「錯覚?何を錯覚してるの?」
錯覚、妄想、勘違い、間違い、何でもいい。
「君は長男?お姉さんもいない?何歳だい?」私は聞いた。
「うん。いない。もうすぐ12歳」
なるほど、君は人間を12年やっているわけだ。
すると、君のお父さんが親をやっている時間も12年ということになる。
「?」少年は不思議そうな顔をした。
わからないかね?
君が人間をやっている時間とお父さんが親をやっている時間は、同じ12年だ、ということだよ。
つまり、親と子という立場で考えれば、お父さんと君は同い年なんだ。
お父さんが40だろうが50だろうが100歳だろうが、親をやっている年齢は君と同じ年齢なんだ。
君は12歳だから、わからないことだって、間違えることだっていっぱいあるだろう?
でも、お父さんも、親としては同じなんだ。12歳なんだから。
だから、親として、わからないことや間違えることがあるのも当たり前だろう?
「じゃあ、僕の妹は9歳なんだけど、お父さんは3歳分、妹より間違えないってこと?」
年数がそのまま当てはまるわけじゃない。
「何で?3年長く、親をやってるんだよ?」
君と妹は別の人間だからだ。
君にしたことが、そのまま妹に当てはまるとは限らないだろう?
「そっか...でも、大人なんだから、僕より沢山のことを知ってるでしょ?」
そりゃそうだ。でも、それはさ、君の知らない漢字が読めるとか、ここから東京駅まではどう行った方がいいとか、車の運転ができるとか、その程度のことだよ。
何万年生きていたとしても、親としての経験は君の年齢分しかないのさ。
<続く>