大河ドラマの解説コーナー㉞ #どうする家康 | わんわん物語

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~異界から目薬~

先週は放送が無かったから追いついた!

 

家康が朝日姫と結婚して上洛を決意する回です。

 

家康が上洛するのって、これも前回の数正出奔と同じく多くの物語ではさらっと流れていく部分なのです。

 

大事なのは小牧長久手の戦いと、家康は戦場での戦いには勝ったけど政治、戦略の部分で秀吉が圧倒的な力を持つことに成功して臣従したってことで、間にある数正調略、朝日姫結婚、母を人質に送るっていうのはその過程の策略の一つだからぱっぱと進んでしまうのね。

 

それを、よくぞ感動の物語にしてくれました。

 

瀬名への想いと、諸説ある数正出奔の理由と、朝日姫の努力、秀吉に屈することへの家康と家臣たちの想い、創作の構成ながらも見事にまとまって良いストーリーだったと思います。

 

前回のブログの締めが、秀吉を倒す決意をどう翻すのかって書いたんだけど、予想を遥かに上回る演出で感動しました。

 

さて、それぞれのエピソードと人物を解説します。

 

まず、天正地震から。

 

近年この地震がただの災害ではなく、秀吉の家康征伐を食い止めたものとして扱う研究が増えています。

 

研究史において天正地震と家康臣従の間に関連があることがどのくらい前から声が大きくなってきたのかは勉強不足で把握してませんが、例えば秀吉の軍師黒田官兵衛が主人公の大河ドラマ「軍師官兵衛」、秀吉子飼いの家臣山内一豊が主人公だった大河ドラマ「功名が辻」、この時点で越中能登加賀3国に領地を持つ秀吉方の大大名前田利家が主人公の大河ドラマ「利家とまつ」では地震の件は触れられていても家康征伐、家康上洛とは関連せず独立したイベントで描かれていました。

 

というか、一般的なイメージでは小牧長久手の戦いの後は秀吉が己の権力を強化して、なんとか戦をせずに家康を取り込めるように苦心する感じで、家康を滅ぼす準備をしていたようなイメージは少ないと思います。

 

ちょっとこの辺の史料を探してみようと思いました。

 

天正地震よりは慶長地震の方が秀吉天下統一後の平和な時期にに突然襲った大災害ってことでドラマ等でも描かれることが多く、時期も10年差なので混同しやすいので注意です。

 

天正地震では、ドラマでやってたように各地で大きな被害が出たのですが、もっとも悲惨だったのは飛騨の帰雲城でした。

 

帰雲城は内ヶ島氏が治めていましたが、前回のブログで書いた佐々成政と結んで秀吉に対抗しており、ちょうど降伏して和睦が結ばれたところで、無事に和睦できた宴会をしている時に天正地震が襲いました。

 

この地震で帰雲城は山崩れに巻き込まれて埋まり、一族縁者家臣全員死亡して内ヶ島氏は滅亡、現在も城は埋まったままで正確な位置は不明という甚大な被害を出しました。

 

前述の山内一豊は秀吉が最初に城主となった長浜城の城主になっていましたが、この地震で唯一の実子で6歳だった長女が亡くなりました。

「功名が辻」ではその深い悲しみが描かれています。

 

この被害の中に、対家康の前線基地だった大垣城が崩れ、家康征伐計画が頓挫したという。

 

他のもろもろの被害は「天正地震」でググると出てきます。

 

次に朝日姫。

 

秀吉の物語で突然ここで出てきます。

 

突然出てくるというのは、弟の秀長は秀吉の右腕として活躍(主に無茶をする秀吉の尻拭いキャラ)するのですが、朝日姫は秀吉が出世する前に既に農民に嫁いでいて、その夫は形だけ武士に取り立てられるも目立った活躍をしていないからです。

 

夫は佐治日向守という人か副田吉成という人の2つ史料があり、どちらか確定していません。

 

佐治氏であれば、まあ、血縁関係はわからないけど知多の豪族で織田を早い時期から支援してきて織田とも婚姻関係がある一族でなので箔をつけるのにちょうど良いところなのですが、お市の三女のお江も最初の嫁ぎ先が佐治氏なので関連がありそうです。

 

が、お江の婚姻に関しては信雄の意向なのか秀吉の意向なのか諸説あって、佐治氏自体もそういう一族が織田を支えてた以外に目立った活躍をした武将もいないのでよくわかりません。

 

婚姻による裏の繋がりで歴史の表に出てこないのは不気味ですね。

 

副田吉成という人もウィキはあるのですが、秀吉に仕えて転戦したくらいのことしか書いてないので詳しくはわかりません。

 

朝日姫もウィキにはそれなりの文量で書いてありますが、歴史の表舞台に出てくるのは家康と結婚した部分だけなのでどういう人物像だったのかはあまりわかりませんね。

 

秀吉のキャラと出自から母の大政所と合わせて田舎の農民キャラで描かれがちですが、秀吉が出世してそれなりの身分になってから20年以上経ってるので、素の性格はともかく実際のところはあんなキャラではないと思います。

 

と同時に、秀吉近辺では方言のままのセリフを言うキャラが多いのですが、実際のところはどの武士の家中も方言だったと思いますよ。

というか、共通語はまだ無いし、あっても必要になるのは秀吉が天下統一して全国の武士が一箇所に集まるようになってからだし。

 

で、秀吉から、朝日姫が失敗したら母を送ると言われ、母が送られる事態になって朝日姫は泣いたり、石川数正の意思に気づいて家臣一同泣いて秀吉への臣従を決意したりするのですが、このあたりは創作の部分です。

 

三河物語では家康が殺されるのを覚悟の上で徳川の家臣と領民を救うために上洛を決意し、家臣が止めるの説得しつつも秀吉から朝日姫や大政所が送られてきて秀吉の元に向かう、という描写になっています。

 

そしてその流れで宴会の時に秀長に毒殺されるところを、運良く席が変わって秀長が自分で毒を飲んで死ぬっていう謎なことが書いてあるのですが、秀長が死ぬのは小田原征伐の後なのでこの部分の三河物語は混乱しています。

 

あと解説すべきところは、石川数正が出奔して機密だだ漏れなので徳川は軍制を武田式に一新するのですが、井伊直政はこの時26歳なので、軍制改革メンバーにはいたけど一人でやったわけじゃないよ、ってところでしょうか。

 

次回は上洛して、悪い顔してる秀吉と対面です。

徳川が臣従して天下統一へと向かっていくのですが、どんな悪巧みがあるのか・・・

 

次回も乞うご期待!