医療費値上げの前に必要なこと
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「約27兆円にのぼる保健医療費のうち約3割は不正請求」という
現役指導医療官の衝撃的な発言を掲載し、
雑誌初出時に大きな反響を巻き起こしたルポルタージュ。
ここに、「不正請求疑惑」追求の減点がある。
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97年9月1日から、各保険制度の財政赤字を理由に、患者の自己負担増を軸にした新保険制度がスタートした。これにより、サラリーマンや公務員の医療費における本人負担分は、従来の一割から二割に倍増する。薬剤費も、従来は負担ゼロだったのが、一日分につき2~3種類なら30円、4~5種類60円、6種類以上は100円を患者本人が負担しなければならない。高齢者の入院時の負担も、現行では1日710円のところが1日1000円になり、98年には1200円までアップする。
政府管掌健康保険(中小企業のサラリーマンなどが加入)の保険料率も、8・2%から8・5%に引き上げられ(引き上げ分は労使折半)、総額としては、約2兆円の負担増となる。
今、サラリーマンの懐具合は決して楽ではない。不況が長引き、所得の伸びは著しく鈍っている。97年4月には消費税率がアップしたばかり。そこへ追い打ちをかけるかのような今回の医療保険の負担増である。サラリーマンの間に不満といらだちが鬱積(うっせき)していないといえば嘘になる。
にもかかわらず、抵抗らしい抵抗の声も上がらず、政治問題と化すこともなく、改正案が国会を通過した背景には、現行の医療保険財政が赤字に転落、破綻の危機に瀕しているという現状があり、そうした現状に対する認識が、渋々ながらも広く国民間にいきわたっているからだろう。政府管掌健康保険の場合、92(平成4)年度まで黒字だった単年度収支は、93年以降赤字に転落し、95年度には、2,783億円もの赤字を出した。
もっとも、今回の負担増も実は焼け石に水であり、2年後の99年には破綻が確実視されている。改正後の新制度でも、政府簡保の単年度収支は4,050億円の赤字。この赤字の穴埋めのために、96年度末現在で約5,500億円残っている積立金(事業運営安定基金)が取り崩されるが、それも98年度末には底をつく。厚生省の統計によれば、2001年度には、8,840億円の赤字になると推計されており、さらなる負担増は息つく間もなく必至である。
この底なし沼のような悪循環から逃れるためには、薬漬け医療の元凶とされる現在の薬価基準制度や出来高払い制を中心としている診療報酬体系など、現行の保険制度を抜本的に見直す「構造改革」に速やかに着手しなければならないという声が、医療界や厚生官僚、有識者の間で高まっている。
しかし、その「構造改革」なるものも、まだブループリントの段階であり、国民に過酷な負担増を強いることなく、また、医療の質の低下を招くこともなくスムーズに実行に移せるのか、またその結果として健保財政の赤字は本当に解消できるのか、保証の限りではない。「改革」に手を染め、いたずらに制度をいじったあげく、今までよりも状況が悪化する、ということも充分ありうることだ。
「構造改革」といえば聞こえはよいが、要はギャンブルである。濃厚診療の元凶の出来高払い制を定額払いに切り替えたために、今度は過少診療が問題化する恐れがある。むろん、現行制度のまま何もしなければ、待っているのは際限のない保険料の値上げだけであることは明らかだが、といって「座して死すよりはまし。打って出るべし」という闇雲な追い詰められた気分にかられて突っ走るのも考えものである。「構造改革」を論議すること、大いに結構だが、その前にやるべきことは果たしてないのか。
ある。「構造改革」をやろうがやるまいが、そんなこととはお構いなく、是が非でもやらなければならないことがある。保健医療費の不正請求の摘発強化である。