「あ、いけない!もう塾の終わる時間だ!」
少年は公園の時計をみて小さく叫んだ。
ん!?塾の帰りじゃなかったの?
「ごめんなさい。ウソつきました。電車の時間の都合で早めに着くから、本当は、塾の前に来てたんです。」
何故嘘をついたんだね?
「これから塾です、って言ったら、権藤さん、『塾行け』っていうでしょ?」
うむ。実に論理的だ。君は数学できるよ。
「帰りの電車の時間は?」私は少年に聞いた。
「帰りはお母さんがクルマで迎えに来てくれるんだ。ほら、そこの大通りに停めて待ってる。」
え!?...あそこにいるの...?
「お母さんと会う?」
...いや、やめとくよ...
君に「お母さん、変わった?」とか聞くわけにいかないし、そもそも聞いたってわかる筈ないもんな。
それに、逢うなら君のいないところだろ、普通...
「塾を休んだのを俺のせいにされたらたまらないからね」そういう理由にしておこう...
「わかった。秘密にしておく!」
「あとさ、僕、わかったことがあったよ!」
何が?
「権藤さんのブログって、テーマはいろいろあるけど、本当は全部ロックン・ロールなんでしょ!?」
はは。嬉しいこと言ってくれるじゃないか...そのセリフ、どこかで使わせてもらうよ。
少年はベンチから立ち上がり、私を見てぺこりと頭を下げて言った。
「コーラ、ご馳走さまでした。次は僕が払うからね!」
「気にするなよ。そういう訳にはいかない。俺が払うよ...」
私がそう言いかけたとき、少年の視線が私の背後に移った。
すると、その先から鈴の音のような声が鳴った。
「そうね、あなたは払うわよ、権藤さん...」
...
なんてことだ!?
私は振り返ってしまった...
<終わり>