仕事を終え、家についたヨシオは、バルコニーに洗濯物が干してあることに気づいた。
ヨシオは、「気がつくとやってしまう」性質であった。
流しに皿があると「気がつくと」洗うし、休日に洗濯物がカゴの中にあると「気がつくと」洗濯する。「気がつくと」というのは、いつも「気がつく」とは限らないからだ。また、「やってしまう」とは、とにかく、何かやることがあるから単に「やる」というだけである。
夜の9時だ。もう乾いているかもしれない。乾いてたら家の中に取り込んでおくか。
ヨシオがバルコニーに出て、物干し竿の子供のシャツに手を伸ばした刹那、
「何する気なの!?」妻の怒号が響いた。
は?何するって、乾いてたら取り込もうとしたに決まっているが...
「さっき干したばかりなの!」
干した時刻は俺の知るところじゃない。今帰って来たばかりなんだから。
「濡れてるに決まってるじゃない!」
触って濡れているのがわかれば、そりゃあ取り込まないよ...
そもそも何故、洗濯物に手を伸ばしただけで怒鳴られなければならないのか?
もう止めよう、とヨシオは思った。
しかし、ヨシオの性質は変わらなかった。
やはり「気がつくとやってしまう」のである。
いや、変わったことはあった。
「やってしまう」前に、身体が小刻みに震える様になったのである。
この休日はどのように過ごすのであろうか...