陰 湿 | ナベちゃんの徒然草

ナベちゃんの徒然草

還暦を過ぎ、新たな人生を模索中・・・。

今でも根絶できず、自殺者が絶えない学校のいじめ問題。

 

中でも、今からちょうど30年前の今日・1993(平成5)年1月13日に起こった出来事は、その特異性・陰湿さが際立っていました。

 

同日夕方、山形県新庄市の中学校体育館で、13歳の男子生徒が巻かれて縦置きにされた体育用マットの中に、頭から突き刺さった状態で窒息死しているのが発見されたのです。 俗に

 

 山形マット死事件

 

と呼ばれたこの事件は、当初14歳の上級生3人と13歳の同級生4人によるイジメ殺人事件として扱われ、警察に連行された彼らは自供をし犯行を認めていました。

     
            
被害者の中学生

 

しかしそれに気を緩めた地元警察が証拠固めを怠ったため、東京から乗り込んできた所謂人権派弁護士らに捜査の不備を突かれ、結果少年らは一転して犯行を否認。

 

その後の裁判は、異例の展開を辿ります。

 

山形家裁は上級生3人に実質無罪判決。 

また同級生3人には2人を少年院送致、1人を教護院送致と決定。 

 

同級生らは高裁・最高裁に特別抗告をするも棄却。

 

翌1994年、7人全員に刑事裁判における有罪に当たる保護処分が決定。


そして1995年に被害生徒の両親が少年7人と新庄市を相手取り1億9,400万円の損害賠償提訴。

 

2002年、山形地裁が事件性なしとして原告の訴えを棄却。


しかし仙台高裁は2004年に一審判決を破棄し、刑事裁判で無罪となった上級生を含めた少年7人に5,760万円の支払いを命じ、最高裁もこれを支持し判決は確定しました。

 

加害者少年らの冤罪を訴える弁護士などがいますが、自ら巻かれたマットに体を突っ込み逆さまになって窒息死する人間がいるかどうかを考えれば、常識的に答えが出ると私は思うのですが。

 

加害者7人は、現在40歳代半ば。 
結婚して父親になっている者もいるでしょう。

その子は成長して、親同様いじめっ子になっているのか?

 

それとも因果応報・・・もし自分の子がいじめられる立場になったら、彼らはどう対処するのでしょうネ。

 
         

 

この事件に関して私が個人的にやりきれないのは、その背景の陰湿さです。

 

被害者一家は東京出身で、事件の16年ほど前に新庄市に越してきた幼稚園を経営する裕福な家庭で、標準語を話していました。

 

そのため地元では新参者・他所者という扱いをされており、被害者とその兄共々いじめられていたという、所謂村八分状態だったとか。

 

地方から東京の大学に進学した若者が、その方言をバカにされて自殺したという実話がありますが、まさにその逆パターン。

 

事件後、被害者宅の塀に 「殺してやる」 という落書きがされたり、「あそこの育て方なら当然」 などという心無い証言をする者がいたり、被害者の妹は数人に取り囲まれ「兄ちゃん殺されて嬉しいか?」 と言われたとか。

 

あたかも映画 『ミシシッピー・バーニング』 の如し・・・日本のムラ社会における群集心理・閉鎖性が生んだ悲劇と言えましょうか。

 

私自身も、身につまされる経験があります。

 

この事件が起きる数年前、東北の某地方都市(といっても県庁所在地)に転勤してすぐ、ある自営業者宅に保険の説明に伺った時のこと。

 

質問に20分近く一生懸命答えた挙句、そこの奥さんが一言。

 

「まんず、東京モンの言うことサ、信用できネ。」

 

そういって店の奥に引っ込む彼女の背中を、私は呆然と見送るしかありませんでした。

 

(ああ、これが地方の現実なんだ。) 

 

初めての地方転勤でいきなり強烈な一撃を食らった私は、以後地元の言葉を憶えて溶け込もうと努力するようになりました。

 

今でもテレビ等でその地方の方言を耳にすると、懐かしさと共にあの奥さんの一言が思い出されます。

 

人間の奥底に潜むコンプレックスやムラ社会の差別意識が無くならない限り、いじめは根絶できない・・・そんな気がします。


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