読書感想文 源氏物語 与謝野晶子訳⑥ 末摘花~花散里 | わんわん物語

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~異界から目薬~

うおおお 3月全然ブログ書いてないー

というわけで久しぶりの読書感想文です。

早く書かないと読んだとこ忘れそう。

 

とりあえず、このブログにはネタバレを含んでおります。

 

今回は若紫と出会ってから須磨に隠棲するまでの間の部分の感想文です。

ここでようやく設定でありつつも具体例の少なかった源氏のプレイボーイっぷりが描かれていきます。

 

末摘花については前回までの感想文でも触れてるけど、個人的にはこのキャラかなり好きですよ。

いや、別にブスキャラが好きなわけではないんだけど、末摘花と絡む時は完璧イケメンな源氏の調子が狂わされてるシーンが多くて人間味が出る感じが好きなのです。

 

源氏のイケメンパワーも高レベルの美女向けなので、クオリティの高い歌に対する返事がどうしようもないものだったり、めちゃめちゃ雰囲気良くしてイケメンなセリフを言っても返事がごにょごにょしたものだったり、センスの良いおしゃれな格好して会いに行ったら「お前いつの時代の人やねん」っていう服装で待っていたりして、想像の斜め上なのか下なのかをいく末摘花にさっぱり上手く対応できなくなるのです。

 

それでもそもそも末摘花に手を出した理由が、「落ちぶれて貧乏なとこにすむ令嬢がグッとくる」っていう話を例の雨夜の品定めで男子トークの中で聞いて、そういうの見つけた!ってことだったんだけど、しっちゃかめっちゃかになるのが笑えます。

 

そして、それでも美人かもしれない、と思って明るい時に顔見てみたら赤鼻のブサイクだったー、じゃあ赤鼻と紅花をかけて名前は紅花の別名の末摘花だ、ってなんじゃそりゃ、って話なわけですよ。

マジうける。

 

この話を書いた時の紫式部の気分はどうだったんでしょうね。

源氏の笑えるうっかりエピソードとして書いたんだと思うんだけど、それでも源氏は手を出した以上は責任持って面倒見る誠実な人ってところに落ちつけて次の話にいきます。

 

で、次の話が源氏のイケメン部分を最も際立たせた話、ってのもウケる。

 

紅葉賀という巻ですが、場面は朱雀院って人の50歳の誕生日式典で、源氏は青海波という舞を従兄弟で親友でもある第二のイケメンキャラ頭中将と共に舞い、ものすごくかっこよく描かれます。

前話であんなんだったのに。

おそらくここが源氏物語全話の中で最も源氏がイケメンに描かれてる部分かと。

最後までまだ読んでないからわかんないけど、今読んでるとこだと源氏30代になっちゃってるので。

前話であんなんだったのに。(大事なことなので2回言う)

 

大河でも五節の舞をきらびやかに演出してたけど、ほんとに当代の粋を集めた一流の芸術イベントだったのでしょうね。

 

で、この舞を見て感動した源氏の本命で父の後妻である藤壺がようやく源氏の手紙に良い返事をして、翌年源氏によく似た男子が産まれる、と。

 

更にこの紅葉賀の後半では源典侍(げんのないしのすけ)という人が出てきて、次の話で尚侍(ないしのかみ)という人が出てくるのでまことにややこしいんだけど、源典侍、男好きの年増という設定で源氏とも関係を持っています。

 

源典侍は年増、若作りの年増ってたくさん書かれるのですが、年増って言っても当時の年増だから20代後半から30代くらいだろうって思ってたんだけど、後の方で50代って出てきてびっくらこいたわ。

この時の源氏18~19歳です。

相手が30歳年上でも他の女子と平等に扱える源氏すげえってリスペクトだよ。

 

で、次の花宴ではさきほどの尚侍と出会います。この人は名前がころころ変わるのでこの人のことを指してるって気づかずにしばらく読んでました。

花宴では右大臣の六の君(6番目の娘)という呼び名で登場します。

現在のところの一般的な呼び名は朧月夜ですが、作中で呼ばれてたかな・・・?

始めは誰とも知らずに飲み会で出会ってヤって別れるのですが、後日右大臣家の宴会で再開して、右大臣の六の君だとわかる流れです。

ところがその右大臣の六の君は時期帝への入内が決まっていて、禁断の恋になってしまいます。

 

と匂わせておいて、次の巻で全く別のところで大波乱。

源氏の本妻と元本カノがばったり会ってガチ喧嘩してしまうという。

 

タイトルは葵という、初期から出てる源氏の本妻なのにやっとここで名前がタイトルになったっていう巻です。

 

賀茂祭での禊に源氏も供奉するところに多数の見物人が集まったっていうシーンなので、祭りでのパレードをイメージしてますが、その見物の中に源氏の本妻の葵の上と本カノ六条御息所の牛車がいて、六条御息所の方は葵の上の牛車がいることはわかっていたのだけども葵の上の方はそうとは知らず、場所争いとなってしまうのです。

で、葵の上の家来が六条御息所の牛車を蹴散らしてしまい、六条御息所は相手がこちらが誰だかわかってなかったと知っていながらも恨みを抱いてしまうのです。

 

一方そのころ源氏は仕事を終えて紫の上を祭りデートをしていたのだけども、混雑してて場所取りが上手くできないところを譲ってくれた親切な人がいて、お礼を言おうと牛車を覗いたら源典侍だったという、何このエピソード。

 

知らないうちに本妻と本カノが喧嘩してて、新本カノとデートしてたら浮気相手と会ったって。

しかも源典侍は無害なのでデート中に会っちゃったからといって何も起こりません。

いるのかこの部分。

 

なお、この時点での源氏の女性関係は、

本妻:左大臣娘の葵の上 妊娠中

元本カノ:六条御息所 娘が斎宮に

本命:藤壺 父の本妻で源氏の子産んだ

新本カノ:紫の上 引き取ったけどがんばって口説き中

 

浮気相手

1 夕顔 死んだ

2 空蝉 人妻、旦那の出張で遠くに行った

3 末摘花 忘れそう

4 源典侍 無害な年増

5 右大臣六の君 本妻家のライバルの家なんだけども、新天皇の妻

 

まだ物語序盤だけども、源氏と関係を持つ女子は半分以上登場しています。

空蝉と間違えてヤっちゃった軒端荻も含めると10人ですね。

若紫以降でラッシュですね。

 

紫の上とデート中に源典侍に会っちゃった方は何事もなかったけども、葵の上と六条御息所の方は悲劇になってしまいます。

葵の上の妊娠して体調が悪いところに六条御息所の生霊が現れて更に体調を悪化させてしまい、葵の上は出産こそ無事にするものの体調が回復せずに死んでしまうのです。

 

しかも、六条御息所の方も葵の上が使った魔除けの芥子の匂いが自分についたことで、葵の上を殺した生霊が自分だったと知り、意識してないのにそんな怨念出しちゃう自分を嫌悪。

でもその後も生霊キャラになるので、1000年の読者から最初の夕顔殺害容疑もかけられることになってしまいます。

 

で、興味深いのは通い婚だった当時のならわしで、葵の上が死んでしまったら左大臣家との関係がすごく薄くなっちゃうのね。

 

それまで源氏は自分の家っていうのは左大臣の家っぽかったんだけど、生まれた子供の養育を左大臣家に任せると出ていってしまって紫の上に与えてた家が自宅となります。

 

それでもあまり帰らずにいろんな女子のとこに行くんだけど、本妻から解き放たれた源氏は紫の上を本妻格(形式上は本妻ではない)として口説き落として無事にゲットできました。

 

が、次の話は紫の上とラブラブな話ではなく、他の女子との話なのですが、それまで源氏は保護者で恋人目線じゃなかった紫の上がちょいちょい嫉妬のセリフを言うようになってかわいくなります。

 

六条御息所の娘が斎宮としていよいよ伊勢に行くことになり、御息所もそれについていくことになって元本カノとの別れを惜しむのと、父が死んでフリーの未亡人(?)になった本命の藤壺を口説くのと、新たにゲットした浮気相手の内侍(朧月夜)とイチャイチャする話ですね。

 

斎宮というのは、今も伊勢神宮の近くに斎宮という駅と斎宮跡がありますが、初代は天照大神を祀る地を、諸国を巡って、調査して、ふさわしい地を決めて、伊勢神宮を作った人で、その後は伊勢神宮で天照大神に奉仕する役割を担う役職です。

 

六条御息所は生霊の件もあって都を離れたいと思って伊勢についていったんでしょうね。

 

なので本妻に続いて元本カノもいなくなってしまったのですが、ここで父が死んで本命がフリーになるという、源氏が暴走する案件となります。

 

が、それも藤壺が拒み出家するというこちらも暴走状態。

 

出家って、戦国時代になると結構気軽にやって頭丸めるだけでそのまま大名や武将としての地位を維持してることが多いんだけども、それは領内の寺社勢力を味方につけるためだったりとか、早めに家督を子に譲ってお家騒動を防ぎつつも勢力が弱くならないように後見するためだったりの便宜的な目的だったからで、当時の出家はほんとに俗世を切り離されるものだったようですね。

 

こちらも大河では花山天皇を騙して出家させて、頭丸めたらもう俗世に帰れないっていう、そういう大変なことに描いてました。

 

源氏物語でも藤壺の出家で大騒ぎだし、出家についていった家人ももう出世は諦めたみたいな、実際の距離は遠くなくても精神的な距離はすごく離れてしまった感じに描いています。

 

で、源氏は最新の浮気相手の尚侍との関係にはまっていくわけですね。

 

そんで「バレたらやばいよー」とか言いながらいちゃついてるところをバレてしまい、源氏を失脚させたい人たちがこれをネタに攻撃してくるのをかわすために、源氏は須磨へと隠棲することで逃れる、という話の流れになります。

 

なのに須磨に行く前の、バレちゃったどうしようの段階で別の女子が登場します。

設定的には物語には今まで出てこなかったけど結構昔からの彼女だそうで、名前は花散里。

 

タイトルも花散里なのでこの人メインの話なんだけど、伏線を張る回ですね。

だからこの時点でかなり後半までの構想はできてたんだと思うんだけど、現段階ではあんまり関係無いちょっとした浮気相手に会いにいく話です。

 

だけども途中で中川の女という人の家の前を通り、「あ、ヤったことある女の家だ」と気づいてスルーするのもどうかなって手紙を送るんだけど、瞬殺で拒否られてしまいます。

もう何やってんのかわかりません。

 

中川の女でググるとその人は空蝉っていうのも出てくるんだけど、謎の人みたいね。

 

で、諦めて花散里のとこに行っていちゃついてきます。

 

何やってんのほんとに。

 

次から尚侍の件で大変なことになって須磨に行くことになるわけですが、ここまででいろんな女子と遊びまくってその中でいろいろ事件があって、ついに大事件起こして都を追われるっていうところで一区切りなので、今回はここまでです。

 

葵までは源氏のイケメンぶりが颯爽と描かれているのに、そのイケメンぶりを伏線として賢木からダメ人間になりますね。

イケメンぶりもたくさんの女子を優雅に落としていくのも、元が母を失った孤独と届かない恋の相手である母に似た藤壺を想う屈折した感情からなので、良い方に作用している時はかっこいい源氏だけど悪い方に作用するとダメ人間になるっていう二面性を描きたかったのかな、と思います。

 

次回はピンチの源氏からです。

次回もお楽しみに!