諸行無常、人の世は常に移ろうが如く・・・葬儀の様相も時代と共に変化していきます。
近所付き合いが濃密だった昔の葬儀は組内等近隣住民が協力して執り行われ、親族も近場に固まって居住していましたから、ほぼ全員が参列。
交通機関が発達し、若者がこぞって大都市に移り住むようになった高度成長期を迎えてからは、核家族化が進むと同時に近所付き合いが希薄化。
また平均寿命が伸びたために、ご子息である喪主様が職場を既にリタイアされているケースが多くなり、親族だけで執り行う 「家族葬」 が (少なくとも首都圏では) 増加傾向にあるようです。
先日お手伝いさせていただいたご葬儀も、ご喪家からは家族葬で・・・というご希望でした。
喪主様からは、「今回は身内以外に一切知らせていないし、勤め先にも参列ご無用って予め伝えてあるから」 と言われていました、が・・・。
ご親族様のみ約30名がご参列されたお通夜が閉式となって、1時間以上経った午後8時過ぎ・・・1人の若者が息を切らせて駆け込んでこられたのです。
お見受けしたところ20歳代前半、ラフな私服でバックパックを背負った彼の姿からは、取る物も取り敢えず勤務先から飛んで来られたことが伺えましたが・・・聞けば、故人様を最後までお世話された介護施設の担当者さんとのこと。
式場へとご案内して線香を上げていただきましたが、ご本人から 「故人様のお顔を見せていただけますか?」 とのご希望がありました。
「えぇ、もちろんですょ。」 とお棺の窓を開けて差し上げると、窓越しに対面されてしばし合掌をされた彼の目尻らは、一筋の涙が・・・。
(こういう若者が介護の仕事で頑張ってくれている。 まだまだ日本も捨てたもんじゃないなぁ。)
私が思ったまさにその時・・・壁ひとつ隔てた控室から、十数年ぶりで故人様とお会いになったというご親戚の甲高い笑い声が聞こえてきました。
若い担当者さんの弔問をお伝えすると、まさかお越しいただけるとは思っていなかった喪主様は、ご親族と歓談していた控室から飛び出してきて深々とお辞儀しつつ、丁重に会葬のお礼を述べていらっしゃいました。
お酒も入り、式場にまで響き渡る程の大声で笑いながら話し込んでいたご親族が、 「仕事があるから」 と欠席された翌日の告別式・・・前夜駆け込んでこられた若い担当者さんはしっかりと礼服に身を包み、午前中の仕事を休んで最期のお見送りをされていました。
〝遠くの親戚より近くの他人〟
この言葉を複雑な想いでかみしめる私。 でも・・・
果たして彼は、故人様やご遺族にとって『他人』 だったのでしょうか?
(※写真と本文は関係ありません。)