ハリーの欝(うつ)体験記(その4)負のスパイラル  | ハリー・ヨシダの楽しい終活日記(ハリー爺ちゃん随想集)

ハリー・ヨシダの楽しい終活日記(ハリー爺ちゃん随想集)

もういくつ寝るとあの世かな。
☆剣道 教士7段 、剣道コーチ
☆Harry's フォトスタジオ枚方 代表
☆催眠誘導心理カウンセラー
☆貿易アカデミー 講師
☆財務分析セミナー講師
☆元 関西外語専門学校 講師
☆元 JETRO認定貿易アドバイザー

一度、うつ的状況へ入り始めると、次々と負のスパイラル(連鎖)が始まります。

 

私が管理部長で赴任時、支社長に挨拶に行くと、「君は、手形や倒産処理の経験はあるのか?」と開口一番に質問されました。

 

私が海外ビジネスの経験が長く、国内取引での管理業務の経験がないことを事前に知ったうえでの、首実検だったと思います。

支社長からすれば、人事、財務、与信管理など、会社の管理の根幹を任せるキーマンである経営管理の右腕として,経験と知識が豊富な人材が来てくれることを望んでいたのでした。

 

支社の統括責任者としては当然です。

 

私の前の管理部長は一年で私と交代になったのですが、その方は、若い社員を呼び捨て調で呼びつけて、上から目線で偉そうに接っするコミュニケーションの取り方が問題視され、社内環境に悪い影響がでていたことと、それ以上に、彼が営業畑一筋の方で、管理の知識と経験が不足していたことから、支社長も苦労されていたための入れ替えでもありました。

 

私は、正直に、「管理については、ほとんど素人です。」と答えました。私は、その職務や地位にしがみつくつもりは 毛頭なく、いつでもバッサリやってください。と腹はくくっていました。

 

「まあ、はやくキャッチアップしてくれ」と支社長(執行役員)は祈る気持ちでおっしゃたと思います。

 

しかし、最初から、「こいつは、素人だから、大丈夫かなあ」と心配する色眼鏡でみていますから、私がちょっとミスをしたり、とんちんかんなことをすると、「やっぱり、だめだ!」という色眼鏡の色がさらに濃くなっていきます。 

 

そうなってくると、今まではチェックしていなかったところまで、細かく気になりだし、あれこれチェックされ、従来通りのやり方を調べ、踏襲してやっても、私がやったことは不安で、ダメだしがされます。従来の管理部長の方々が過去何代もの繰り返しやってきたこと、私がそのままやったり、その書式で書面を作ると、支社長が、あらためて見てみると問題点が見つかるようになります。

 

そして、その問題点は、私のミスということになっていきます。

 

手戻りや、再チェックが頻繁に行われるようになり、ただでさえ多い仕事量が、ますます増えていきます。

 

ビジネスでは、すべての書類や報告には期限があり、時間が迫っていますので、すべてを十分に吟味していく時間はますますなくなり、急いで、作成、提出ということが増えてきます。

 

すると、ますます、ケアレスミスが生まれ、それを見た上司は、ますます、不安になります。 度重なる差し戻し、やり直しが頻繁になり、仕事がますます遅延します。

 

その遅延を取り戻そうと、焦れば、焦るほど、ミスは増え・・・、やり直しが増え。。。。そして、ミスがさらに増え。。。となっていきます。

 

やがて、「ダメだ!」「こんなことを間違えるのか?」「何度言ったらわかるんだ!」という叱責の言葉ばかりになっていきます。

 

部下からも、「なんで、こんなミスを?」「何度言えばわかるんです?」という発言ばかりになっていきます。

 

こうして、気づくと、私は一日中、褒めてもらうことは全くない状態になり、あさから晩まで、自分が自分に、「俺は、なにをやってるんだ?! しっかりしろ! いままでのお前ならこんなことなかったぞ」と叱責をはじめるようになっていきます。

 

こうやって、ダメだ、ダメだと言われ続けると、人は簡単に自信を失っていきます。

 

これが100日続いたらどうでしょうか? 

 

完全に、神経がまいってきます。 

 

やがて、記憶力が低下していきます。 そのことに私自身も気づきました。 こんなこと、なんで、忘れるんだ?と 自分で自分がわからず、自分を信じられなくなっていきます。

 

集中力も低下していきます。 だから、また、ミスが起きます。 

 

なんどいったら、わかるんだ?!とまた怒鳴られるようになっていきます。

 

このように、悪循環が続いていきます。これが負のスパイラルです。

 

昨今、いじめで自殺する子供たちのニュースを聞くたびに、あの子供たちも、加害者との集団心理と共に、この負のスパイラルへ陥っていったと感じます。 

 

 

その負のスパイラルで、操縦不能になって墜落していく飛行機を立て直そうと焦りながらも、私が、その事実を、第三者的に自分を見つめることができたのは、それ以前に心理学の勉強をしていたからでした。

私は心理カウンセラーの資格もとっていたので、こころの一方で冷静にそんな負のスパイラルに入っている自分に気づいていました。

もし、その知識がなければ、どんな結果になっていたでしょうか。

 

仕事について、厳しい支社長でしたが、一年をすぎたころに、私と二人きりの時に、「管理部長として、君は、仕事の知識、経験が不足している。今の君には、このポストは無理だと思う。しかし、話し方、人との接し方に問題は有りません。 そう、本社の人事部長に言った。」と言ってくれました。

この支社長の中立的な評価姿勢は、私を自殺から救ってくれたと思います。最後の底のところで私を最悪のシナリオから引き止めたのは、この一つの「良い点の指摘」でした。これが、なければ、私は終わってたでしょう。

 

 

私は、若い頃から、父の影響で、太平洋戦争の生き残りの方が書かれた戦地での出来事や手記に関する本に興味を持っており、たくさん読んできました。

 

そんな中で、ある兵隊の戦死についての悲しいストーリーを思い出します。

 

戦死した兵士Bさんの遺族へ、Bさんの戦友Cさんが、戦後、遺品を持って行き、「かれは、見事な最後でした。」と伝えました。

しかし、

Cさんは、手記でこう語ります。

「Bさんの親御さんに、ほんとうのことは言えなかった。 Bさんは、実は、自殺したんです。」と。

 

なにがあったのでしょうか。

 

場所はある南方の戦線です。日本軍は敗退し、Bさん、Cさんの部隊は洞穴に隠れていました。

ものすごい緊張とストレスの日々です。

Bさんは元気もよく、頭も良かったのですが、ふとした成り行きで、上官が、B君をいじめ始めたのです。

 

いわゆるすケープゴートにされていきます。 

 

ちょっとしたミスを犯すと、上巻は、「貴様~! バカヤロー!」と殴りつけます。そして罰としてさらに過酷な雑務を言い渡します。

 

 それをこなせないと、「何、たるんでるんだ、コノヤロー!」と鉄拳制裁を喰らいます。それが怖くなって、必死で頑張るBさん。 しかし、そんな過度な緊張状態では、またミスを引き起こします。ますます、懲罰はひどくなっていきました。

 

疲労困憊しても、寝る場所は、洞穴の土間の上。熟睡はできません。そんな精神も肉体も疲弊しきった状態で、食べるものもなく、辛い状態がつづいたBさんは、よほど、疲れきっていたのでしょう、ある日、寝小便をしてしまいました。 

 

それを見た上官は、「貴様は、それでも帝国軍人か? 恥を知れ!貴様は、カスだ!」などと罵倒し、打ち据え、もう許してくださいと懇願するも、上官のリンチは続きました。 

 

上官の命令は、天皇陛下の命令。 日本軍の兵士は、上官に反論できません。上官に逆らえば、銃で撃ち殺されることもありました。 

 

そんなことのあったあとのある日、Bさんは、上巻からライフル銃の手入れを指示されました。 

 

彼は、暗くてよく見えない穴ぐらで、銃を分解して整備しました。しかし、そんな悪条件で、しかも、疲れきった彼は、銃の撃鉄の部品を折ってしまうという失敗をしてしまったのです。 

 

天皇陛下から預かったライフル銃は、いわば武士の刀、武士の魂。それを壊してしまったら、戦闘ができません。 戦争がいやで、わざと、やったな、などと、今度は上官から何を言われるかわかりません。

先日のひどい制裁を受けたあと、さらに加えられる制裁を想像すると、Bさんは、追い詰められていきます。

 

そして、Bさんは、穴ぐらで、手榴弾を炸裂させ自殺しました。

 

本来持っているその人の能力をどんどんと低下させていくこのパターンは、現代の会社や、家庭でも起きています。

 

うつになっていくのもこれと同じと言えます。

 

(その5)へ、続く

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