「茶トラ君を迎えに」


捕獲に行ってきた。

でも、茶トラ君は捕まらない。







捕獲器をじっと見つめるだけで、中に入ろうとせん。

捕獲器じゃない場所に置いたご飯も、ほとんど食べへん。


痩せているのに、空腹よりも警戒心が勝っているのかもしれん。



他の猫たちは遠慮なく捕獲器に入る。

でも、この子だけは違う







——

本当に、この子を保護するべきだろうか?

そう思った瞬間があった。

人に慣れてへんし、捕まらん。


無理に捕獲することで、

もっと怖がらせてしまうんじゃないか。


捕獲器に入るのを待ってるとき、

目の前の茶トラ君を見て思った


このまま外で生きていくには、

小さすぎるし、痩せすぎているよな。


ご飯を食べる力すらなくなったら

たぶん、あっという間に…

——



「やっぱり、君を迎えに行こう。」


捕獲器が駄目なら、他の方法はどうか?
ネット(網)を使おうか?

でも、私が少しでも近づくと、

ふわっと音もなく逃げていく。


驚かせたくない。

怖がらせたくない。


だけど、このままここにいたら、

君の小さな命がどんどん削られてしまう。


どうすれば

どうすれば、「怖くないよ」と伝えられるんやろ?



夜中にもう一度行ってみよう。

他の猫たちがいない時間なら、

少しだけ心を許してくれるかもしれん。



寒くないやろか?

ちゃんと眠れているやろか?

そればかりが気になる。



焦る気持ちを押さえながら、そっと願う。

「大丈夫だから、一緒に帰ろうや」



私を信じてくれるまで

何度でも迎えに行くから。