「ヴァーテインの奴、本気や…この辺りで、勢力版図確立して、富士の、樹海目指す気やで……あの力場やったら、パワーゲート置ける、ゆーとったや、さかい、な……」
最上はもう一度彼女の身体を見回した。セーラー服の傷み様から、そうとう打たれていると思われた。
「済まん。……葉月ちゃん、連れて行かれてもうた…ウチ守れんかったんや…最初止めたんやけど…もうあかん…。仲間割れや」
「何!? いったい何処へ!?」
暫く下を向いて黙っていた畠山に、最上は懇願するように何度も尋ねた。彼女は「たぶん…」と口を噤んでから
「…たぶん駐車場やろ。他やったらウチにも分からへん。…命令受けた、テイラス等の、仕業や…。堪忍な、ウチがあんさんの話、したからやろ…せやからあいつ等、人質取ろう思いついたんや…一人ちゃうであんさん…気ぃ付けぇや……」
それだけ言うと畠山は橋の手すりにもたれつつも、崩れるようにその場に倒れていく。最上は掬(すく)い上げるように両腕を差し出しながら、彼女の身体を支えてその場に腰を下ろす。
「どうした? 最上」御柳の声だ。
丁度そこへ御柳と岩見が現れ、二人を上から覗き込んだ。
「彼女を医務室へ!」最上はそれだけ言うと、駅の方へ向かって全力で走り出した。
「お、おい! お前学校は!!?」
岩見の言葉に返事は無い。仕方なく他校の少女を助け起こす。「おい君、大丈夫か?」
「あんさんの友達か…エヘヘヘ…おおきに…」
畠山はそう言って岩見の背中にしがみ付きながら「あー、…もう通われへんな……退学や…」と呟く。
御柳が最上のバッグを手に取って、先に学校へ走った。