あんたは払うよ、権藤さん。の真意 -61ページ目

あんたは払うよ、権藤さん。の真意

ご来場いただきまして誠にありがとうございます。「その1」などと付してある記事は続き物になっていますので、数字の若い順にご一読いただけると幸いです、としていたのですが、最近、数字入れ忘れてました。ごめんなさい。では、そろそろ開演です。Oh, yeah! Play it loud!

「あ、いけない!もう塾の終わる時間だ!」

少年は公園の時計をみて小さく叫んだ。

ん!?塾の帰りじゃなかったの?

「ごめんなさい。ウソつきました。電車の時間の都合で早めに着くから、本当は、塾の前に来てたんです。」

何故嘘をついたんだね?

「これから塾です、って言ったら、権藤さん、『塾行け』っていうでしょ?」

うむ。実に論理的だ。君は数学できるよ。


「帰りの電車の時間は?」私は少年に聞いた。

「帰りはお母さんがクルマで迎えに来てくれるんだ。ほら、そこの大通りに停めて待ってる。」

え!?...あそこにいるの...?

「お母さんと会う?」

...いや、やめとくよ...

君に「お母さん、変わった?」とか聞くわけにいかないし、そもそも聞いたってわかる筈ないもんな。

それに、逢うなら君のいないところだろ、普通...

「塾を休んだのを俺のせいにされたらたまらないからね」そういう理由にしておこう...

「わかった。秘密にしておく!」


「あとさ、僕、わかったことがあったよ!」

何が?

「権藤さんのブログって、テーマはいろいろあるけど、本当は全部ロックン・ロールなんでしょ!?」

はは。嬉しいこと言ってくれるじゃないか...そのセリフ、どこかで使わせてもらうよ。


少年はベンチから立ち上がり、私を見てぺこりと頭を下げて言った。

「コーラ、ご馳走さまでした。次は僕が払うからね!」

「気にするなよ。そういう訳にはいかない。俺が払うよ...」


私がそう言いかけたとき、少年の視線が私の背後に移った。

すると、その先から鈴の音のような声が鳴った。


「そうね、あなたは払うわよ、権藤さん...」


...

なんてことだ!?

私は振り返ってしまった...


<終わり>

「でもさ、お父さんのことは別にして、勉強、嫌だよね。権藤さんは算数とか好きだった?」

いや、好きじゃなかった。苦手な方だったね。

「計算なんか、電卓使えばできるじゃない?中学になったら、『数学』になるんだよ!ますます嫌な感じだな...」


「いや、君は数学が得意になるような気がするけどね」と私は少年に言った。

「なんで?計算なんて嫌いだよ」

ふむ。君は数学とは単なる計算だと思っているんだね?

「違うの?算数がもっと難しくなるんでしょ?

違う、な。

数学は「論理」だ、と思う。

「ロンリ?」

そう。

数学とは、「これをこうしたらどうなるか」「これをこうするためにはどうしたらいいか」ということを考えるものだ、と思う。


「何故、僕が得意になると思うの?」

それはだね...

最初に、私は君に、「私の本当の名前を知っているにもかかわらず、何故君は私に『権藤さん?』と話しかけたのか」と質問しただろう?

「うん」

その質問に対する君の回答は非常に論理的だった。感心したよ。

だから、私は、君は数学ができそうだ、と思ったのだ。

「数学ってそういうことするの?」

そうだ、と思う。残念ながら、学校の先生は私にそういうことを教えてくれなかったが...

「ふ~ん...」


<続く>

「ふ~ん。じゃあ、親としてはお父さんが間違ってることもある、ってこと?」と少年は言った。


まあね。でも、困ってしまうのは、間違っているか否かを当事者が判定することはとても難しい、ということなんだな。


「勉強しろ!って言うのは間違ってる?」


さあね。君だって、勉強しないよりはした方がいい、とは思うだろ?


「うん...」


とにかく、親が言うことだからって、全て正しいことだと思ってまともに受け止める必要はない、ってことだ。





「でもさ、嫌なもんは嫌なんだ。僕はどうしたらいい?」


そうだね...まあ、躱(かわ)す、んだな..


どんな強烈なパンチだって、当たらなければどうってことないだろ?


「かわす?逃げるってこと?」


いや、違う。


逃げるってのは、ただ闇雲に相手から離れる、距離を取るってことだ。リングから出ちゃうとかさ。


でも、今、君はそのリングから出ることはできないだろ?義務教育だもん。


だから、かわすんだよ。相手との角度を変えたり、しゃがんだり、のけぞったりして。




「え~?具体的にはどうすればいいの?」


例えばさ、「勉強しろ!」って言われたら、君が「そうだよね!そうだよね!勉強しなきゃな~?」とかって言ってみるってのはどうだい?


「...どうなるだろう?効果あるかな?」


そんなことわからないよ。


でもさ、やるか、やらないか悩むんだったら、やってみる方がいいんじゃないか...




<続く>


「錯覚?何を錯覚してるの?」


錯覚、妄想、勘違い、間違い、何でもいい。





「君は長男?お姉さんもいない?何歳だい?」私は聞いた。


「うん。いない。もうすぐ12歳」


なるほど、君は人間を12年やっているわけだ。


すると、君のお父さんが親をやっている時間も12年ということになる。


「?」少年は不思議そうな顔をした。





わからないかね?


君が人間をやっている時間とお父さんが親をやっている時間は、同じ12年だ、ということだよ。


つまり、親と子という立場で考えれば、お父さんと君は同い年なんだ。


お父さんが40だろうが50だろうが100歳だろうが、親をやっている年齢は君と同じ年齢なんだ。





君は12歳だから、わからないことだって、間違えることだっていっぱいあるだろう?


でも、お父さんも、親としては同じなんだ。12歳なんだから。


だから、親として、わからないことや間違えることがあるのも当たり前だろう?





「じゃあ、僕の妹は9歳なんだけど、お父さんは3歳分、妹より間違えないってこと?」


年数がそのまま当てはまるわけじゃない。


「何で?3年長く、親をやってるんだよ?」


君と妹は別の人間だからだ。


君にしたことが、そのまま妹に当てはまるとは限らないだろう?





「そっか...でも、大人なんだから、僕より沢山のことを知ってるでしょ?」


そりゃそうだ。でも、それはさ、君の知らない漢字が読めるとか、ここから東京駅まではどう行った方がいいとか、車の運転ができるとか、その程度のことだよ。


何万年生きていたとしても、親としての経験は君の年齢分しかないのさ。





<続く>

「そっか...権藤さんの子供は勉強してるの?」

うん、まあ、してるな。

本当のことを言うと、自分が子供だった時と比較すると、自分の子供とは思えぬ。

私の母親でさえ、「とてもお前の子供とは思えないねぇ~」などと言っている。

もっとも私の配偶者は不満らしく、「自分はもっと勉強してた」と言っているが...


「じゃあ、もしさ、権藤さんの子供が全く勉強しなかったら?それでも勉強しろって言わない?」

その質問に対する答は、「わからない」、だな。

「何でわからないの?自分の子供の話だよ?」

わからない、な。その時になってみなければ。

「えー、それはずるいんじゃない?勉強してるから勉強しろって言う必要ないだけで、勉強しなかったら、わからない、なんて~」


ずるくない。

まず、私は教育者でも教育評論家でもない。だから、わからないことは、わからない、でいい。


次に、自分の子供に起こりうる問題に対して、全て答を持っている親などいる筈がない。

勉強というのはひとつの事象だ。

子供が遠視だったらどうするのか?

矯正用のメガネをする?

子供がメガネなどしそうもない暴れん坊だったら、どうやってメガネをするようにすればいいのか?

子供がサッカーやりたい、といったら、サッカーやるときでも大丈夫なメガネなどあるのか?

いいかね?世の中には、知っていることより知らないことの方が遙かに多いんだぜ...


そして、君は、親というものに対して、大きな錯覚をしている。

「錯覚?何が?」


<続く>