私が子供の頃、そう言われて保護者からも尊敬されていた教師もいましたが・・・今や〝聖職〟という言葉は、殆ど死語になった感があります。
今日は、私が尊敬して止まないその見本たる教育者、
森 信 三 先 生
の命日・没後30周年にあたります。
森先生は1896(明治29)年、愛知県生まれ。
祖父は第1回国会議員という名家でしたが、父親が全財産を失ったため2歳の時に貧農の養子に出され、以来森姓を名乗ります。
尋常小学校高等科では全生徒1,500名の中でトップの成績をあげながら貧しさのために中学に進学できず、母校の用務員として働くことに。
周囲の援助もあり、広島高等師範学校から-京都帝国大学哲学科に進み、首席で卒業した後は同大大学院に籍を置く傍ら、天王寺師範学校(現・大阪教育大)の講師も務めました。
戦前に満州の建国大学に赴任し、敗戦により生死の境をさまよう経験をしながらも、無事帰国。
1953年、神戸大学教育学部教授に就任。
その後1965年には神戸海星女子学院大学教授となり、退官後は数多くの講演をこなし、1992(平成4)年11月21日、96歳で天に召されるまで多数の著書を残されました。
明晰な頭脳だけでなく、ご自身の過酷な人生経験の中から紡ぎ出される教えは、〝全一学〟という宇宙的な大きい発想でありますが、それを具現化する教えの言葉は基本的なことながら、大変な重みを持って聞く者の胸に響いてきます。
たとえば、先生はこう仰います。
「ハイという返事」・「朝の挨拶」・「履物を揃え椅子を入れる」・・・この3つの根本的な躾を遅くとも小学校低学年までにやれば、他の躾は出来るようになる。
そんなの、当たり前だろう・・・そう私なんかは思ってしまうのですが、では果たしてこの3つをキチンとできる子供は現在どれくらいいるのでしょうか?
鉄は熱いうちに打たなければいけない、ってことなんでしょうネ。
そんな先生の教えが凝縮された著書を一冊ご紹介致します。
『修身教授録』 (致知出版社・刊)
同書は、森先生が大阪天王寺師範学校でなされた2年間の講義内容をまとめたもの・・・即ち、教師の卵たちに対する教えの集大成。
先生が40歳過ぎたばかりの頃の授業であり、時に性欲についても語っておられるなど内容は多岐にわたっていますが、「人生2度なし」 という先生の教えの根幹に触れることができます。
教師を目指す方はもちろん、親御さんにも是非ご一読いただきたい〝時代を超越した良書〟だと思います。
現在の教育現場では、小学生の生徒から呼び捨てや渾名で呼ばれ、「生徒達とコミュニケーションが取れた」 と喜んでいる教師が多数いるとか。
森先生は、この実情を草葉の陰からどういう思いでご覧になっていることやら。😨