ビスナはその時期にきていることを知っていた。
べジータを手放すときだ。
今日の戦闘でビスナは確信した。
おそらくベジータが本気を出せば
今のビスナより強いことは間違いなかった。
もう彼に教えることはなくなっていたのだ。
幼いベジ-タはもういない。
あの時。
ビスナはベジータをほおっては置けなかった。
血だらけのべジータ。
彼を抱くことはさすがにできなかった。
ビスナはただベジータの小さい体を抱きしめた。
そして。
その気高い魂を思うと不覚にも泣けてきたのであった。
高すぎるプライド。
それはベジータの宝。
しかし。
死んでは意味がない。

ビスナは決めたのだ。
何とか生かしてやりたいと。
それが指導者の範疇を越えていることはもちろん承知の上だった。
普通でない感情が自分にあったのもわかっていた。

ビスナは軍人だ。
人生の選択肢が二つしかないことを知っていた。
生きるか、死ぬか。
これ以外に何があるというのだろう。
しかし。
その小さな体をその手に抱いたとき、ビスナの心は震えた。
命の灯が消えようとする、まさにその時まで求める強さ。
あくまでも王子らしく振舞おうとする気丈さ。

これがプライドというものなのか?
ベジータを支える?

そうならば
自分には、もう、ない。

ビスナは黙ってベジ-タをメディカルマシーンに入れてやった。
そして、その体が癒されるのをじっと見つめていたのだ。
たった一人で。









ビスナは次の出撃の予定を知った。
そして、いよいよべジータとの別れのときがやってきたのも。
その日がやってきた。
今まで、ベジータに声をかけてきたのは
ビスナより弱い奴らばかりであった。
しかし今度は違う。
ビスナの上官がベジータを求めてきたのだ。
上官は、わざわざビスナを呼び出した。
そしてベジータの所属の変更を告げた。
・・・申し分のない位置である。
ベジータにとっては。
おそらくベジータは立派な戦闘員として
フリーザ軍に利益をもたらすだろう。

自分は立派に役目を果たした。

ビスナは自分で自分に言い聞かせた。

この日がくるのはわかっていたのだ。
ベジータ。
誇り高きサイヤ人の王子。
すさまじい戦闘力を秘め、
神々しいまでのプライドを持つ戦士。
自分ではおそらくこれ以上ベジータを育ててやることはできない。
別れだ。

ふと脳裏にベジータの顔が浮かぶ。
普段は見せないうっすらピンク色に染めた頬。
目を閉じて、ビスナの動きを待つ表情。
滑らかに波打つその背中。
耐え切れずもらす、甘い喘ぎ。

ベジータ・・・
終わりだ。

惑星ダータを侵略する命を受けて
ビスナは上官の部屋を出た。
出撃は明日。
そしてそのあと、ベジータの所属も変わる。

廊下に出るとドアの右側にべジータは立っていた。
感情の読めない、彫刻のような表情で。

ビスナはベジータのほうをちらりと見るとトレーニングルームに向かった。
そのあとを影のようにべジータはついてゆく。
一言もしゃべらずに。

トレーニングルームは大部屋と個室仕立てがある。
個室を使えるのは限られた人物だけであった。

「酸素濃度をさげろ。」

ビスナがいった。
ベジータは黙って従う。
そしてビスナの命令により室温をぐいっと上げた。

「ベジータ・・・いっしょにやろう。」

ビスナはべジータに声をかけた。
ベジータは目を丸くした。

「オレと?」
「そうだ」

ベジータは頬を赤らめた。
こんなことははじめてだった。

「来いよ、ベジータ。
組み手をやろう。」

ビスナには子供がいない。
そういうものに恵まれる機会が今までなかった。
もし自分が
フリーザ軍にとらわれていなかったら。
生まれた惑星でずっと暮らすことができていたなら。
ビスナにも子供がいたかもしれなかった。
ベジータとの日々。
それはビスナにとっても
かけがえのない日々だったのだ。

左腕を前に。
猫足で立つベジータ。
腰を落とし
ビスナに狙いを定める。
それとは対照的にビスナは
腰を高く
平行立ちで
右こぶしを腰に
左手を前にして悠然と構える。

「来い!ベジータ!」
「ウオオオオオッ」

はじめての組み手。
そして、最後の組み手。
別れの儀式が始まった。
ビスナの気持ちを
ベジータは、知らない。






「聞け」

ビスナが言った・・・。
ベジータはトレーニング室の床に仰向けで倒れていた。
彼の胸はまだ躍っていた。
ビスナと組んだはじめての組み手。
それが彼を舞い上がらせていた。

「明日ダータ星をおとす。」

べジータは上半身を起こした。

「オレやるよ。
あんたの役にたちたい。」
「そうか・・・」
「あんたのためなら死んでもいい。」

やはり潮時だと思った。
べジータを手放すときはいまだと。
ビスナは深呼吸をした。

「貴様と組むのはこれが最後だ。」
「えっ!」

ベジータは思わず声を上げた。

「貴様は次からシシトー様のもとで働くのだ。」
「そんな・・・オレあんたとはなれたくないよ。」
「貴様に拒むことができると思うのか。
貴様はフリーザ軍の戦闘員だ。
命令に従うだけだ。
今晩中に、荷物もまとめておけ。」
「まってよ。
じゃあオレは次からどこの部屋に住むんだ?」

ビスナは平然と答えた。

「シシトー様の部屋で暮らすそうだ。」
「それ・・・
どういうことなの?
オレに
シシトーって奴と寝ろって。
そういう意味なの?」
「命令には従うまでだ。」

べジータは蒼白になった。

「オレはあんたが好きなんだ。
あんた以外に抱かれたくないんだ。
断ってくれよ。
お願いだから、断ってくれよ。」

ビスナはべジータを見た。
恐ろしいまでに冷たい瞳で。

「貴様が俺のことを好きだなんて・・・笑わせやがる。」
「ビスナ!」
「言ったろう、はじめに。
俺は貴様を利用したのだ。
ありがたいことに貴様は十分役に立ったさ。
俺も楽しんだ。
貴様も十分楽しんだだろう。」
「ビスナ!!」

ビスナは唇をゆがませた。
ベジータの胸座をつかむ。
そして、その顔を思いっきり張った。
ベジータの体は大きく吹き飛ばされた。

「大きい口をたたくんじゃない。
貴様は明日の戦闘が終わったら
シシトー様の物になればいい。」

そのときベジータの瞳から
光が消えた。

全身の力が抜けていく。
声が出ない。

嫌だ。
嫌だ。

そんなベジータをビスナは薄笑いを浮かべて見下ろした。

「ベジータ・・・アレがわかるか?」

ビスナの指差す方向には一台の監視カメラがセットしてあった。
ベジータも不思議だと思ってはいたのだ。
いつもあんなにカメラを嫌がるビスナが
今日にかぎってカメラを壊さないことに。

「今は、まだ俺のものだ。」
「あっ!」

組み手で力を使い果たしたべジータ。
ビスナはそのべジータの体を押し倒す。

「痛い!やめろよ」

雑で乱暴なビスナ。
べジータをいたわるそぶりは全くない。
太い腕でベジータの首をしめる。

「がっ・・がはっ!」
「おとなしくしろ!」

そして、ビスナは容赦なく左手でベジータの尻尾をつかんだ。

「ああっ・・・」
「どうだ。」

力が入らない。
尻尾はサイヤ人の弱点だ。
ここを握られると全く非力になってしまう。
ビスナだから
ビスナだったから
無警戒にさらしていたのだ。

「まさか・・あんたがこんなことをするなんて・・」
「甘いな、ベジータ。
弱点は隠しておくものだ。
カメラのほうを見ろ。
誰が今見ているのか。
この尻尾はせいぜい鍛えておけ。
でないとお前はこれから一日何回もこのような目にあう。」
「・・あっ・・くそっ。」

尻尾をつかまれたベジータになすすべはない。
ベジータは歯軋りをした。
ビスナは容赦なくベジータの衣服をはいだ。
そしてカメラに向かってベジータの体を開いた。

「や、やめてくれ!」
「ふん、楽しませてもらうか。」

ビスナはそういうと
動けないベジータをひざの上に乗せ、
何の準備もなく
いきなり彼の体を貫いた。

「ギャアアアアッ!」

ベジータの叫びに耳を貸すことなく
ビスナはひたすら彼をいたぶり続けた。

「やめてくれ・・・やめてくれよ」

・・・気を失いそうになりながら、
ベジータはうなされるようにつぶやき続けた。

その夜。
ビスナの部屋で過ごすベジータ最後の夜。
ベジータは初めて戻ってこなかった。