「エネゴリ君ょ、この前一緒に来た時お客さんにお土産で持たせた自家製ピクルス、奥さんやお嬢さんに美味しいって凄く喜ばれたんだって。 ありがとうナ。」
「そうですか~。 私が作ったから当然ですョ~。 ウッホッホ!」
店に入ってカウンターに座るなり、そんな会話で始まった先日のこと。
「さて、今日は何を食べようかナ~。」
とメニューを眺めていると、
「おっ、コレは初めて見たナ。 〝マグロスモークの冷製〟って美味しそうじゃない。 コレちょうだい。」
「ありがとうございます。」
そう言って、早速調理し始めたエネゴリ君・・・待つこと5分ほどで、
「お待たせしました。」
とカウンター越しにお皿を出してきました。
それを受け取った私は目の前に置いて、
「おっ、美味しそうじゃん!」
とフォークで一切れ刺して、口に入れよう・・・としたところで、彼が突然
「あっ、済みません。 渡辺さん、お皿戻していただけますか?
ひとつ忘れてました。」
「なんだょ。 じゃあこのフォークに刺したのも元に戻せって?」
「えぇ、お願いします。」
そう言われた私は、しぶしぶフォークから戻して皿を彼に手渡します。
カウンターから身を乗り出して手元を見ると、エネゴリ君は新しい皿に盛り付け直し始めたではないですか。
「おいおい、何も盛り付け直すことはないだろう。
忘れた付け合わせを乗せるだけでいいのに。
俺とお前さんの仲なんだから・・・。」
「いえ、料理人としてそれは出来ませんから!」
おっ、久しぶりにまともなこと言うじゃん。
しかし出し直された皿を見ると、見かけはさっきと変わらず。
「あれ、どこが違うの?」
「マグロの下にキノコを敷くのを忘れたんです。」
なんだ、それじゃあ盛り付け直すしかなかったんだ。
彼を見直して損した気分。
「でも美味しいょ。 このメニュー、今週から始めたの?」
「前から出してましたョ。」
「ウソつけ。 先週お客さんと来た時はメニューに載ってなかったゾ。」
「いえ、その前から出てましたって。」
「何だょ、その言い方。 まるでオレが悪いみたいじゃないの。」
「えぇ、ボクと渡辺さんの仲だから、はっきり言わせていただきました。」
エネゴリ君、キミの日本語の使い方・・・やっぱりおかしい。