HOME BY DAWN | walkin' on

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アナログレコードのレビューを中心に音楽に関するトピックスを綴っていきます
 歌詞の和訳や、時にはギターの機材についても投稿します

レコード番号:P-11477(Warner Bros) 1984年(国内盤)

 

 

 ジョン・デイヴィッド・サウザー(John David Souther)、人よんでJ・D・サウザーのアルバムを、コンプ目的で買い集めるのは簡単です。

 なんせ1972年のセルフタイトルのデビュー作から48年経った現在でもオリジナルスタジオアルバムはたった8作。しかもそのうちの、”IF THE WORLD WAS YOU”から”TENDERNESS”までの4作は2008年から2015年にかけて固め打ち(?)されており、それより前の作品はこの”HOME BY DAWN”(以下HBD)という偏りかた。よくもまあ、このようなスカスカなディスコグラフィのソングライターがいたものだと感心さえしてしまいます。

 

 

 このHDB、実は1年以上前に入手していたのです。たしか大阪市内の中古レコード店で見つけたように記憶しています。

 

ジャケット裏。2曲分の歌詞に、ネーちゃんといちゃつくJ・D。

ライナーには歌詞と、なおもいちゃつくJ・D。

その裏は日本語ライナー。解説と訳詞。

帯もありまして、

『ハートの歌が聴こえるかい?』(`ω´)

裏にはJ・Dの過去作と

同じくワーナーのクリストファー・クロス。当時の最新作は”ANOTHER PAGE”でした。

 

 

 

 

 このアルバムを聴きながら、ボクにしては珍しく他のブロガーさんの、このアルバムのレビューをネットで探してみました。 

 するとこれが、見事なまでに賛否両論というか、彼らしくてとても良い!という声もあれば、彼らしさの感じられないありきたりのロックのアルバム、と嘆く声もみられました。

 

 

 ボクとしては、前作”YOU'RE ONLY LONELY”の制作環境のまま、デビュー作の作風に戻したアルバムだと思っています。

 

 J・Dの楽曲をはじめから聴いている方ならお分かりいただけるように、もうホントに素人芸のようだったデビュー作から7年後のYOU'RE~で、それなりにヒットが狙えるぐらいのクオリティを備えたアルバムをリリースするところまでになります。

 ところが、これはJ・Dが成長したのではなく、レコード会社の要望に沿うかたちで当時の制作陣の路線に乗った、というのが実際のところだったのではないでしょうか。

 

 HBDではコーラスワークのほとんどに加えドラムもJ・Dが担当しています。同じくコーラスワークとギターを自分でこなしたデビュー作と同じ制作手法に戻った感があります。

 

 タイトルトラックのような、やや無理して元気よく歌うロケンローと、その反動で(?)しんみりとピアノに向かって歌う”All I Want”のようなバラードとの2本立てのごとき構成も、YOU'RE~とデビュー作の強引なカクテルのようで、混ざりきっていない感触が残ります。

 

 

 

 

 かのトルバドール・サーキットらしくこのHDBにも多数のゲストが参加しており、ドン・ヘンリーティモシー・B・シュミットの(当時は解散していたので)元イーグルスの両名に加え、元カノ(らしいです)のリンダ・ロンシュタットもコーラスで華を添えています。同じく元カノならぬ元TOTOのデイヴィッド・ハンゲイト(ベース)もほぼ全編でプレイしています。

 

 考えてみればこの時期のドン・ヘンリーは”BUILDING THE PERFECT BEAST”をリリースし、翌年にはグラミー賞を獲得しています。収録曲の"Man with a Mission"にはJ・Dもクレジットされており、また別の曲ではコーラスにも参加していることを考えれば、商業的な規模はともかく、両者はソングライターとしての才を認め合っていたことがうかがえます。

 

 

 

 

 YOU'RE~でJ・D・サウザーのことを知ったリスナーが、同じぐらい充実した内容のレコードを期待して聴くと、かなりの確率でコレジャナイ感を覚えることは避けられないアルバムだと思います。

 この時期のJ・Dが商業的な重圧から酒とおク〇リに逃避し、もともとヘロヘロなヴォーカルにさらに磨きがかかっている(;´Д`)ことも、このアルバムの評価を下げている一因であることは、ボクも認めざるをえません。

 

 一方で、デビュー作のヘロヘロな出来に面食らい(^_^;)ながらも、J・D・サウザーの楽曲に何らかの魅力を感じとれた方であれば、このHBDは決して聴きづらく消化しづらい作品ではないはずです。J・D本人が納得していたかはわかりませんが、内省的で華やかさとは対極の彼の繊細さを活かしつつ、オトナの余裕を感じられるロックに仕上げようとする制作陣の意図は理解できる気がします。

 

 

 ディスコグラフィはスカスカ、ヴォーカルはヘロヘロ、なのに現在も定期的に来日公演を行うという、J・D・サウザーはもはや天然記念物か珍獣のような存在でさえあります。

 

 あまり多くを、高い完成度を求めず、ヒマな時間を見つけてはCDやレコードを聴きながらコーヒーやビールをちびちび飲むような、心に余裕のあるオトナが持っておくべきアルバム、といえば、このHBDとJ・D・サウザーの顔が立つかもしれません。

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