本当の美と豊かさって…?〜111年目の中原淳一展 | 春はあけぼの 女は美学

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50過ぎた女が感じたこと、考えたことを書いてます

こんにちは。伏見美帆子です。



アラカンオンナが、
感じるままに綴るブログです。

 

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本当の美しさとは
豊かさとは
何なのか。
 
このキャッチフレーズで
横浜そごう美術館で開催された、
 
111年目の中原淳一展。

 

 

 

1月10日までの開催なのを思い出し、

急遽前日にチケットを取り

急いで向かった。

 

氏の作品は

以前、弥生美術館でも拝見したことがあったが

氏の作品だけを目にするのは

今回が初めてである。

 

 

少女向け雑誌を刊行し、

多くのデザイナーや出版社に影響を与え、

氏が描く目の大きな少女が

その後の漫画家にも影響を与えた人。

 

そして何より、

 

女性の美を追求していった人…

 

 

氏は、戦前から

少女雑誌「少女の友」で専属画家として

挿絵や表紙を描き、

付録の企画やファッションページの連載などを手掛けていた。

 

なんと、当時の少女の服装は、

大人の服を小さくしたものが多かったとのこと。

女学生に相応しい、

少女らしさを兼ね備えたファッションの紹介は

その服だけにとどまらず、

髪型やリボンの使い方にまで及ぶ。

 

さらに、

氏の描く少女たちは

竹久夢二の画風を継承しつつ、

もっと線が強く、目も大きく手足が長い。

その絵に憧れた当時の少女たちに

アイドルのように受け入れられた。

鑑賞ガイドからお借りしました。

 

しかし、戦中に、氏の描く少女が

「華美で不健全」とされ、出版社を去る。

 

その一方で、

氏がデザインした商品を扱う店

「ヒマワリ」を開店。

そこで氏のグッズを販売し、

人気を博したとのこと。

いわゆる、

キャラクターグッズの先駆けである。

 

 

そして戦後、

まだ混乱期であった昭和21年に、

婦人雑誌「それいゆ」を創刊。

鑑賞ガイドからお借りしました。

 

 

続いて、

昭和22年に少女雑誌「ひまわり」を創刊。

鑑賞ガイドからお借りしました。

 

 

よき女性の人生は

よき少女時代を送った人に

与えられるものではないか

 

と、

ファッションだけではなく、

小説や物語、そして暮らしのしつらえまでが

掲載されている。

 

戦後の混乱期に

少女が自分の部屋を持つことなど

一般庶民からすると、

現実的ではないこと。

でも、お気に入りのものを置き、

少しでも快適な暮らしができるように

「工夫」することで、

夢や希望を与えるものとなっていった。

 

その語りかけは優しく、言葉遣いも上品なもの。

 

あなたはが自分の部屋をお待ちですか。住宅の問題はまだまだなかなか思う様にはならず、何人もの家族が一室で住んでいたり、

お家がなくて、疎開先から帰って来られない人もあるのですから、

あなたが、ご自分の部屋を持つ事はなかなか出来ない場合も多い事でしょうけれど、

今月はあなたの為に、3畳の部屋が与えられたと仮定して、

どんな風にこの部屋をつかったらよいかを考えてみましょう。

あなたの小さな部屋にお客様をまねく〜1949年「ひまわり」より

 

その後、

「ひまわり」が廃刊となり、

それに変わる雑誌として、

「ジュニアソレイユ」が創刊。

鑑賞ガイドからお借りしました。

 

 

パリから帰ってきた氏の描く少女は、

作風も少しずつ異なり、

有名な女優やモデル、デザイナーなどを

モチーフとしたものが多くなってくる。

鑑賞ガイドからお借りしました。

 

 

社会でも、戦後の混乱期から

その後の高度成長期の間、

様々な価値観が揺れ動いてきた。

 

 

しかし、

氏の根底に流れているものは

全く変わらない。

 

 

こんな時代を乗り切って美しく愉しくというのは、

結局知性を高め、工夫する精神と美しさをキャッチする目を肥やすことであろう

 

そんな氏の言葉から思いを馳せる。

 

オリジナルの洋服のデザインの記事だけではなく

髪型、インテリア、手芸など、

「衣食住」を整え、

流行を追いかけるだけでなく、

知性によって自分自身をコントロールしていく。

その為に、

文学や音楽、アートなどの記事により

「目を肥や」していく。

 

 

本当の美しさとは

豊かさとは…

 

 

氏は唱える。

 

あなたの家に美しいカーテンが入れて、清潔なテーブルクロスが部屋を彩っているかどうか、

そんな部屋に住んでいるかどうかで、

あなたには目に見えない雰囲気が身について、

美しい印象を人に与えるのだということを知っていてください。

 

 

 

華美になるだけでも、

贅沢品をまとうだけでもない、

調和の取れた自分が心地よいという有り様。

自分らしくあるという有り様。

 

 

そして、

贅沢をするわけでもなく、

毎日が爽やかな愉しいものとなるよう、

生活の中にちょっとした工夫を取り入れ

知性によってコントロールしていく。

 

それが、

氏の目指した

美しさと豊かさなのではないだろうか。

 

 

展覧会を観に来ている女性の多くが

60代から80代くらいの女性の方々だった。

警備員さんに注意されても

目を輝かせておしゃべりに夢中な方々が多かった。

 

きっと、

氏の雑誌を見ながら、

若き少女時代を送った方々だろう。

 

どれほど

あの当時の少女たちに夢と希望を与えた事だろう。

 

そしてそれは今でも。

 

假屋崎省吾氏や

コシノジュンコ氏、

美輪明宏氏など

様々な方々にも愛されている。

 

 

男性から見た女性の美学を謳い続けた人…

 

 

中原淳一展は

横浜そごう美術館にて、1月10日まで。

ご興味ある方はお急ぎくださいませ。

 

 

 

 

あなたの美意識に

何かしら訴えかけるものがあるかと…

初めて図録買っちゃいました。

家でもずっと眺めていたいから…