ガチンコ  | ナベちゃんの徒然草

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還暦を過ぎ、新たな人生を模索中・・・。

以前、プロボクシング元世界ヘビー級チャンピオンのモハメド・アリについて書きました。(↓)

この中でチラッと触れた〝異種格闘技〟を代表する試合、
 

 アントニオ猪木 vs. モハメド・アリ戦


が日本武道館で行われたのが、今から半世紀近く前の今日・1976(昭和51)年6月26日のことでした。

当時WBA・WBCの統一世界チャンピオンとして君臨していたアリは、ファイトも口も絶好調。

前年の1975年3月、日本レスリング協会々長・八田一朗氏が出席していたパーティーの席上で、

「100万ドルの賞金を用意するが、東洋人でオレに挑戦するヤツはいないか?」

と発言。 アリ本人は軽口を叩いたつもりだったんでしようが、これを耳にしたアンテニオ猪木が食いつきました。

「100万ドルに900万ドル足して1,000万ドル(当時の円ドル為替で30億円、現在の貨幣価値で60億円近く)を用意する。ベアナックル(素手)の殴り合いで、試合の日時・場所は任せる。」

という挑戦状をアリに送付。

当初アリ側は冷淡でしたが、マレーシアで6月9日に行う世界タイトルマッチに向かう途上来日し、

「猪木なんてレスラーは知らないが、相手になってやる。」

と挑発。 これにマスメディアが飛びつき、アリ得ないと思われていた異種格闘技マッチがにわかに現実味を帯びてきました。

そして日本中の目が注がれる中、遂にゴングが・・・。

当時高校3年生でアリ・ファンだった私も何日も前から楽しみにしていたのですが・・・リングサイド席が30万円という超破格の試合は、残念ながら単調というか凡戦というか、殆ど試合になりませんでした。

猪木選手は試合時間の半分以上、お尻をリングにつけるグラウンディング態勢でアリに蹴りを入れるだけ。

またアリはその猪木選手の周囲を蝶のように舞うだけ・・・殆ど組み合ったり殴り合う場面がないまま15ラウンドが終了し、判定は引き分け。

     

※試合の模様(一部)を、こちらでご覧いただけます。(↓)
 

 

こういう試合になったウラには、致し方ない事情がありました。

そもそもアリ陣営はこの対戦をショーと割り切っていたのですが、試合前の猪木の真剣な公開スパーリングを見て、猪木側がガチンコ(真剣勝負)であることを知り、途端に態度を硬化。

試合を中止するとまで言い出したため、賞金をかき集めるために借金をした猪木側は何としてもそれを翻意させるべく交渉を重ねた結果、殆どアリ側の要求するルール・・・つまりプロレス技を封じられてしまったのです。

見た目は茶番劇でしたが、それは台本なしのガチンコだったから。

 

それ故に身長190cm・体重100kg前後の超一流格闘家同士の対決は、見かけは凡戦でもそれぞれに深刻なダメージが残りました。

試合後、猪木選手はアリのジャブがかすっただけで、リング下の観客の顔が二重・三重に見えたそうですし、蹴りを入れた右足の甲は剥離骨折。

そしてアリは猪木選手に蹴られた膝が腫れ上がって血栓症を起こし、アメリカで1ヶ月の入院を余儀なくされました。

結果的にアリはこの試合から5年後に引退するのですが、その時期を猪木選手のキックによって早められたとも言われています。

また猪木選手は “Inoki ” の名を世界に知らしめたものの、この一戦で莫大な借金を背負い込むことになり、その返済のためにその後も異種格闘技戦を続けることに。

ただ救いなのは、試合後の両者は親密な関係になり、アリの結婚式に猪木夫妻が招かれるなどしたこと。

お互いに格闘家として相手をリスペクトしていたんでしょうネ。

この一戦に関して詳しく知りたい方には、猪木選手自身が語った


 『真 実』 (ゴマブックス・刊)

 

     

のご一読をオススメします。

これからの格闘技界で、この一戦以上にファンの期待が盛り上がる試合が実現するでしょうか?

 

 

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