ふと我に帰るベジータであった。
シャワー室からビスナが出てきた。
ビスナの年齢をベジータは知らない。
ただその鍛え抜かれた肉体にも
数多くの古傷が刻み込まれていた。

そのビスナが彼を見つめていた。

「ベジータ」

ベジータはかすかに頬を赤くしてビスナの次の言葉を待った。

「貴様は強くなったな。
今日の戦闘ではっきり分かった。」

ビスナは全裸のままベッドに腰掛ける。
金色の瞳がベジータをみる。
ベジータは、戦闘から帰ってきたそのままの姿だ。
全身に返り血を浴び焼け焦げたようなにおいをさせていた。
ベジータはちらちらとビスナの表情を伺っている。
自分もシャワーを浴びるべきかどうか迷っていた。
体をきれいに洗って彼のもとに行くか。
それとも野生の獣の様相で彼に服従するか。
決めるのは、ビスナである。
ようやくビスナはべジータに目配せをする。
ベジータはそれを待ち焦がれていたかのように彼の足元でひざをついた。
ビスナはその頭を大事そうに両手ではさむ。
ベジータの唇がかすかに開く。
期待と不安。
沈黙。

「ああ・・・」

耐え切れず、ベジータが息を漏らした。
ビスナは彼の頭をそっと自分の膝の上に乗せる。
ベジータの動悸が激しくなる。

「・・・・いいのか?」
「なにがだ」
「あんたが汚れる。」

ベジータが答えた。

「オレの血が付く。」

ビスナはベジータの顔を覗き込んでかすかに微笑んだ。

「かまうものか。
もっと俺に寄り添え。
お前の血をなすりつけてみろ。」

太い腕がベジータを迎え入れる。
ベジータは恐る恐る彼に身をゆだねる。

いつもビスナはベジータを抱きしめる。
そっと、そっと抱きしめる。
そして優しく愛撫する。

ビスナは決して乱暴はしない。
ベジータの心が開くのをじっと待つ。
もちろんこれはテクニックに過ぎなかった。
普段から残虐な行動ばかりとっているものは
乱暴な性行為には心も体も開かないのだ。
もちろん相手を屈服させ支配するのには
徹底的な恐怖があればいい。
しかしそれでは相手が成長することはない。
奴隷が一人生まれるだけだ。

ビスナはべジータを自分の持ち物にする気はなかった。
だからこそ、時間をかけて育て上げたのだ。

「ベジータ・・・ほんとに良く働いた。」
「あんたがそういうなんて・・・。」

ベジータは小さくつぶやいた。

・・・ほめてもらっているのだ。
彼に。
尊敬し、信頼し、愛する彼に。
父親のような、母親のような、心のよりどころになるビスナに。

このころ、彼の記憶からはベジ-タ王の姿はきえていた。
惑星ベジ-タもすでに消滅していた。

ベジータにはもう何も残っていなかった。
彼だけが。
彼との時間だけがすべてだったのだ。

ビスナの手が触れる。
ベジータの震える髪に。
べジータの傷だらけの体に。
癒しても癒しても流れ出る赤い血。
肉が裂け骨が砕けても終わることのない戦いに
ギザギザに裂けてしまったベジ-タの心に。
しみこんでいく。
ビスナの暖かい気がやさしく彼を包んでいく。

「は・・・」

耐え切れずベジータは思わず息を漏らす。

「いいぞ、ベジータ」
「・・・あっ・・・」

ビスナのざらざらしてあれた指が
べジータを感じさせる。
湧き上がってくる、このぬくもり。
腰から下が熱を持つ。
指先がしびれてくる。
ベジータは願う。
この時間がずっと続けばいいと。

ビスナがベジータの耳元で小さくささやく。
うなづくベジータ。
ベジータは自ら戦闘服を脱ぎ
ビスナの前に身をさらす。

「ほんとにいいのか?」

うつむきながら、上目遣いでビスナをみるベジータ。
体の汚れが気になるらしい。
ビスナは左手でベジータの顎をもちあげる。

「貴様はそのままでいいんだ。」

ベジータはさっと目をそらし肌を赤く染める。

ビスナはベジータに向かって右手を差し出す。
ごつごつした節くれ立った指。
中指が第一関節から欠けている。
ベジータはその手をとる。
硬いけれど、暖かい手。
差し出された腕に彼は体を預ける。
ビスナの体がベジータの上にくる。
肌が合わさる。
ベジータは目を閉じる。
彼の体温を全身で受け止める。
耳にかかるビスナの息。


ベジータの心はいつもゆれている。
性行為が好きになるはずはなかった。
王子として生まれ育った彼が
誰かの意のままになるということが許されるはずがない。
屈辱的な体位も
求められる奉仕も
彼の心が受け入れられるはずがない。
第一、彼の体はビスナを受け入れるほどには
まだまだ成長しきっていなかった。
そのため、行為の後にはべジータはかなりの傷を作るのだ。
その場所は生傷が絶えない。
またその怪我だけの為にメディカルマシーンに入るのも嫌だった。

「はいってくればいいじゃないか。」

ビスナはからから笑う。

「俺が貴様ぐらいのころは毎日はいっていた。
みんなそうだ。」

しかしべジータは汗をかきながら拒むのであった。

「いやだ、絶対いやだ」

また異物が進入してきたときの感じ。
どうしても好きになれなかった。

「そのうちよくなるさ。」

と、ビスナはいうが。
でもどうしてもなじめない。
その瞬間は吐き気がする。
しかし。
ベジータは失いたくなかった。
ビスナとともにいる喜びを。

ベジータはいったい何を求めていたのだろうか?

愛されたかったのかもしれない。
とにかく誰かに。
洗脳を受けても受けても
消えない記憶があるとしたら。
戦闘マシーンとして教育を受けながら
マシーンになりきれなかったとしたら。
ベジータは飢えていたのかもしれない。
人肌に。

150センチほどのベジータの体が
2メートル近くあるビスナの体に包み込まれる。
ビスナの体がベジータをしっかりと捕らえる。
背中の下に腕をいれ
ビスナはべジータの体を持ち上げる。
熱い。
たまらなく熱い。

「は・・・あっ」
「どうだ、ベジータ」

ベジータがビスナの胸に顔をうずめた。

「もっと声を出してみろ。」

まるで魚のうろこのようなビスナの肌触りである。
胸にうっすらそろった銀色の体毛がベジータの肌を刺激する。
ビスナの指はベジータの髪の毛をかきあげる。
何度も何度もかきあげる。
ただそれだけなのに。
その感触にベジータの体が震える。

「もっとさわってくれよ・・・。」
「こうか?」

ビスナの指がベジータの唇に触れる。

「ああ・・」

ベジータは両腕をビスナの背中に思わず回した。

「くっ・・・はっ・・」

思わず息が漏れ出た。
それをまっていたかのように
ビスナは片手をベジータの下半身に伸ばす。
はじめは緩やかに
やがて強く。
ビスナは知っている。
ベジータの喜ぶところを・・・。

「くっ・・・・・あっ・・・」
「我慢するな。
声を出せ。
良くても、良くなくても。」
「はっ・・・あっ、あっ」
「・・・そうだ。
貴様が声を出せば相手は満足する。
声を我慢しているとこんなことはいつまでたっても終わらない。
わかるか、ベジータ?
貴様はこれが好きか?」

ベジータはビスナの顔を見た。
彼の瞳には幸福と屈辱が同時にうかがえる。
ビスナはさらに指の動きを強くした。

「答えろ・・どうなんだ?
貴様はこんなことが好きなのか?」

ビスナはベジータの顔を覆っている両の手のひらをはがした。

「いやだ・・
こんなの好きじゃない・・」

ビスナはにやり、と笑みを浮かべると
ベジータのその唇をふさいだ。
ざらついた細かい突起のある舌で
ベジータの唇を開かせる。
長い舌を差し込んで
彼の柔らかい口腔をほぐしていく。
ベジータは抵抗する。
か細い声でビスナにつぶやく。

「いやだ・・・・
これもいやだ・・・」
「そうか・・・」

ビスナがベジータの首筋に吸い付く。
唇をふさいでいたらベジータの喘ぎが聞こえないからだ。
べジータは精一杯腕をつっぱってビスナの唇から肌を離そうとする。
ビスナはその両腕を捕らえてベジータの頭の上に固定した。
ベジータの顔を正面に向ける。

「なにを・・・」

そういったベジータには恥ずかしさと期待が同時に感じられる。
15歳のべジータ。
うつぶせになり両腕をベッドにつく。
その滑らかな背中をビスナは無骨な手のひらで抱え上げ
自分の胸に合わせる。
ベジータの体の震えがとまらない。
ビスナの唇が背中を這い、ある一点が太い指で刺激される。

「い・・やだ・・もう・・やめてくれ」

ビスナは動きを止めることなく、諭すように言った。

「ベジータ。
いいかげんに慣れるんだな。」
「なれるわけがない・・・だろう。」
「きけ。
貴様はいつまでも俺といるわけではない。
貴様はいつかここを出て行く。
そうして新しい場所で戦うのだ。
慣れろ、
そして覚えておけ。
貴様の本能に忠実になることを。
貴様の意識を開放する事を。
たかがセックスじゃないか。
こだわるな、つまらんことに。」
「あ、・・・くっ・・ビ・・ビスナッ」
「そうだろう?
貴様の体は喜んでいる。
貴様の反応が証拠だ。」
「ああ・・・ちがう・・・いやなんだ・・・いやだ」
「そんなことでやめると思うのか。
・・・逆効果だな。」

ついにべジータは耐え切れなくなった。
支えていた腕の力が抜け、
ベジータの体はシーツに押し付けられた。
声をあげまいとしてベジータは白いシーツを噛む。
その様子をビスナは満足げに確認した。

「ダメだ、ベジータ。
嫌がれば嫌がるほど相手は喜ぶぞ。
なおさら貴様を解放してはくれまい。
いっただろう・・・
声を出せ。
良くても良くなくても。
よがれ。
演技でもいい、やってみろ。
貴様が努力して相手を満足させろ。
・・・でないと貴様の体が持たないぞ。」
「は・・・はっ・・」
「そら。
尻尾をあげろ。」

ビスナは、一気に全体重をかけた。
組み敷かれたべジータは獣のように叫び声をあげた。

「ウアッ、オオ、オオオ!」

身が引き裂かれる痛み。
内臓が掻きまわされ、引きずり出されるように
その痛みはベジータの体を貫く。
快感などこない。
くるのは痛みと辱めだけだ。
脂汗が浮かび
ベジータは歯を食いしばる。
びりびりっと布が裂ける音がして
ベジータはベッドのマットレスを食い破った。
鮮血がシーツに飛び散った。

「そうだ、ベジータ
声を出せ。
そうしてそのまま
ゆっくり体を動かしてみろ。
そうっと、前後にだ。」
「いやだ、いやだ」
「困ったもんだな、きさまは。」
「ああ・・・きらいなんだ、どうしても。」
「そうか?」
「でも・・・あんたは好きなんだ」

ベジータの体は震えている。
陶器のような肌に赤みがさして炎のように熱く火照る。
茶色の尻尾は弱点だ。
ここをつかまれるとサイヤ人はその力を失う。
だから普段は腰に巻きつけている。
その尻尾をだらんとさせて
ベジータは目を閉じる。

「あんたと一緒にいるのがすきなんだ・・・。」
ビスナはその時期にきていることを知っていた。
べジータを手放すときだ。
今日の戦闘でビスナは確信した。
おそらくベジータが本気を出せば
今のビスナより強いことは間違いなかった。
もう彼に教えることはなくなっていたのだ。
幼いベジ-タはもういない。
あの時。
ビスナはベジータをほおっては置けなかった。
血だらけのべジータ。
彼を抱くことはさすがにできなかった。
ビスナはただベジータの小さい体を抱きしめた。
そして。
その気高い魂を思うと不覚にも泣けてきたのであった。
高すぎるプライド。
それはベジータの宝。
しかし。
死んでは意味がない。

ビスナは決めたのだ。
何とか生かしてやりたいと。
それが指導者の範疇を越えていることはもちろん承知の上だった。
普通でない感情が自分にあったのもわかっていた。

ビスナは軍人だ。
人生の選択肢が二つしかないことを知っていた。
生きるか、死ぬか。
これ以外に何があるというのだろう。
しかし。
その小さな体をその手に抱いたとき、ビスナの心は震えた。
命の灯が消えようとする、まさにその時まで求める強さ。
あくまでも王子らしく振舞おうとする気丈さ。

これがプライドというものなのか?
ベジータを支える?

そうならば
自分には、もう、ない。

ビスナは黙ってベジ-タをメディカルマシーンに入れてやった。
そして、その体が癒されるのをじっと見つめていたのだ。
たった一人で。









ビスナは次の出撃の予定を知った。
そして、いよいよべジータとの別れのときがやってきたのも。
その日がやってきた。
今まで、ベジータに声をかけてきたのは
ビスナより弱い奴らばかりであった。
しかし今度は違う。
ビスナの上官がベジータを求めてきたのだ。
上官は、わざわざビスナを呼び出した。
そしてベジータの所属の変更を告げた。
・・・申し分のない位置である。
ベジータにとっては。
おそらくベジータは立派な戦闘員として
フリーザ軍に利益をもたらすだろう。

自分は立派に役目を果たした。

ビスナは自分で自分に言い聞かせた。

この日がくるのはわかっていたのだ。
ベジータ。
誇り高きサイヤ人の王子。
すさまじい戦闘力を秘め、
神々しいまでのプライドを持つ戦士。
自分ではおそらくこれ以上ベジータを育ててやることはできない。
別れだ。

ふと脳裏にベジータの顔が浮かぶ。
普段は見せないうっすらピンク色に染めた頬。
目を閉じて、ビスナの動きを待つ表情。
滑らかに波打つその背中。
耐え切れずもらす、甘い喘ぎ。

ベジータ・・・
終わりだ。

惑星ダータを侵略する命を受けて
ビスナは上官の部屋を出た。
出撃は明日。
そしてそのあと、ベジータの所属も変わる。

廊下に出るとドアの右側にべジータは立っていた。
感情の読めない、彫刻のような表情で。

ビスナはベジータのほうをちらりと見るとトレーニングルームに向かった。
そのあとを影のようにべジータはついてゆく。
一言もしゃべらずに。

トレーニングルームは大部屋と個室仕立てがある。
個室を使えるのは限られた人物だけであった。

「酸素濃度をさげろ。」

ビスナがいった。
ベジータは黙って従う。
そしてビスナの命令により室温をぐいっと上げた。

「ベジータ・・・いっしょにやろう。」

ビスナはべジータに声をかけた。
ベジータは目を丸くした。

「オレと?」
「そうだ」

ベジータは頬を赤らめた。
こんなことははじめてだった。

「来いよ、ベジータ。
組み手をやろう。」

ビスナには子供がいない。
そういうものに恵まれる機会が今までなかった。
もし自分が
フリーザ軍にとらわれていなかったら。
生まれた惑星でずっと暮らすことができていたなら。
ビスナにも子供がいたかもしれなかった。
ベジータとの日々。
それはビスナにとっても
かけがえのない日々だったのだ。

左腕を前に。
猫足で立つベジータ。
腰を落とし
ビスナに狙いを定める。
それとは対照的にビスナは
腰を高く
平行立ちで
右こぶしを腰に
左手を前にして悠然と構える。

「来い!ベジータ!」
「ウオオオオオッ」

はじめての組み手。
そして、最後の組み手。
別れの儀式が始まった。
ビスナの気持ちを
ベジータは、知らない。






「聞け」

ビスナが言った・・・。
ベジータはトレーニング室の床に仰向けで倒れていた。
彼の胸はまだ躍っていた。
ビスナと組んだはじめての組み手。
それが彼を舞い上がらせていた。

「明日ダータ星をおとす。」

べジータは上半身を起こした。

「オレやるよ。
あんたの役にたちたい。」
「そうか・・・」
「あんたのためなら死んでもいい。」

やはり潮時だと思った。
べジータを手放すときはいまだと。
ビスナは深呼吸をした。

「貴様と組むのはこれが最後だ。」
「えっ!」

ベジータは思わず声を上げた。

「貴様は次からシシトー様のもとで働くのだ。」
「そんな・・・オレあんたとはなれたくないよ。」
「貴様に拒むことができると思うのか。
貴様はフリーザ軍の戦闘員だ。
命令に従うだけだ。
今晩中に、荷物もまとめておけ。」
「まってよ。
じゃあオレは次からどこの部屋に住むんだ?」

ビスナは平然と答えた。

「シシトー様の部屋で暮らすそうだ。」
「それ・・・
どういうことなの?
オレに
シシトーって奴と寝ろって。
そういう意味なの?」
「命令には従うまでだ。」

べジータは蒼白になった。

「オレはあんたが好きなんだ。
あんた以外に抱かれたくないんだ。
断ってくれよ。
お願いだから、断ってくれよ。」

ビスナはべジータを見た。
恐ろしいまでに冷たい瞳で。

「貴様が俺のことを好きだなんて・・・笑わせやがる。」
「ビスナ!」
「言ったろう、はじめに。
俺は貴様を利用したのだ。
ありがたいことに貴様は十分役に立ったさ。
俺も楽しんだ。
貴様も十分楽しんだだろう。」
「ビスナ!!」

ビスナは唇をゆがませた。
ベジータの胸座をつかむ。
そして、その顔を思いっきり張った。
ベジータの体は大きく吹き飛ばされた。

「大きい口をたたくんじゃない。
貴様は明日の戦闘が終わったら
シシトー様の物になればいい。」

そのときベジータの瞳から
光が消えた。

全身の力が抜けていく。
声が出ない。

嫌だ。
嫌だ。

そんなベジータをビスナは薄笑いを浮かべて見下ろした。

「ベジータ・・・アレがわかるか?」

ビスナの指差す方向には一台の監視カメラがセットしてあった。
ベジータも不思議だと思ってはいたのだ。
いつもあんなにカメラを嫌がるビスナが
今日にかぎってカメラを壊さないことに。

「今は、まだ俺のものだ。」
「あっ!」

組み手で力を使い果たしたべジータ。
ビスナはそのべジータの体を押し倒す。

「痛い!やめろよ」

雑で乱暴なビスナ。
べジータをいたわるそぶりは全くない。
太い腕でベジータの首をしめる。

「がっ・・がはっ!」
「おとなしくしろ!」

そして、ビスナは容赦なく左手でベジータの尻尾をつかんだ。

「ああっ・・・」
「どうだ。」

力が入らない。
尻尾はサイヤ人の弱点だ。
ここを握られると全く非力になってしまう。
ビスナだから
ビスナだったから
無警戒にさらしていたのだ。

「まさか・・あんたがこんなことをするなんて・・」
「甘いな、ベジータ。
弱点は隠しておくものだ。
カメラのほうを見ろ。
誰が今見ているのか。
この尻尾はせいぜい鍛えておけ。
でないとお前はこれから一日何回もこのような目にあう。」
「・・あっ・・くそっ。」

尻尾をつかまれたベジータになすすべはない。
ベジータは歯軋りをした。
ビスナは容赦なくベジータの衣服をはいだ。
そしてカメラに向かってベジータの体を開いた。

「や、やめてくれ!」
「ふん、楽しませてもらうか。」

ビスナはそういうと
動けないベジータをひざの上に乗せ、
何の準備もなく
いきなり彼の体を貫いた。

「ギャアアアアッ!」

ベジータの叫びに耳を貸すことなく
ビスナはひたすら彼をいたぶり続けた。

「やめてくれ・・・やめてくれよ」

・・・気を失いそうになりながら、
ベジータはうなされるようにつぶやき続けた。

その夜。
ビスナの部屋で過ごすベジータ最後の夜。
ベジータは初めて戻ってこなかった。

もうもうと立ち上る煙。
あちこちでちろちろと燃える残り火。
舞い上がった土煙が地上を覆い、
その星をてらしているはずの太陽は見えない。
闇。
夜より暗い闇。
異臭が鼻をつき
何かが崩れ落ちる音だけがする。
スカウタ-の数値だけを頼りに彼は進む。
回りの景色は良く見えない。
足元に広がる屍の山。
生臭い血の臭い。
累々と広がる残骸。
ひとつひとつ確認しながら彼は歩む。
踏みしめて・・・あるく。

べジータはさまよっていた。
たった一人で。
黒髪にべったり返り血を浴び
背中が裂けていた。
唇は乾き、
舌が荒れて割れていた。
黒い瞳は光を失い
焦点をあわせることができなかった。
戦闘が終われば母船に帰還せねばならない。
スカウターからも帰還信号が流れ出ている。
しかし彼はどうしても
この周辺を立ち去ることができなかった。

天をあおぐ。
吸い込まれそうな闇にベジータの心はゆれる。
スカウタ-には何の反応もない。
初めからわかっていたことなのだ。
自分のしていることが無駄だということは。
しかし。
この事実を受け入れることができなかった。
ビスナは死んだ。
もっとはっきり言おう。
ビスナはベジータが、殺した。
このダータ星での戦いで
ベジータはビスナを殺した。
いつものようにべジータはビスナの前にたっていた。
この惑星での戦闘が終わろうとしていたとき。
ベジータはビスナに聞いたのだ。

「あんたはオレのことをどう思っていたんだ。」

・・・・と。
ビスナは言った。
はっきりとした口調で。

「貴様は性欲の対象にしかすぎない。」

・・・・と。

「ぶっ殺す。」
「ほう。
貴様にそれができるのか?
やれるものならやってみろ。」

まだ戦闘が終わりきっていないというのに
二つの魂は戦い始めた。
ベジータの心に闇が広がる。

オレは
オレは
ビスナを信じていたんだ。
あんたのために
この命を捨てる
そのつもりだったんだ!!

ビスナは何も言わない。
まるでベジータの怒り、悲しみを
すべて受け止めようとしているように見えた。
自分を見失ったベジータは強い。
ビスナは自分の危険を考えず
ただひたすらベジータの攻撃を受けとめ続けた。

強くなったな、
ベジータ。
お前は死ぬな。
生きていけ。
お前には
生きていく価値が、ある。

そのとき。
ベジータの背後に
ダータ星の残党が現れた。
傷ついたダータの戦士は
最後の力を振り絞って立ち上がったのだ。

「べ、ベジータ!!後ろだ!」
「ビスナ、死ね!」

ビスナは自らベジータの気弾の中に飛び込んだ。
そしてエネルギーの中を遡り
彼はべジータのもとへやってきた。
ベジータが驚くまもなく
ダータ星の戦士は気を発した。
全く注意を払っていなかったベジータ。
そのべジータの体をビスナのごつごつした手のひらが、押した。

「ベジータ!生きろ!
死ぬな!」
「ビ、ビスナ!?」

閃光。
大音響。
そして熱風。

ビスナの体は
光の中でばらばらに砕けちった。

「ビスナー!!」

ベジータの足元に何かが飛んで
落ちた。





ベジータは足元に視線を落とす。
急に胸が締め付けられる。
息が幾度もとまりそうになる。
何度も何度も唇をかみ締める。
右腕に抱えたビスナの頭部。
もう開くことのない彼のまぶた。
流れる血さえ、もう残っていない。
ベジータは、その場にがっくり膝をついた。
どうしても立ってはいられなかった。

愛する男の頭部を両腕で抱きしめて
べジータは背中をまるめて小さくなった。
冷たい。
信じられないほど冷たい。
いままで自分が経験した、何よりも、何よりも、冷たい。
そのざらざらと毛羽立った表面を掌でなでさする。
自分の頬をこすりつけ彼はその名を呼ぶ。

「ビスナ・・・愛していたんだ・・・。」

ベジータはそれに口付けをする。
何度も、何度も。
そして繰り返す。

「オレを一人にしないで・・・くれ。」

いつしかベジータののどからうなり声が上がり
彼は獣のような形相で天に向かってほえ続けた。

「ウアアアアアアッ!ガアアアアア・・・・・!」

べジータは
生まれてはじめて泣いた。
心のそこから
はじめて、泣いた。



砂塵がおさまって
ダータ星の空にも日がさしてきた。
血と砂にまみれたべジータ。
ゆらり、立ち上がる。
そして
ビスナの頭部を見つめて
ベジータは
つぶやいた。




「・・・オレは死なない。
あんたの分も生きる


でも・・・もうだれも愛せない・・・・」