SF小説「宇宙惑星物語」 -22ページ目

~ピーンハリの舞台~


~ピーンハリの舞台~


「コルネリウス!いよいよ始まるわね・・・」


アメジストグロッサとコルネリウスは、惑星バックスラーに入星ていた。


SF小説「宇宙惑星物語」

ホテルカジノの部屋をとって、屋外オペラ座の特等席を占拠しながら優雅に最高級のシャンパンに舌鼓を打っているところだ。屋外オペラ座は定期公演以外の時は立体映画を鑑賞する高級屋外映画館となり、舞台を囲んで同心円状に席が設けられ、通路にウェイター達が優雅に歩いている。


「なかなか洒落た映画館ですな。」


「この、空気の汚さを我慢すれば、最高ね。でもこの、喧騒というか雑然とした星の雰囲気もまんざら嫌いじゃないわ。」


アメジストグロッサが通り過ぎるウェイターの尻尾を足で踏みつけて呼び止めたので、ウェイターは持っていたグラスを落としそうになる。


「ごめんなさい。あんまり早く歩くものだから。お皿に、こんなたくさん、クッキーを持ってきて頂戴。」


ウェイターは初めて受ける注文に目を白黒させている。


ドドーン!ドーン!


バックスラーの記念式典が開かれているようで、湖の方は花火で賑やかである。


「最高の日ね。ピーンハリの登場が待ち遠しいわ!」


ザザー!ザー!


映画の映像が突然途絶えたようにノイズが入り、画面が乱れる。


「いよいよだわ。」


目の前の映像が突然切り替わり、そこに巨大なピーンハリの姿が現れる。屋外オペラ座の観客達はざわめき、何かのトラブルかと辺りを見回すが、コルネリウスとアメジストグロッサ二人だけがビジョンに映し出されたピーンハリをしっかと見据えている。


「ちょっと、頼もしい感じになったわね、ピーンハリったら。」


「あれだけの激務を任されれば当然でしょう。彼にとっては良い経験になったかと。」


映像のピーンハリが演説を続ける。


「このTDSAを開催するに辺り、我々帝国は、この情報が全世界に公開されるべきものと判断した。このTDSAは平和維持機構として設立されたものの、長い間完全に閉鎖されてきた。この矛盾する事態をせめて今回だけでも打開し、トールドーン星系の民に、事実を伝えるべきと判断した次第である。星系内の電波の制御はこの会議中は帝国がすべて支配するものとし、この中継は現在、全国民の目にさらされていることを知っていただきたい。」


「何だって!」


ピーンハリの告白に協議会連盟のメンバーが驚き立ち上がる。


「帝国?何の話だろう?」


「見ない人種だな?どこの国の代表だろうか?」


「TDSAの実況中継?そんなことあり得ない、偽物画像が舞い込んだんだ。」


バックスラーのオペラ座の客達は困惑しているようだ。


「アメジスト様、この映像を公開するのは、我々の存在を裏付ける、悪い意味での証拠にならないといいと懸念しています。余りこういう事例は過去にないような気がいたします。」


コルネリウスが、ワインを飲み干す。素晴らしい気品ある味だ。直接アルコールを体内に流し込むことがこんな愉快で気分のいいものであるのかと、コルネリウスはすっかり慣れてしまったようだ。


「過去にこういうことはあったようよ。トールドーン侵攻が終結した日には民の前に私が出なければいけないでしょう。その日のために、あまり裏で動いている形跡ばかり残さない方がいいと考えたのよ。この星には、どうも、嗅覚の優れた連中が結構いる。愚鈍な民ばかりならそれでいいけれど、少しは情報を与えないと、後で余計に詮索されてやりにくくなるわ。」


コルネリウスは、これが吉と出るか凶と出るか、見物であると、スクリーンに目をやった。はるか遠くの人工衛星で、ピーンハリの演説はまだ続いている。



「さて、我々の目的は端的に言えばただ一つ、このトールドーン星系の潤滑な循環系を確立することである。この星系は長年戦いに明け暮れ、多大な消耗をしてきた。我が帝国はそれを見るに絶えず、遥か2万光年の彼方から、その触媒となるべく、星系の乱れを整え、調和を齎す為にやってきた。」



ピーンハリの言葉をトールドーン星系の民が釘付けになって見つめている。



「まず我々は足掛かりとして、拠点となるべく土地に衛星ラスを選択した。先住民イディアを武力で制圧した強引な専制政治を続ける衛星ラスのシステムをまず第一に改善することが、大切な一歩だと判断した。そのためにやむを得ず多少強引な手段を選ばざるを得なかったことご理解いただきたい。現在であるが、大統領として先住民イディアの民会のリーダー、ディスマケット氏が選出され、衛星ラスは驚異的な速さで最先端の技術を備えた衛星都市として発展しつつある。これをご覧いただきたい。」



初めて映し出される、衛星ラスの星都。見たこともないジェットカーのような宇宙船が飛び交い、精密に整備された立体的な道路、そして洗練されたピラミッドのような建造物など、画像を見る人々は言葉を失った。


SF小説「宇宙惑星物語」


「これが、あの、ラス・・・」


「国会議事堂はどこいっちまったんだ?!城はどうなったんだよ!?ベクトル達は?!」


バイカイが、中央ビジョンに写る見たこともない宇宙都市に呆然として呟く。


「尚、報告が遅れたが、専制政治により、イディアを虐げてきたベクトル=ヒューマ一族は、裁判により死刑を執行した。イディアの民会も同意の上の公開処刑である。」


「何てことだ!」


TDSAの首脳たちは頭を抱えている。


「それについてだが。」


突然、ピーンハリの演説に割って堂々と立ち上がったのは、あの黒い怪人である!



「貴殿等の強引なやり方に、従えということか。」


会場は静まり返る。


「しかし、我々とて、このまま黙って貴殿等の要求ばかりを飲み込んでいるわけにもいかない。このトールドーン星系は、一万年以上の歴史を持ち、我々は戦争を繰り返したものの、こうやって漸く、平和な世界にたどり着いたところだった。それを貴殿等が武力でもって、前触れもなく一王国を征服したとあっては、これに我々が従順に従う理由が何処にあろうか?まったくもって、言語道断である!」


意外なロームキンの抵抗に、会場が突然、拍手で怪人を称える。


「ロームキン殿!その通りだ!」


「なんだか、可笑しな茶番に巻き込まれちまったようだな、先生。」


バイカイが、ロームキンに傾いていく各国首脳の様子を渋い顔で眺めてホールズに溢す。ギンガメルスガンデは両腕を組んで、目を閉じている。


「確かにお怒りは尤ものことだ。しかし、我々帝国はこの長い歴史の間、数えきれないほどの星系を銀河の隅々に至るまで管理し、指導し、支えてきた。今のこの星系の思想で、我々の高度な認識を要求することが難しいことは重々承知の上である。思想とは、民衆の意識の高さに沿っていなければ、ただ上滑りするだけなのだ。」


「失礼な物言いだ!」


野次は止まない。


「さて、そういう場合には、外科治療が必要となってくる。トールドーン星系のように高度な医療が発達した星系では、それが重要な処置であることは理解していただけることと思う。我々の軍事技術力は、貴殿等と比べようもないことは、明白であろう。」


「私はそうは思わない!」


ギンガメルスガンデが立ち上がる。ホールズは一瞬顔を上げたが、止めるのをやめた。首脳達は唖然とギンガメルスガンデを見上げる。


「ラスポタニテ大統領、ギンガメルスガンデ、世界の英雄。貴殿は、多くの民の命を守る権利がある。」


ピーンハリがギンガメルスガンデを優しく見つめる。


「我々の要求を、端的に言えば、衛星ラスの開国宣言と共に、この国との、自由貿易。衛星ラスを、中継都市とし、活発な貿易活動を行い、帝国の高度な技術を是非、トールドーン星系に流して行きたいと思う。もう一つ、カピタ帝国からの無条件の移民の請負。最後に、惑星テスをはじめとする、資源惑星の開発、その権利を分けていただきたい。それだけである。」


「やはり、それか!奴らは資源に枯渇しているんだ!」


バイカイが舌打ちする。


「そんなかわいらしいものでもないよ。」


ホールズが足を組み替える。


「では、当方の要求も聞いていただきたい。」


ロームキンがピーンハリに近づいていく。


「貴殿等の侵出は衛星ラスにとどまることをここで宣言していただきたい。惑星レイは、移民の請負は了解しよう。」


会場がざわめく。


「愚か者め!こんな一方的な条約締結に国民の理解が得られると思っているのか!目を覚ませ!売国奴め!」


ギンガメルスガンデがロームキンを指さして壇上に近づいていく!




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