wanko


最近、毎日、『醜女狩り』という歌(昭和歌謡)を聴いている。

知り合いに誘われ、セントラルパークに面した
77streetの歴史博物館に行く。

「なんと、ニューヨークにも奴隷がいたんだよ!
信じられないでしょう。
まったく、センセーショナルな催しなんだ」
と力説されるが、
アンクルトムの小屋
くらいの知識しかないので、いまひとつぴんと来ない。
あれは『政治的に正しくない』話らしいし。

ミシシッピー・バーニングとか遠い夜明け
は、もうちょっと時代があとだし。

ともかく、フツーのアメリカ人は、奴隷は南部にしかおらず、
北部はそんな野蛮なことはいたしませんでした、
と思っているらしい。
(少なくとも自分はそうだ、とボストン育ちのアメリカ人である知り合いは言う)

行ってみたら、かなりよくできたエキシビジョン。
奴隷の仕入値は350ドル、売値は3500ドル!

・・・なんてことが、よくCNNとかでやっている株価の変動ボードみたいな
CGで展示されている。利鞘でオランダ人、ボロ儲け。

当時の実際の新聞広告(NEW奴隷の大売出し)なんかも展示されており、

★「男のニグロ!推定18歳!健康で大きめ。
★もれなく妻奴隷2人(推定12歳と16歳)がついてきます。LOW PRICE!!」


わたしが奴隷だったら、売値すらつかないだろう、とぼんやり思う。
不健康で小さめ、歳もとっている。おまけにつける妻奴隷でもないし。

もうちょっとあとの時代、アメリカ人が自分ちの奴隷(中古品)を
売り買いするときは、

★英語は完璧
★家事をよくこなす(特に洗濯)


みたいな宣伝やっていたようなので、こっちでも売れなさそうだ。
今のご時勢、ゴミを捨てるにはこっちがお金を払わなきゃいけないしね…。

という自虐ネタ(?)をアッパーウエスト名物のPAPAYA
★ホットドッグとノンアルコール(!)ピニャコラーダ(3ドルくらい)を食べながら、英語で言うのは難しいようである。

しかし、なぜニューヨークの飲み会は9時とか10時開始なのだろう?
ダウンジャケットやセーター姿の犬も増え、めっきり寒くなった金曜日。
寒くなると、いったん家に戻ったら、なかなか外に出られない・・・。

・・・と思いつつ、『醜女狩り』を聴きながら、出かけることにする。
美女と林檎

決しておこげになるつもりはないのだが・・・。

初めて生ゲイを見たのは、新宿は歌舞伎町(ショーパブ)。
初めて生ゲイと話したのは、NY(ヴィンテージ・プッチを売っている古着屋)。
初めて生ゲイ・カップルを見たのはパリはオベルカンプ。

いまは暴動で荒れている最中だろうが、
この、パリのゲイ・カップルが世にもキュートだった。
くすくす笑いながら、手をつないでウインドーショッピングしているさまは、
嶽本野ばらの小説に登場する、お洒落な中学生みたい。

しかし・・・週末、精力的に調査をおこなったところ。
NYでキュートなゲイ・カップルを発見するのは、
新宿二丁目のキリンシティで同カップルを見つけるに匹敵する
難しいものであることが判明した。

*デブ&坊主頭&タックインしたシマシマTシャツとチノパン(ペアルック!!)という、
田舎モノ代表みたいなカップル
(ハドソン・リバー沿いで目撃)・・・お手手つないで歌ってるけど、いい歳してビヨンセは、やめちくり~。

*メトロポリタンン・ミュージアムのエキシビジョン
(ヴィンテージ・ファッション好きにはおすすめです)で騒いでいた、20代はじめと思われる集団ゲイ。
日本のコギャル(死語?)並みの金切り声をあげるのは、やめちくり~。

*渥美清に似た黒人(推定50歳)と、皮膚病の犬とミックジャガーを掛け合わせた
ような白人(推定65歳)のカップル。
(ミートパッキングエリアで目撃)・・・横断歩道で信号待ちの間、相手のうなじにキスするなら・・・許すけど、
ぺろりとハゲ頭のてっぺんを舐めるのは、やめちくり~。

毒気にあてたれたせいか(?)、さわやかさを求めて今日は、
ユニオンスクエアで月・水・金・土に開催されているグリーン・マーケットに行く。
ここは野菜、果物、チーズ&魚、ワインなど産直のものが売られている
青空市なのである。

★とれたて林檎(3つで70セントくらい)
★壊れプレッツェル(一袋1ドルくらい)
★農家手作りのラズベリーワイン(10ドル)

などを購入。
周りはヘルシーライフを目指している健全な市民で一杯。

・・・なんか、さわやかすぎて、居心地が悪い・・・。

そう思ったら、雨が降ってきた。







嶽本 野ばら
それいぬ―正しい乙女になるために
カフオケ
ノラであっても編集者なので、大型書店の
バーンズ&ノーブルに行ってメシの種を探す。
翻訳に良さそうな本とか、売れ筋チェックとか。

ついでに読みやすそうだったので
上海ベイビーの英語版を買う。
なんでまた、ニューヨークくんだりまで来て、
中国の尻軽娘の小説を読んでいるんだか?

夜中になり、雷が轟く。
ちっぽけな窓から見えるエンパイアステートに
光が反射して、なかなかキレイ。
激しい雨音を聞いているうちに寝てしまう。

翌日は晴天。
SOHOのギャラリーで、目当てのアーティストの資料を貰う。
すごい作品。
売ってもいるけれど、わたしの年収10年ぶんくらいか。
最後に窓ガラス越しにもう一度オブジェを見ようとして、
出口の階段から転げ落ちる。
人がわらわら集まってくる。
「大丈夫です」と必死で言いまくって近くのカフェに逃げ込む。

気を取り直すために赤ワインを注文。
★ハウスワイン赤(イタリアの何か)が、5・5ドル
キレイな店員に「21歳を過ぎてますか?」とまた聞かれる。
「当然。若く見てくれてありがとっ!」
目一杯、強打した顔が痛み、はき捨てるように答える。
半分ほど呑んだところで、店長らしき男が来る。
「やはりIDをチェックさせてください」

いい加減、アタマにきたので、
「わたしの歳を知ったら、あなたの心臓に雷が落ちます」と言い放つ。
「雷」の発音が悪くて通じない(涙)

ブロードウェイを南上し、コリアタウンへ。
CHO DAN GOL(ちょだんごる?)という豆腐チゲの店に入る。
注文を聞きにきた店員に、韓国語でまくしたてられる。
「わかりません」と英語で言う。
料理を運んできた店員に、また韓国語で何か言われる。
「わかりません」と英語で言う。

隣の席の日本人が、
「あの人、アメリカ生まれの韓国人かしら?それとも中国人かしら?」と
わたしを指して言うのが聞こえる。
「さあね。それよりワタシの前世はね、中央ヨーロッパの貴族なの」
もう一人の日本人が答えるのが聞こえる。

OBビールを呑みながら豆腐チゲ、突き出しのキムチや海苔、
ミニ・チヂミを平らげる。
韓国カラオケ屋の前で、韓国語でナンパされる。
ミッドタウン行きのバスに乗ろうとすると、メキシコ人の団体に
「タイムズスクエアへはどう行けばよいか?」とたずねられる。

部屋に帰り、仕事を少しする。
部屋の電話が鳴る。
「仕事をしてたの?」と男の声。英語。
おかしいな、この番号はごく限られた人しか知らないのに。

「仕事をしてましたが、どちらさまで?」とわたしが聞く。
「これから、あなたと知り合う人です」と男が言う。
「言ってることがわかりませんが?」とわたしが聞く。
「わたしのスペシャルな○○があなたの○○を○○○・・・」
・・・いたずらエロ電話だった。

「HERE BUT NOT HERE」
ここにいるけれど、ここにはいない。
それが『ニューヨーカー』の伝説の編集長の口癖だったと、
「ニューヨーカー」とわたし―編集長を愛した四十年
(原題:HERE BUT NOT HERE)
に書いてあったが、わたしはどこにいるんだか?

秋のセントラルパーク

あとわずかで終わるであろう、
極上の散歩を楽しめる季節・・・。
セントラルパークを散策するノラ編集者も
もの思いに耽る。
テーマは来し方行く末・・・ではなく、「何かが足りない」。

木の葉と同じく枯れているので、「足りないのは一緒に歩くイイ男」
というわけじゃない。
紅らむ木々の葉と同じく、内の蔵にも、ぽっと灯がともるような・・・。
そう、アルコホォルである。

公園内のスタンドで、ワインは売っていない。
ワンカップ大関(ホット)の自販機もない。
公共の場で酒を飲むのは、違法なんだそうである。

暑ければ暑いで、この公園、ビール呑んだら最高だろうに・・・。
もったいない。
「これは人間を、自己管理のできない子どもとみなす不遜な法律だ!」
スラスラ言える英語力はないが、
「バッカミタイ」(←英語)と言ったら、スペイン人とフランス人が
強烈に賛成してくれた。
仕方なく棒のチョコアイス(3ドル。暴利)を食べる。マズイ。

散歩にも疲れたので、夕食の待ち合わせまでの間、
ミートパッキングエリアに行く。
再開発がすすみ、ステラマッカートニーやら、ゲイっぽいセンスが
いけてるセレクトショップ「ジェフリー」やら、お洒落なお店がいっぱい。
しかし、ガソリンが足りず、ウインドーショッピングする元気もないので、
バーに入る。

かなり薄暗く、アラブ風の内装に、アンティークのソファがいくつも置いてある。
長いカウンターはオーセンティック・バーふう。
オリエンタルと黒人のミックスらしき女性バーテンダー。
客は誰もいない。
だが、なにやら叫んでいる。
「???」
暗くてわからなかったが、黒ずくめの真っ黒い男が、カウンターの隅にいる。
キレギレに聞こえてくる会話からすると、痴話ゲンカである。

「なんにする?」
おざなりに女バーテンダーがわたしに問う。
問いつつ、黒ずくめ黒人男に「黙ってて!」と一言。
カクテルなど頼んだら舌打ちされそうなので、赤ワインを頼む。
メルローが6ドル。

奥のソファで、ワインを一口飲む。
カウンターの二人は、いさかいを続けている。
「アンタはわたしに、コミットメントしていない」
女バーテンダーが言う。激しくカウンターを拭く。
「アンタはお金にだらしない」
女バーテンダーが言う。男は貧乏ゆすりをしている。

やがて二人は、大画面テレビの音をしのぐ大声で罵り合いをはじめ、
(4ワードなども混じっていたが、リスニングに適さないスピード)
やがて、「ごんっ!!!」とカウンターを力任せに殴り、
男が出て行った。

突っ伏す女バーテンダー・・・。

「おかわりは?」
しばし突っ伏したのち、女バーテンダーがわたしに問う。
「同じもの」
カウンターまでグラスを運び、わたしは言う。
「バッカミタイ」
女バーテンダーが少し笑う。

女バーテンダーが、大画面テレビのチャンネルを、スポーツから
ブルースのミュージックビデオに変える。
マディ・ウォーターズが文字通り店を浸す。
二人の孤独な女に、わずかなシンパシーが流れる。

・・・と思ったら。

女バーテンダーが問う。
「スミマセン、あなたのID見せて」
「へ?」
「21歳以下にアルコールを売ったらわたしは罰される」

・・・あのう、この店は暗いですけど、それにしても。それにあなた、
おかわりまで勧めたじゃん。
「必要ない」と言っても承知してくれないので、仕方なく見せる。
わたしの歳を見て、女バーテンダーの目の玉が飛び出る。
笑い出す。爆笑に変わる。

・・・だから言ったんだよ・・・。
女同士のあえかな共感は消え去り、わたしは酒場をあとにする。
そう、IDなしでたんまり呑める店へ向かって!




犬にしたらこんな感じ

初めて会う人が、挨拶がわりに聞くこと・・・。
「・・・で、なぜNYに来たのですか?」
アメリカ人も然り。こちらで紹介される日本人も然り。

まあ、それらしい理由も必要ならば答えるが、
正直に答えることもある。
「わたし、ゲイの友だちをつくるのが目標なんです」
冗談ととる人、何かふかーい意味があるのか???と
わたしの語学力では説明できないツッコミを
ぐりぐり入れてくる人・・・反応はイロイロ。

でも、実は本気なのだ。
『SEX&THE CITY』然り、『ウィル&グレック』然り、
NYを舞台にしたテレビドラマでは、お約束といっていいほど、
ゲイ友だちが登場。
コレがなんともいい感じ。
たとえば、女同士で買い物にいくと、微妙に気を使いあう。
「カワイイー似合うー♪」と心無い(?)ことを言い合うのが、
オンナとして正しいマナーだったりする。
だが、ゲイならきっと違うはず。
「アナタ、いい加減に、歳考えなさいよっ!そんなピラピラの服、
いったいどこに着てくつもり?困った女ねえー♪」
・・・などと毒舌の応酬を楽しみつつ(?)買い物ができるし、
センスを磨く手助けにもなるのでは・・・?

そう、ピーコあるいは写真のパグ犬みたいに姦しくやりあうのだ。
一刻も早く見つけなければ。
見つからないからレベッカ・テーラーのバーゲンで、
またワンピースを買っちゃったよ・・・。

しかしここはNY。 『Queer Eye for the Straight Guy』という、
ゲイの男たちがフツーの男のセンスを丸ごと改造しちゃいます、
みたいなテレビ番組が人気で本にもなっているくらいだから、
まだまだチャンスがあるはず???

・・・そう勢いこんで、元スッチーに紹介されたアーティスト、
HISAKO KOBAYASHIさんが参加するグループ展の
オープニング・パーティに行ってきた。
場所はSOHOのこぢんまりしたギャラリー。
古い映画では「ミスター・グット」をバーで探していたが、
「ミスター?グッド・ゲイ」を探すなら、やはりアート・シーンだ・・・!

激しいのにどこかストイックな感じの抽象画を、赤ワイン片手に鑑賞。
HISAKOさんが、アメリカ人のお友だちも紹介してくださる。
さっそく、つたない英語を操り、ゲイ・チェック開始。

・・・なかなかお洒落なおじさま。
へんな訛のわたしに付き合ってくれるってことは、イイ人?
イイ人ってことは、ストレート?
おまけにクィーンズに住んでいる?ありえない、ゲイではない。次!

・・・なになに、NYよりカナダのほうがいいところ?趣味はハイキング?
巨大なカラダを包むのは、ダンガリーシャツにチノパン。
つやつやした丸顔と坊主アタマは、
剣道部出身の元同僚を力ずくで白人にしたよう。

あー、疑う余地もなくノンケだ・・・。

目標は、たやすく到達できないからこそ、目標なのだろうか。


日本版は出るのか!?