模 倣 | ナベちゃんの徒然草

ナベちゃんの徒然草

還暦を過ぎ、新たな人生を模索中・・・。

今からちょうど110年前の今日・1912(大正元)年10月20日、警視庁が

 

 『ジゴマ』

という映画作品を上映禁止にしました。

その理由は、同作が思想的だとか政府を批判しているから・・・ではなく、主役が犯罪者だったから。


1909年にフランスの新聞に連載が始まった同名の連載小説は、パリを舞台に怪人ジゴマが殺人・強盗を繰り返す内容で、28巻ものシリーズ本が出版される程の人気を博し、日本でも翻訳本が出されました。

そして1911年にフランスで映画化され、同年11月に日本で 『探偵奇譚ジゴマ』 の名で公開されると劇場には舞台にまで上がる程の観衆が押し寄せるという、洋画としては空前の大ヒットを記録しました。


しかしこの映画は、社会的に悪影響を及ぼします。

 

ジゴマの手口を真似た犯罪が起きるようになり、また子供たちの間にもジゴマごっこ(!)なる遊びが流行ったそうな。😨

この状況を危惧した警視庁が 「犯罪を助長し、公安風俗を害する」 として、この作品及び類似映画を上映禁止処分にしたのです。

これを機にジゴマ・ブームは急激に萎(しぼ)んでしまったそうですが、その後警察による映画等の検閲が強化されたといいますから、ある意味歴史的作品ではありました。

 

上映禁止とまではなりませんでしたが、その犯行手口などから模倣犯罪を誘発したり、またそれを防ぐ意味合いでテレビ放映が中止になった作品は過去に何本かありました。

私が記憶しているところでは、まず黒澤明監督・三船敏郎さんの黄金コンビによる

 

 『天国と地獄』

   

 

1963(昭和38)年に公開されたこの映画は、会社役員が自分の息子と間違えて彼の運転手の息子を誘拐した犯人から身代金を要求される、という特異な設定。

当時最高速だった東海道線の特急〝こだま〟の車両を使って撮影され、ロケに邪魔だと言って黒澤監督が沿線の建物の2階部分を取り壊させたという逸話も残る、複数の映画賞を受賞した名作です。

この作品の中での現金受け渡しの方法が実に意表を突くもので、封切された年に起きた草加次郎事件や、1984年に起きたあのグリコ・森永事件、更には1993年の甲府信金OL誘拐殺人事件でもその手口が模倣されました。

 

そしてもう1本は、1975(昭和50)年に公開された

 『新幹線大爆破』

 

   

 

東海道新幹線〝ひかり〟に爆弾を仕掛け、乗客全員を人質にして身代金を手にしようという犯人と警察・国鉄側との駆け引きを描いた作品。

時速80km以下になると爆発する設定、また別の列車を並行して走らせて通路を渡し乗客を移動させる・・・どこかで観た記憶ありませんか?

そう、キアヌ・リーブス主演の 『スピード』 (1994年公開)そのもの。
この日本映画をパクッているとしか私には思えません。

(※もっとも同作の脚本家は、映画 『暴走機関車』(1985年公開)の原案となった、黒澤明監督が執筆したオリジナル脚本からヒントを得たと言っていますが・・・。)

その他にも 『カサンドラ・クロス』 などストーリーが似た作品が何本か出されるほどの名作であり、高倉健さんや千葉真一さん、宇津井健さんら豪華俳優陣が出演しているにもかかわらず、何故か公開直後は全くヒットせず。

しかし海外で公開されるや特にフランスで大ヒットし、その評判が逆輸入されたという、まるで北野映画のような特異なプロセスを辿りました。

以前この作品がテレビの映画劇場で放映される予定で楽しみにしていたのに、たまたま脱線事故が起きた直後で別作品に差し替えられ、ガッカリしたことを憶えています。

また放映禁止になったわけではありませんが、社会的に大きな影響を及ぼしたTVドラマ作品としては、アメリカで15年も続いた人気シリーズ、


 『CSI:科学捜査班』

が挙げられます。

   

私も大好きで海外ドラマ専門チャンネルで何度も観ていますが、このシリーズが指紋や血液だけでなくDNA鑑定が重要な証拠になることを世に知らしめ、最先端の捜査手法を紹介したことで逆に犯罪者がその証拠隠滅を図るようになったとか。

このシリーズが人気を博したことで、それまで警察機構になかったCSIが組織されたそうですから、驚きます。


いずれも是非皆さんに観ていただきたい作品ですが、良い子(大人?)は絶対に手口を真似たりしないように!


         人気ブログランキング