことでした

火をコントロールする技術を持ったことで、人類は灯り、暖房、調理に火を使うようになりました。

人類のほかに、火を使って料理している動物はいませんよね? 

物が燃えること、すなわち燃焼は、人類が知った一番古く、また一番重要な化学変化なのです

猛獣から自分の身を守るためにも、火は使われました
さらに火を利用して土器や陶磁器をつくり、砂鉄や鉄鉱石から鉄をつくりました
これらはすべて、火の技術の延長線上の出来事です

■人類の生活に決定的な変化をもたらした「火」

火の技術を手に入れたことで起きたことをまとめておきましょう

① 食生活の変化

火で焼くことにより、そのままでは食べることができなかった魚介類、草木の根、塊茎などが食料に変化しました
また、火で焼くことにより食料の保存ができるようになり、毎日、食料を取りに行かなくてもよくなりました

② 居住地の拡大

食物が手に入りやすくなり、暖かさも手に入れた人類は、河川や海岸に沿って居住地を拡大していきました

③ 道具の発明

熱を有効利用するために、さまざまな道具がつくられました

初めにつくられたのは「かまど」です
最初は、石でつくられたかまどでした
そこから地面を掘ったかまど、粘土でつくられたかまどへと変化し、やがて高温を出せる炉がつくられました

また、空気を送るためのうちわのようなものが「ふいご」へ進化し、さらに高温の炎を手に入れると、その炎を使って鉱石から金属を手に入れられるようになりました

④ 炎を使うための道具の発明

炎を使って、物を煮る器がつくられました
初めは、熱に強い土器がつくられ、やがてうわぐすりをかけた陶器へと進化していきました

火を使う以前は、自然の産物を道具にしていました

例えば、動物の骨をこん棒にしたり、小石を削って刃物にしたりして使っていたのです
これらは形が変化しても骨は骨のまま、石は石のままで質的な変化はありません

ところが、火を利用することによって、自然界の材料を使いながら、質的に変化したものや、天然のままではほとんど存在しない物質をつくり出し、手に入れるようになりました

この質的な変化は化学変化であり、人類は火を使って化学変化を起こすことができるようになったともいえます

火は人類の生活に、決定的な変化をもたらしたのです

(この記事は、東洋経済オンラインの記事で作りました)

火の技術を使える・使うようになって人間は大きく進化しました

人間以外の動物は火を恐れますが、人類は火を使えるように進化します

これが化学や科学の進化・発展につながりました

 


人間が火を使えるようになり、化学は大きく進歩しました
火の技術の獲得は人類が地球に君臨した一因です