ホタル舞う夜の空 -8ページ目

苗字って?


無事、滞在許可証を更新できた日の夜、そのことをトラちゃん(彼)に報告した。

それがさ、全然知らなかったんだけど、あと1回しか学生ビザ更新できないんだって。
マスターの後でドクターやってるとか、二つ目のStudiumとか全然関係なくって、学生ビザって一律に最長で10年までなんだって。
知らなかったよ。

↑ 本当に全然知らなかった。大体、ドイツに来た時はこんなに長居するつもりなかったし

それを聞いてトラちゃんが答えた。

ふーん、そうなんだ。
じゃあ、ビザが切れる頃には、別の方法を見つけなきゃダメだね!

普段から、仕事はどうしようとか日本に行ってやっていけるかとか、将来の話なんかしているから、トラちゃんが何を言わんとしているかはすぐに分かる。

そうね、ここで仕事見つける、とかね

↑ いけず(笑)


トラちゃんが、それにもめげず、にやっと笑いながら続ける。

〇〇(私の名前)-△△(トラちゃんの苗字)かー

・・・。
ちょっと待って、いつ私が苗字変えるって言った?


↑ 可愛げないですか?

大体、そんな変な名前、嫌だよ。

いやいや、変な名前って言うのは、トラちゃんの名前が変って意味じゃなくってね(汗)

↑ トラちゃんの苗字は、ちょっと薄気味悪い職業(?)をさすので

日本語の名前とドイツ語の苗字っていう組み合わせがね、どうも違和感があって嫌なの。分かる?

それに私、今まで数は少ないけど論文とか出してるし、苗字が変わっちゃったら業績がつながらなくなっちゃうじゃん

↑ 研究職でやっていく能力はないと悟ったので、実はもうどうでもいいんだけど(笑)

それにさ、同じ苗字になりたいなら、トラちゃんが私の苗字になるっていう選択肢だってあるじゃん。その方が他に無くって面白いよ(笑)

↑ ホントに言いました

しかし、トラちゃんも日本語の苗字になることには抵抗を感じるようで、お互い様じゃないですか。

↑ じゃない?

まあ、こんな二人ですから、結婚することになったとしても、別姓でしょうね。

↑ 国際結婚の場合、夫婦別姓が認められています


私は別に良い家柄でもなければ、兄が1人要るので、家を継がなくてはいけないわけでもない。
でも、ある日突然苗字が変わる、しかもこの先トラちゃんの姓に変わるとなると、苗字がドイツ名になってしまうということに、想像しただけでも違和感を感じる。
戸惑いを感じる。

アイデンティティ・クライシス?
そんな大げさなものでもないけど(笑)





滞在許可証更新の巻

5月の中頃のこと。
学生ビザの延長をした。

ちなみに、ドイツ人の多くは、「Visa」という言葉を知らない(フリをして嫌がらせされてるだけかもしれない・・・)
ドイツ語には、「Aufenthaltsgenehming (あうふえんとぅはるつげねーみぐんぐ)」という、ドイツに来たばかりの外国人には到底覚えられないような長ったらしい単語があって、「Visa」はクレジットカードだと思っている人が恐ろしいことに本当に結構居る。

訂正: そう言えば、ドイツ語では、Visiumという言葉がありました。だからVisaはクレジットカードの固有名詞でしかないんですね。でもこのVisiumという単語も、通じないことが多いんです。

この単語、日本語に訳すとなんていうことはない、滞在許可、のことだ。

私にとって、(それにドイツで留学生をしている人達の大半にとっても)2年に一度のイベント。

大学にダラダラ寄生しているおかげで、ビザの延長はいつも問題なく、気が滅入るような待ち時間を除けばいともあっさりと終わってしまう。

それでも毎回、更新の時期が近づくたびに憂うつになり、不安に駆られたりするのは、単身で職も無い外国人として生活する以上は仕方の無いことなんだろう。


今回も、いつものように薄暗く狭い役所の廊下で、どこか不幸せそうで不安そうでイライラした表情の外国人たちに混じって順番待ちをしていた。

彼らが皆、本当に不幸せだとはもちろん思ってない。
ただ、滞在許可の更新に来て廊下に待たされている人達って、やっぱりみんなどこか不安そうだし、あとどれだけ待たされるのか皆目検討がつかない中で、イライラしているもんだ。

さて、次の次が自分の番という時、ふと壁に貼られた張り紙に目が止まった。


滞在許可の更新には、顔写真を持参すること


うそっ
いつから滞在許可の更新に顔写真が必要になったの?


↑ まーた規則を変えやがったな、こら!!

↑ いや、事前に調べなかった私が悪い


でも、だって、ビザに写真なんか入って無いじゃん。


もうすぐ自分の番が回ってくるかもしれないのに、今から写真を撮りに行って、並びなおす気は全然なかった。


顔写真もって出直して来いって追い返されるかもしれない。
でも、ここはドイツだから、一応審査が終われば、後日に顔写真を持ってくるだけで待たずに交付してもらえるかも。

↑ 本当にこういうことが起こりうる

そんな一縷の望みに賭け、半分投げやりで、そのまま待ち続け、自分の番になったのでドキドキしながら部屋に入った。


こういう役所ってたいてい苗字のイニシャルで担当が分かれている。
これまでは、シャキシャキと手際の良いおばさんか、ろくに人の目も見ようとしないおじさんだった。

しかし、担当が替わったらしい、若い男の人だった。
若いっていっても幅は広いけど、多分20代後半から30代のせいぜい前半ってところ。

担当者を見た瞬間、頭に浮かんだのは、

経験が少ないから適当に臨機応変に対応してくれるか、他の頭の固い同僚に聞き回ってガチガチの枠にはまった判断をするか、どっちか。


前の人が出てきたので、部屋に入ると、担当者はまだ前の人の書類なんかを片付けたりなんかしていて、こちらを見ようともしない。

こういう時は、ひたすら静かに辛抱強く待ちつづけたほうが良い。
下手に話し掛けると、二つのことを一度に処理できないドイツ人は、かなりの確率でキレる
そうして相手の機嫌が悪くなると、損をするのは結局こっちなのだ。

役所に限らず、銀行でも郵便局でも、携帯のサービスポイントでも、そうして人を待たせながら、「お待たせしてもうしわけありません」でもなく、悠々と目の前の作業を処理し、同僚と無駄話をし、長電話をする人が圧倒的に多い。

5分くらいはそうしてボーっと窓の外を眺めながら待っていただろうか、ようやく担当者が前の人のファイルを片づけて、私の方に視線をくれた。

So!

↑「さて」って感じかな

さんざん待たせておいて、「so」じゃねえよ!
と、心の中では毒づきながらも、精一杯愛想良くニッコリと笑い掛けて、


こんにちわ!
滞在許可の更新をしたいんです。



と言って、パスポートを渡した。

ここで間違っても、あのー、写真、忘れっちゃったんですけどおなんて、自分から申告してはいけない。


それで、博士論文はどれくらいで終わりそうですか?


これは、毎回必ず聞かれる質問。

私としては、できればあと1年くらいで終わりたいんですけどねえ、うーん、ちょっときついかなあ(笑)

↑ あくまで感じ良く冗談ぽく、にこやかに誠実そうに答えましょう。ここで相手が笑顔を見せれば、もうこっちのもの。

ここで胸を張って、「あと〇ヶ月で終わります!」なんて言ってしまったら、その通り〇ヶ月+αの滞在許可しか出ないこともある。

↑ っていうか、私は本当に絶対に終わらないんだけど(笑)


収入を証明するようなもの、持ってますか?


これもルーチン。
定職を持たない学生は、奨学金をもらっている証明とか、十分な貯金がある残高証明とか、親による「毎月これだけ送金します」っていう一筆が無いと、滞在許可が出ない。

私は、持って来ていた大学研究室との雇用契約と、銀行の残高証明をおそるおそる担当者に渡した。


すみません、これ、ちょっと古いものなんですけど・・・ (←4月1日付け、つまり3月末の残高)


しかし、担当者は、残高証明には興味を示さず、雇用契約だけコピーを取った。


あ、それも今月末までなんですけどね(笑)


とは、さすがに言わなかったんだけど、彼は気づいていたんだろうか・・・。


さていよいよ山場、担当者が滞在許可証を発行する準備をしながら、こちらに振ってくる。

パスポート写真、持って来ました?


さあ、ここが度胸試しです(笑)

↑ 私、小心者なので


「知りませんでした、一体、いつ誰がそんなこと決めたんですか?」で論点ずらしゴネ戦法

↑ コレ、日本でやったら嫌われるかもしれないけど、ドイツだと結構通用するんです(笑)ごねたモン勝ちの社会ですから。


写真、ですか?

えーーーーー、と、ん~、今日は残念ながら持ち合わせてませんねえ、

↑ あくまでも、私の落ち度ではないというスタンスなので、「ごめんなさい」は絶対に言わない!慣れるまでは、これがなかなか難しいものです。日本人だから、つい二言目には「すみません」って言いたくなりますよね。

・・・いつから滞在許可証更新するために写真が要るようになったんですか??


↑ 少し大げさなくらいに、「聞いてねーぞ、おい」っていう驚き呆れた表情をつけて、演出します。しかし、あくまでも感じ良く(笑)


担当者氏は、思わず吹き出したように笑いながら、


今年から、変わったんですよ


と、やわらかく答えてくれた。
う~ん、手ごたえあり!

私のファイルを端から端まで見ていた担当者氏が、一番初めの方に挟まっていた私の古い証明写真をつまみ出してきた。
記憶には全然無いけれど、この街で初めて滞在許可を申請した時に提出したものらしい。


コレでも良いですか? 私は構いませんけど?


あ、でもそれ、少なくとも6年は前のモノですけど、

もちろん私も構いません!

(えー、えー、構いませんとも)




こうしてめでたく、何事も無く、何度目かの滞在許可証更新がその日一日で終了した。
無事、2年もらえました!

優しい担当者氏で、ついてた。


基礎化粧品遍歴(番外編)

5月30日付けの牛田氏のメルマガの記事、「脱・シャンプー&リンスの秘密」 と、そこで紹介されているRyu氏のWebサイト は、さらに新しい展開をもたらした。

シャンプーが皮脂を取りすぎてしまうから、頭皮が必要以上の皮脂を分泌して汚れやすくする。
本来、シャンプーもリンスも必要ない。
皮脂の過剰な分泌が収まるまで3ヶ月くらいかかるけど、その後は落ち着く。


お酢を薄めて髪を洗う。
または、
石鹸で洗って、薄めたお酢をリンスにする。


これは本当に衝撃的だった。


それを読んでいて思い出したことがある。
以前に書いたけど、シベリア中部のバイカル湖に3週間行った時、
毎日テント暮らしで、体を洗うのはバイカル湖、と知っていた私は、シャンプーを持っていかなかった。
シャンプーはバイカル湖の水を汚染してしまうと思ったから。
固形の普通の石鹸と、たまたま日本から持ってきていた石鹸で作られた洗顔フォームで、体も顔も髪も洗うつもりだった。

体や顔が洗えるんだから髪だって洗えるだろう。

あまり深くは考えなかった。

で、実際洗ってみた。

すると、次の日には既に脂っぽくベタベタ、しかし髪はゴワゴワで、なんとも気持ちが悪かった。
その時はじめて、シャンプーっていうのは洗浄力が強いんだ、頭皮の皮脂の分泌は体や顔よりもずっと多いんだってことがうっすらと意識の中に入ってきた。

結局、エクスカーションの間、普通のシャンプーを持って来ていた他の参加者から借りて過ごし、バイカル湖の水質汚染にしっかりと荷担して帰ってきた。

そんな根性なしの私だから、メルマガを読んだだけでは、自分がシャンプーを止められるとは思わなかった。
洗顔フォームで洗った次の日にベタベタになった髪の感触を思い出すだけで、すごくイヤだった。
それでも、Ryuさんや奥様のRyokoさんのWebサイト を読み、合成界面活性剤について調べていくうちに、その根拠に納得し、段々その気になってきた。

実は数年前から、頭皮に吹き出物ができるようになって、最近では常に何箇所かに小さな吹き出物がある状態。
触るとチクッと痛いって言うだけだけど、結構気になる。
だからシャンプー選びには気をつけていたし、洗いすぎにも気をつけていたんだけど、良くも悪くもならないので、気になってもいた。

それに加えて好奇心と、面白半分、怖いもの見たさなんかも手伝って、早速実行(笑)

まだ使いかけのシャンプーがあるので、使う量を減らしてさらに薄めて使い、その後に薄めたお酢でリンス代わり。
少量のシャンプーを洗面器で薄め、頭からかぶって、指でマッサージするようにこすって、流すだけ。
それにも関わらず、髪が乾いてみると頭皮も意外とさっぱりしている。
シャンプーの洗浄力ってすごいらしい。

以前は洗った後、髪がフワフワと広がって、頭が1.5倍は大きく見えたけど、それがなくなった。
髪がしっとりと落ち着いていて、いい感じ。
それでもこれで二日間くらいは、普通にもつ。

そう言えば、普通のシャンプーにお酢のリンスって組み合わせ、どうなんだろう?

もう数週間経つけど、今のところトラブルは無い。
頭皮の吹き出物は、完全になくなってはいないけど、少なくなった感じがする。

はじめの数回は、濡れた髪がキシキシして指に絡みつき、すごく嫌な感じだったけど、今ではそれもなくなった。

最近はさすがに暑いので、毎日のようにシャワーを浴びてしまうけど、昨日はシャンプーで洗ったから、今日はお湯とお酢だけという感じ。

もともとめんどくさがりで髪を洗うのが嫌いだった私は、ムキになって洗わなくても良いんだってことが分かって、気が楽になった(笑)




美談(?)の結末(涙)

jhasuminさんのドイツ,ピアノ日和 で、ワールドカップの裏側で発生している強盗などの犯罪 について思い出した話がある。


同居人のDに最近聞いた話なんだけど。

Dの同僚の知り合いが、ある日、いつものように家に置いておいた自転車を盗まれた。
この場合、家というのは、家の前の公道ではなく、一軒家の門扉の内側だ。


ちなみに、自転車が盗まれるって、この街では全然珍しい話ではない。
実際に私も今までに2台ほど盗まれたことがある。
Dはもっとすごい。
少し前に自転車を盗まれて、仕方なく最近になって「中古自転車市」に買いに行ったら、なんと自分の自転車が修理して売りに出されているのを発見したのだ。
長い交渉の上、タダで取り返してきたDはエライ!


話を自転車を盗まれたDの同僚の知り合いに戻すけど、
警察に届け出て数日後、帰宅してみると、なんと自転車が戻ってきている!
なんだか分からないけど良かった、と思っていると、郵便受けの中に手紙を見つけた。

その手紙には、

先日、この近辺を車で走っている時に車が故障した。
どうしても急ぎの用があったので、お宅の自転車を勝手に借用してしまった、大変申し訳ない。


と書かれており、しかも、

そのお詫びとお礼に、是非受け取って欲しい。

と、コンサートのチケットが2枚同封されていた!

なんて丁寧でちゃんとした人がまだまだ居るものだ、世の中捨てたモンじゃない

と感心し、ありがたくコンサートに出かけた。


そしてコンサートから戻ってきてみると、


空き巣狙いの泥棒が入った後だった(涙)



コンサートのチケットが同封されていただけだったら良い話で終わっていたのに。
でも、うっかり自宅に居て鉢合わせたりしなくて良かったのかも。


基礎化粧品遍歴(その3)


今年に入り、またしても新しいコスメに対する好奇心の熱に浮かされた私は、
前々から目をつけていた、〇ディ・ショップのビタミンC美容液を買うことにした。
30ユーロと(貧乏人の私には)少々お高いために、なかなか手を出せずにいたのだけど、我慢の限界だった(笑)
心を決めてショップに行くと、お目当ての美容液は売切れだった。
そしてここで、売り子のお姉さんから、別の美容液を進められた。

新製品で、今まででは最高の保湿効果、24時間続く、ココナッツミルクなどの植物成分をたっぷり配合している、ビタミンCの美容液よりも質が高い

などの売り文句で口説かれ、本当は買う気なんてなかった私が、どこか違和感を感じながらもつい手を出してしまった。

これが悪かった。

少量を手にとって顔全体から首筋まで薄く伸ばして就寝。

翌朝、起きて顔を洗ってみてビックリした。
両頬の下半分から首にかけてが、ガサガサになっていた。
ニキビができることもほとんどなく、べたつくことも無ければ乾燥したりすることもすることもない、顔の中で唯一トラブル知らずの部分であった頬の下半分が見事に一面ザラザラ

これは凹んだ。

(奮発して買ったつもりの)美容液が肌に合わなかったのは一目瞭然。

さらに凹んだ。

泣きそうになりながら、ジェル状の肌に優しい(と思っていた)洗顔フォームで、念入りに洗った。

ら、
その後から、強烈な痒みが襲ってきた(涙)

もう情けないやら、悲しいやら。

その部分は乾燥しているようだから、それまで毎日使っていた美容液を塗った。
それでも日中、気が狂いそうになるほど痒かった。
掻くと傷つけて悪化させてしまうという理性だけは辛うじて働いて、できるだけ掻かないようにしていたが、我慢できずに叩いたり、冷たい水をつけたりしていた。

この時はまだ、美容液にかぶれただけなんだから、使用を止めれば、1日で良くなるだろうと思っていた。

実際、日中、気が狂うほど痒くて、集中力をそいでくれた肌も、家に帰る頃には少し治まっていた。

なのに、夜、いつものように洗顔してベッドに入る頃にはまた、さらにひどい痒みが襲ってきた。

眠いのに痒くて眠れない、イライラする、痒い部分を思いっきりひっぱたく。

隣でトラちゃんが心配するくらい、ヒステリックになっていた。

こんなことが3日も続き、一週間が経とうかという頃になってくると、さすがに怖くなってきた。

もうずーっと治らないのかもしれない(涙)

救いを求めて、インターネットで検索している時に、あるサイトが引っ掛かった。
もうどのサイトだったか忘れてしまったけど、そのサイトには、
洗顔料に含まれている合成界面活性剤が肌に合わずにトラブルを起こし、それでも気づかずに悪化させている人が結構多い
というような内容が書かれていた。

その瞬間、私の頭の中で、急に霧が晴れてすべての輪郭がはっきりとしてきたような気がした。

美容液にかぶれてからというもの、治まりかけていた痒みが顔を洗うと、急にひどくなるということを毎日繰り返していた。
そんな感じを持ちながらも、まさか洗顔料が肌に合わないわけが無いと、頭で打ち消していたのだ。

さらに、インターネットで集めた情報の中に、
保湿クリームが逆に肌を乾燥させる
というのがあった。
どのサイトだったのか覚えていないし、どんな根拠がつけられていたのかも正確には思い出せないが、読みながら、高校の理科で習った浸透圧について思い出したことがうっすらと記憶に残っている。
細胞膜を通じて濃度の低い(水分が高い)方から高い(水分が低い)方へと、双方の濃度が同じになるまで水分がやり取りされる。
つまり、塩鮭を作るのと同じ原理か。
そんな感じ。

これは、以前にこってりした保湿クリームをつけて寝て、朝起きると肌がカラカラに乾燥していた経験からも、少なくとも私にとっては説得力があった。

さてその日の夜、サイトに書かれて通り、かぶれている部分には洗顔ジェルがつかないように気をつけて、ぬるま湯だけで洗い、ベッドに入った。
すると、ほとんど痒くならない。
朝起きて、またぬるま湯だけでそっと洗い、化粧水と美容液なども薄ーくだけつけてみた。
その日、日中もほとんど痒みを感じることがなかった。

こうして、1週間近くも苦しめられていたかぶれが、何もつけないことであっさりと数日で治ってしまったのだ。


その後、牛田氏のWebサイト に出会って、「何もつけない」を即日実行しようという気になったのは、こんな前振りがあったせいもある。



基礎化粧品遍歴(その2)

コスメを探してあてもなく彷徨う旅人になったきっかけは、私にとっては運命的な出会いだった。


日本に居た頃は、洗顔フォームを使うと痒くなるので、大分長い間、石鹸で洗顔していた。
同じく痒くなるので、ファンデーションもごくたまにしか使わなかった。
口紅を塗れば、数日で皮がむけてきて、唇がボロボロになったので、普段は色つきのリップクリームくらいしか使わなかった。

そのおかげでクレンジングを使う必要もなく、石鹸で洗えば十分だった。
洗顔後に、できるだけ安くて痒くならない化粧水をパシャパシャとつけて、冬に乾燥する時には母の使っている乳液をちょこちょこ使うだけだった。


それがドイツに来てガラッと変わってしまった。

生まれて初めての一人暮らし+言葉が理解できないくせに学生生活は、結構ストレスの溜まるもので、本人も認識していないくらいのダメージが一気に顔からふき出していた。

いや、毎日のように勉強しながらポテトチップス一袋とチョコレート一枚食べて、晩御飯代わりにしてたから、当たり前かも(汗)

30代に入って初めて、顔に常にニキビがある状態。
一つ治るとまたすぐに新しいのが出来てくる。

思い・思われ・振り・振られ(うふ♪)

なんて可愛いことを言ってごまかしておける程度でもなければ、そんな年でも全然なかった(笑)

さらにこのニキビがなかなか治らない上に、腫れが引いた後も赤みが残って、そのうち硬くなってしまったりしていた。
頬のど真ん中に、赤黒い硬いニキビの痕。

これは相当に気が滅入った、ホントに。

さらにそれに加えて、肌に合わないからファンデーションが使えないくらいの敏感肌(と、本人は信じていた)だったので、ドイツは湿度が低いから、肌が乾燥しているに違いない、という強迫観念と、
30代に突入してからボチボチ出てきた日焼け後のシミが、「手入れを怠ったせいだ」と、私を精神的に追い詰めた。

学生生活の方でも、マスターコースも大詰めに入り、論文と試験のプレッシャーに押しつぶされそうになっていたストレスの絶頂期。
私の肌の状況は史上最悪の状況に陥っていた。

その頃の私のスキンケア・グッズといえば、
ドラッグストアで買ってきた化粧水と、保湿に重点をおいているデイ・クリームとナイト・クリーム。
日本では使ったことがないような、コテコテの重たいクリームだった。
それにたまーに、やはりドラッグストアで買ってくる保湿パック。

洗顔後にしっとりタイプの化粧水をたっぷりと使った後、そのこってりしたクリームをこれでもかというくらいにすり込む。

なのに、なのに、こんなこってりしたオイルたっぷりなクリームをコネコネと塗りこんでいるにも関わらず、朝起きると私の肌はカラカラに乾いている。

怖いのでさらにクリームを気合を入れてすり込む。

この繰り返しだった。

そんなある日、いつも使っている保湿クリームが無くなり、買い足してなかった。
恐怖心に駆られて戸棚を引っ掻き回していたら出てきた、いつだったか誰かからもらったランコムの試供品セット。
その中にあったVitabolicという美容液を、おそるおそる試してみた。

すると、あんなに治りの遅かったニキビが翌朝には腫れが引いていた。
数日すると、頬の真中に居座っていた赤黒い硬いニキビ痕も、うっすらとしてきて、1週間もしないうちに消えてしまったのだ。
これには驚いた。
それに、こってりしたクリームをすり込まなくても、肌が乾燥することは無かった。
本当に、踊りだしたいくらい嬉しかった。
過去数年、こんなに肌の調子が良かったことは無かったんだから。


早速街に、ランコムの同じ美容液を買いに行く。
実は、普通のドラッグストアにあるのかと思ってた(笑)

いや、あるんだけど、大きなドラッグストアのブランドコーナーに。

化粧品・香水専門店で見つけて、価格におののき躊躇していると、
売り子のお姉さんが話し掛けてきた。

ランコムのこの美容液を探してると言うと、
人の顔を品定めするようにジロジロと眺めていたお姉さんが口を開いた。

あなたの肌には、オイルフリーの美容液じゃないと絶対にダメですね。
ランコムのこれも良いけど、もっと合うのがありますよ。
お見せしましょうか?
こちらに来てください。

連れて行かれた先はシャネル。

このHydraSerumっていうのがオススメです。
オイルフリーだし、ビタミンがたくさん含まれてます。
ビタミン爆弾です。

この「ビタミン爆弾」って言葉がやけに頭にこびりついている(笑)

いいお値段だけど、藁にもすがる思いだった私は、クリスマスも近いことだし、自分にプレゼントだと言い聞かせて、この美容液を買った。


こうして始まった私の、基礎化粧品探し、放浪の旅

日本では使ったことのないようなラインアップで、化粧品、美容液、日焼け止め乳液などを重ね塗りし、気が向くとインターネットでコスメ情報を検索したりするようにまでなっていた。


じゃあなんでシャネルを使いつづけないかって?

効果があるのは分かるけど、高すぎ(汗)
空港のDutyFreeで大分安く買えるんだけど、それにしても、やっぱり高すぎ(涙)

1本で結構持つから常備してはいるけど、どうしても調子が悪い時のために持っている、精神的な支えみたいな部分もあって、冬以外、普段はあまり使ってない。

最後の切り札として置いておいて、もっとお手ごろ価格な美容液で良いのを探していた。

基礎化粧品遍歴(その1)

実は私、ドイツへ来てからつい最近まで、コスメ探し放浪者だった。

肌に合う基礎化粧品が見つからず、色んなものを次から次へと試してた。
といっても、高いものは買えないので、ドラッグストアで売られているようなお手ごろ価格のものをとっかえひっかえ使っていた。


そんな私が最近行き着いた先が、「何もつけない」

ことの始まりは、いつものようにインターネットのとある掲示板で見かけた書き込みからたどり着いた、Webサイトだった。

「秘密の化粧品」

何もつけないのが肌には一番いい。

化粧品や洗顔料などに含まれている合成界面活性剤が、肌を荒れさせ、強力な洗浄力は本来肌を保護するのに必要な皮脂や、常在菌まで除去して肌を無防備にしてしまっている。

化粧水や美容液は肌にしみ込まない。

化粧品は薬用という表示があっても薬ではないから、効果が出るようには出来ていない。効果が出るくらいの濃度で成分が配合されているならば、化粧品ではない。

などという言葉にひどく衝撃を受けた。

それでも、「何もつけない」を実行しようとは思わなかった。

だってそんなの10代のみずみずしい肌なら平気かもしれないけど、
私はもう30代も半ばだし、そんなことしたら大変なことになっちゃう


と思ったから。
ところが、メルマガ読者とのやり取りの中で、同じ質問が投げかけられ、主催している牛田氏がそれに答えている部分を読んで、急に関心が湧いた。

肌は年齢とともに衰えない。
肌の再生力は、年齢によって激減したりはしない。

皮脂量や角質水分量は年齢とともに低下しない、加齢によって低下するのは弾力性のみ。
あるのは個人差だけ。

このくだりは、本当に衝撃的だった。


Webサイトに保存されているメルマガのバックナンバーを一気に読み終えた頃には、
ほとんど好奇心から、「何もつけない」を実行してみようと心が決まっていた。


そして、その晩から即実行!

洗面所にいつも置いてある普通の石鹸で顔を洗う。
ここでまず少し勇気が要る。
昔はそうして毎日顔を洗っていたのに、変なものだ。

石鹸で洗うと顔が突っ張る、皮脂を取りすぎるから乾燥しやすくなる、洗顔フォームは保湿成分が配合されているから肌に優しい、などの謳い文句が、頭の中を駆け巡るからだ。

タオルで水分を吸い取ると、思っていた通り、やっぱり突っ張る。
乾燥しやすい頬の真中あたりが、かさついて不安になる。
でも我慢。
ここでも勇気が要る。

そのままベッドに入る。

かさつく頬が気になって、何度も指で感触を確かめてしまう。

でも我慢、我慢。

そして、次の朝。

頬は、美容液などを塗りたくっていた時と同じように、普通にしっとりしていた。
Tゾーンが脂っぽくない分、サラッとしているくらいだ。


その日から、私の「何もつけない」は、もう2ヶ月近く、ほぼ毎日続いている。

ほぼ、っていうのは、肌の調子によって、特に乾燥している部分に美容液をつけたり、つけてから5分くらいしてからまたお湯で洗い流したり、牛田氏がメルマガの中に何度も書いているように、化粧水を部分的に使用したりしているから。

肌には個人差があるって牛田氏も強調しているし、絶対に何もつけちゃいけないって思うとプレッシャーになるし、気楽にやらないと続かないからね。

メルマガ読者からの驚きの反響として、肌の調子が良くなった、なんていうのがよく紹介されているけど、

私は正直なところものすごく良くなったという感じはない。
ただ、肌の調子が以前とあまり変わらずに悪くならないことに驚いている。
あんなに色々重ね塗りしていたのを、ある日突然、本当にもういきなり止めたのに、肌の調子が変わらない。
部分的に少しかさついたりはするけどそれだけ。

少しでも肌の調子が良くなるように、老化しないようにって気を使っていたのに、なーんだ、全然効果無かったのね

っていうのが、今のところの正直な感想(笑)

ピアノ・コンサート

先週の金曜日、街のコンサートハウスで行われたピアノのコンサートに行って来た。

ピアニストは、アルフレッド・ブレンドル(Alfred Brendel).
名前からドイツ人だとばかり思っていたら、チェコ出身、クロアチアで育った、オーストリアのピアニストだとか(Wikipedia )。
複雑。


ちゃんとしたピアノのコンサートなんて行ったのは初めて。

事の発端は、先々週のある日。
友人Cのところでお寿司を作って食べていた時に、
Cと彼女のパートナーJが誘ってくれた。

ピアノのソロコンサートなんて、高いんだろうなあ

と、他人事として聞き流していた耳に、突然入ってきたJの言葉。

彼は、この時代、世界で最も優れたピアニストの一人だよ

そんなこと言われちゃったら、聴いてみたくなるじゃないですか(笑)

幸い、文化支援政策が行き届いているドイツでは、コンサートは日本ほどは敷居が高くない。
さらに、学生をコレでもかと優遇するお国柄、学生割引が(いい年して大学に寄生しているこの私にまで)通用する!
下から5段階くらいのチケットが、一律25ユーロだった!
25ユーロまでなら出せるけど、それ以上なら諦めると決めていた私には、天の思し召しとしか思えなかった。

ということで、同行することになった。

街のコンサートハウスは、収容人数は1000人を軽く越えるだろうと思うんだけど、チケットは1週間前でもう既に完売に近い状態だった。
一番良い席なんて80ユーロ以上もするっていうのに、そんな席までが売り切れていた。
残っていたのは、1階席と2階席の一番後ろの方が10数席と、バルコニーのいくつか。

いやあ、本当にすごい人らしいと、期待も高まらざるを得ないってモンだ。
↑不謹慎!

当日コンサートハウスについて、2階の自分達の席から見下ろしてみてさらにビックリ。
客席が、ホントに見事に埋まっている(驚!)
コンサートハウスには、街の交響団のコンサートとかオペラとかミュージカルとかで何度か行った事があるけれど、こんなに本当にビッシリと人で埋まっているのを見たのは初めてだった(!)


コンサートは、文句なし、素晴らしかったです。

休憩前は、ハイドンとシューベルトの組曲(曲名は分からん)
休憩後は、モーツァルト2曲とハイドン(曲名は分からんのよ)

シューベルトは、ちょっと眠かったけど、モーツァルトと最後のハイドンでは、もうホントに、うっとりと聞き惚れた。

ピアノってあんなに色んな音が出るだな~。

静かで優しい音から強くて堂々とした音、激しく荒々しい音

可愛らしかったり、寂しそうだったり、朗らかと楽しそうだったり、哀しそうだったり、安らかに満ち足りているようだったり。

まるで生身の人間の歌声のように、色んな表情があった。





煙突そうじ屋

ほんの数日前のこと。
いつものように家に帰ってくると、家※のドアに張り紙がしてあった。
※私の住んでいるアパートメントは一戸建ての家に入っていて、家には全部で3世帯が住んでいる。その家のドア。

『Schornsteinfeger* kommt 』
*しょるんしゅたいんふぇーがー

煙突そうじが来ます。


ほお。
またしてもそんな時期か。

それはいい。
しかし、

『5月18日、10時~12時の間』

いきなり今週の木曜日に来ますって言われても・・・。

大体、10時~12時っていう、この大雑把さは何?

主婦の居る家庭なら良いけど、
みんなが出払っている家庭だってたくさんあるはずなのに。

どうせなら8時くらいに来てくれれば、出勤時間を少し遅らすとか何とかして調整もできるけど、
10時~12時の間に来ます、って言われたら、午前中まるまるつぶれてしまうじゃないの?!

私が住んでいる家の構成といえば、

1階: Jは離婚していて、一番下の娘と二人暮し。娘は学校に通っているけど、もう高学年なので(多分16歳くらい)お昼に帰ってくるわけではなく、帰宅時間は不規則。Jもフルタイムで働いてる。
2階: Lも離婚していて、一人暮らし。管理職らしく、フルタイムで働いている。
3階: 私とDがシェアしてる。Dは医療関係の職場でシフト制で働いているので、遅いシフトの時は昼くらいまで居るけど、木曜日は早番。数日前に言われたって、シフトチェンジは不可能。

となれば、こういう事態にフレキシブルに対応できるのは、やっぱり、大学の研究室に寄生している私だけでして・・・。

良いんだけどね、別に。

でも、張り紙一枚でいきなり日時指定、しかもアバウトな枠組み指定。
ちょっとそれって横暴じゃない?

ということでその夜、トラちゃん相手に文句炸裂

張り紙一枚で、人を何時間も拘束するってひどくない??
普通にお勤めしてる人はどうすんのよ?!
煙突そうじのために
日本人ならお勤め帰りの人が帰ってきたくらいの時間とか、週末とかに来ると思う。

↑むかつくことがあると、決まって日本のサービス精神を持ち出して、ドイツのサービスの悪さに悪態をつくヤツ(笑)

お勤めの人が帰ってくるような時間や週末は、煙突そうじ屋だって休みだよ(爆)

↑ここはドイツです。他の国の理屈は通用しません。

でも、だから、それがサービスって言えるの?って、言ってんのよ(怒)!!

いや、問題なのはさ、半年に一度、煙突そうじをしなければいけないって法規制がかかってるんだよ。
だから、世帯の方でも煙突そうじ屋に来てもらわないと困るんだよ。
それにね、今のところ煙突そうじの業者は地区ごとに割り当てられているわけ。
競争がないの。
だから、彼らの都合で仕事ができるんだな。


、、、でも、その時間帯にどうしても都合がつかない場合は、電話して個別に日時を約束できるはずだよ。
張り紙にそう書いてあったでしょ?

え・・・、そ、そうなの?

↑張り紙はきちんと隅から隅まで読みましょう。


と、いうわけで、
電話して日時を約束するのは面倒だし、結局私が午前中家に居ることになった。

↑簡単に都合つけられるんだから文句言うな!


そして今朝。
ドイツ人は、来るといったら絶対に来てくれるからそれはそれでいいんだけど、
10時~12時の間に来ますってことは、11時45分に来るってことも十分にあり得る。

いつ来るか分からないのを待ってるのって結構疲れるのよね~

なんて思いながら、サルサの音楽をかけ、髪を洗い、洗濯機を回し、たっぷりのミルクを泡立ててカプチーノをいれて過ごしていると、
↑文句言いつつも、かなりくつろいでいる

10時半を回ったところで家のベルが鳴らされた。

お、早いじゃん♪

階下まで出迎えに降りてみると、なんと、若いお姉さんでした。

Schornsteinfegerin / しょるんしゅたいんふぇーがりん
きゃー、すてきー♪
しかも愛想がよくって、真面目そうで、かなりイイ感じ。

それだけですっかり機嫌が良くなった、単細胞な私。

重たそうな大きな道具箱と小さな道具箱と、それに煙突そうじに使うブラシを持って来ていた。
古い写真なんかによくある、柄の部分がすごく長くって、それを巻いて肩に掛ける、あのブラシ。

職人道具大好きな私には、それはとっても魅力的で、思わずうっとりと見惚れていた。


煙突そうじ屋というので、煙突そうじだけするのかと思ったら、
まずはバスルームのガス湯沸し機の点検から始まった。

バスルームのボイラーは異常なし。
その後、屋根裏に上がって煙突そうじ。

ちなみに、私たちのアパートメントには、暖炉は無い。
したがって、煙突とは無縁。

煙突が必要なのは、暖炉を持っている1階と2階のアパートメント。
でも、煙突そうじには、私たちのアパートメントを通って屋根裏に上がらなくてはならない。
なんか、変なの


訂正:
トラちゃん曰く、通常、煙突一本につき、暖炉やオーブンは1個だそうです。

↑構造など、普通に考えてみればそうですね、反省。

ってことは、このたいそうな煙突の恩恵を受けているのは、1階のアパートメントだけ・・・?
煙突掃除のたびに、屋根裏への通路に使われるうちのアパートメントって・・・。

ま、いいか。別に害も無いし。

↑物事はあんまり深く考えたくないO型です。


煙突そうじ屋さんが、屋根裏で作業している時に、たまたまキッチンに入ると、壁の中から、ゴシゴシという音が響いてきた!

そうか、このキッチンの出っ張りは、煙突だったのか。
そうでなくても小さなキッチンがこの出っ張りのせいでますます狭くなってるんだよな。
私たちは煙突なんて必要ないなのになー・・・。
大体、煙突そうじの音が、室内までこんなに響いてくるって、どういうことなの?
壁薄すぎるんじゃないの?
大丈夫かいな。

などと、思っているうちに、煙突そうじも終わり、煙突そうじ屋さんは、地下室へと降りていった。


各アパートメントのガスの湯沸し機の点検と、煙突そうじ、そして地下室にあるヒーター用のボイラーの点検
と、どれをとっても毎日の生活にとって、とても重要な作業なのだった。


博物館の長い夜 - 楽しみ方イロイロ

博物館の長い夜のチケットは、都市内・都市間交通の乗り放題チケットとのコンビになっていると、一番最初の回に書いた。

この日、もう現役を引退している古いモデルの路面電車を、博物館路面電車として走らせていた。

その夜、町の片方の端から別の端まで市街地を大きく横断して移動していた私たち。
たまたま移動に利用した路面電車が、運良くこのレトロ路面電車だった。

残念ながら写真は無いんだけど、古いモデルは、床が高くて幅が狭いので、遠くからでもすぐに分かる。
色も、レトロななんとも表現し難いグリーンで、シックな装いだった(と、記憶している)。

内部の床は木が張られていて、温かい。
こういう場合もフローリングって言うんだろうか?
狭い車内には、小さ目の二人掛けのベンチシートと4人のボックスが配置されていた。

驚いたことに、4両編成くらいの各車両に、車掌のような帽子をかぶった人が一人ではなく二人ずつくらいいて、乗り込むと私たちの「博物館の長い夜」コンビチケットを確認した。

と、思ったら、乗客の乗り降りが済んで電車が動き出した途端に、車掌さんが話し掛けてきた。

お飲み物はいかがですか?

へ?お飲み物?お飲み物ってお飲み物??

と、ちょっと混乱しながら周りを見回すと、ドアに一番近い席で向かい合って座っている品の良い年配のカップルがニッコリと笑いかけてくれた。

彼らの手には、スパークリングワインの入ったグラス。
ご機嫌そうな二人は、こちらに微笑みながら、グラスを少し傾けて、

Zum Wohl!つmヴぉーl/健康に(乾杯)!

レトロ路面電車が、動くバーになっていた。

博物館路面電車にガタガタと揺られながら、お酒を飲んで会話や窓から見える夜の街の風景を楽しむ。

いかにもドイツ人らしい、お金はかけない豊かな時間の過ごし方だ。

私たちは、次の教会へ急いでたから、何も飲まなかったけど。
うーん、残念!