今日は、私の葬儀屋時代の経験の中で〝最も残念な思ひ出話〟をご披露致します。
以前弊社で葬儀のご相談をお受けした、Aさんという男性のお客様がいらっしゃいました。
医師から余命を告げられた方がいらっしゃるとの事でしたが、その方の奥様がとても葬儀の打ち合わせができる状態ではない・・・ということで、Aさんが代わって連絡をよこされたのです。
ご対象者の男性は、今は既に引退されているとはいえ当時某業界において中堅クラスに位置する会社の創業者であった由。
Aさんは血縁関係はないものの、その創業者の後を継いだ社長さんでした。
社葬となれば数多くの会葬者がお見えになるとのことで、それなりの規模になることが予想され、ご希望に沿って見積書をご提示すると同時に、万一の際の段取りもご説明させていただきました。
A社長からは、「よく分かりました。万一の時はよろしくお願いします。」とご納得をいただけたのですが・・・。
それから約2ヶ月後の早朝、そのA社長から電話が。
「あの~、実は今朝未明に亡くなったんですが・・・。」
ところが、どことなく様子がおかしいのです。
「そうですか、誠にご愁傷様です。
A社長、何かあったのですか?」
とお尋ねしたところ、彼の口から出た言葉は全く予想外の事態でした。
深夜に容態が急変して亡くなられた時、枕元にいらしたのは奥様一人だけだったとのこと。
事前の打ち合わせでは、まず弊社に一報を入れていただくようお願いしていたのですが、突然の事態を一人で迎えてしまった奥様はパニック状態に陥ってしまい、ただご主人にすがりついて泣き叫ぶばかりだったそうな。
A社長にご逝去の連絡を入れたのは、奥様の様子を見かねた病院の当直看護士さんだったそうで・・・亡くなられてから2時間以上経ってA社長が病院に到着したところ、ナント奥様は病院の提携葬儀社の執拗な勧誘(?)に遭い、混乱の中ご遺体の搬送をその葬儀社に依頼してしまっており、もう出発寸前の状態だったというのです。
Aさんが 「なんで違う葬儀社に依頼したんですか?」 と聞いても、
半ば錯乱状態の奥様は、
「もう、どうでもいいのょ。 私の好きにさせて!」
と、取り付く島も無かったとのこと。
「すみませんネ、渡辺さん。 いろいろ教えていただいたのに・・・。」
と電話口で申し訳なさそうに謝ってくださるA社長に、私は
「いいえ、こちらこそお役に立てなくてすみませんでした。 もし今後何か不明の点などありましたら、ご遠慮なくご相談下さい。」
と申し上げて電話を切ったのですが・・・私が驚いたのは、その日の夕方でした。
「ちょっと渡辺さん、聞いて下さいョ!」
と、再びAさんから電話があったのです。
その日の午後、病院で搬送依頼を取り付けた葬儀社が提示してきた見積金額は、弊社の提示金額の役2倍、差額にして・・・ナント約500万円以上!も高かったと言うのです。
落ち着きを取り戻した奥様があらためて見積書を見比べ、愕然としたそうですが・・・既にその葬儀社の手により納棺も済ませてしまっており、今更キャンセル出来なかったとのこと。 😰
事前の打ち合わせ通り、奥様が弊社に電話をかけてくれてさえいれば・・・と思うと、やり切れない思いでした。
失敗・後悔しない葬儀を執り行うためには、
◆ 見積書を取り付けるなどして、事前に信頼できる葬儀社・担当者を決めておくこと
が必須条件。 そしてもうひとつ・・・
◆ 万一の事態を迎えても絶対に慌てず、落ち着いて行動すること
が大切なのです。
どうか皆様、くれぐれもお気をつけ下さい。
※念のため申し上げますが、病院と提携している葬儀社が全て今回のような(営業)手法を用いるわけではありません。