人生で前進を妨げる思考パターン「認知の歪み」14タイプ
20 Cognitive Distortions and How They Affect Your Life

 

https://www.goodtherapy.org/blog/20-cognitive-distortions-and-how-they-affect-your-life-0407154 より一部翻訳

 

 

(画像:リンク

 

 

 

 

私たちの置かれた状況は、それだけで私たちの人生を決定はしません。人生で何が起きようとも、それに対する態度(考え)を決めるのはいつも私たち自身です。

 

大きな問題を抱えながらも希望を持ち続けている人がいる一方で、足の指先をぶつけただけで一日中不機嫌なままの人もいますが、その違いはどこから生まれてくるのでしょう。

 

その答えは、その人の考え方のパターン(癖)の中にあります。

 


人が現実を認識する際、現実を大きく歪めるほど、不合理的に増幅させるフィルターで見ている場合があります。心理学者らはこれを「認知の歪み」という言葉で説明しています。

 

この認知の歪みは一般的にみられるものですが、知らない場合には見つけることは難しいものです。ほとんどの場合は、自然に生まれる考え(自動思考)として起きます。また、ただの「考え方の癖」のようになっているため、その思考を持つ人自身がその癖を変えることができるということを知らない人がほとんどでしょう。単にそれが普通だと信じて成長している人も多くいます。

 

 

しかしこういった認知の歪みは、精神的な状態に深刻なダメージを与えることがあり、ストレスやうつ病、不安症の悪化の原因となります。意識的にならずに放置すると、こういった自動的な感が方のパターンが定着し、自分で物事を決定する際に必要となる、合理的かつ論理的な思考に悪影響をもたらす可能性があります。

 

あなたのリアリティ(現実)の受け入れ方(認識の仕方)をすでに歪めている可能性がある、一般的な認知の歪みのいくつかをここにまとめました。メンタルヘルスを改善したい方は、こういった認知の歪みをまず確認することも手助けになるでしょう。

 

 

1. 「白か黒か」という考え方(二元論)

 

(画像:リンク)

 

 

これは二つに強く分かれた思考パターンで、この考え方の人は通常、そのどちらか、または両極の観点から物事を見ています。

 

何が善で悪か、何が正しくて何が間違っているか。あるいは0か100か、などのように。

 

こういった白黒はっきりした考え方では、ほとんどの場合に、白と黒の間に様々なグレーの色合いが存在していることを認識できません

 

人物や物事、できごとなどに対し、2つの極端な側面、または結果しか見ないため、その中間にある、おそらくはより合理的な見方を無視しています。

 

 

2. なんでも自分に関連づける(自己関連づけ)

何でも起きたことを自分と関連付けて考える癖を持つ人がいます。他の人の行動は、自分の言動や態度が原因であると考えるタイプの人です。

 

自分がコントロールできない外部の状況に対してまで、自分が原因だと自分を責めるている場合、この考え方の癖がベースになっているかもしれません。

 

 

3. 「すべき」思考
「あるべき、するべき(should)」または「しなければならない(must)」などと考えている場合のほとんどは、認知の歪みに関連しています。こういった考え方から、罪悪感や恥という感情が生まれます。

 

例:「もっと早く会議に到着するべきだった」、「もっと魅力的になるには痩せる必要がある」など。


また「すべき」の主体が、自分だけではなく他の人に向けられる場合もあります。例えば「あの人はもっと早く私に電話するべきだった」や「彼女を助けてあげたのだから、私に感謝するべきだ」などです。(下記10番を参照)

 

 

こういった考え方が強い場合、他人に向けられた、自分の現実的でない期待をその人が満たさない時には欲求不満や怒り、不快感を感じることになります。

 

どれだけ強く願ったところで、他人の言動をコントロールすることはできないので、他人がどう行動するべきかと考えることは健康的とはいえません

 

 

4. ささいな出来事を大惨事のように受け止める

 

(画像:リンク:「テストがC判定だったよえーん」から「「世界の終わりだ!ガーン」に論理が飛躍した例)

 

ちょっとした不愉快なできごとがあった時に、それを最悪の結果だと認識する考え方です。

 

この考え方の人は、例えばテストで一度失敗した時に、そのままコース全体に失敗するだろうという考えに至ります。

 

またはまだテストを受けてもいないのに、すでに失敗するだろうと信じることも。この場合は最悪の結果を予測、つまり事前に破滅的な結果になると考えてることになります。

 

 

5.拡大解釈・過小解釈

これは3の破滅的な考え方ほどではありませんが、バランスを欠くほどに物事を誇張・過小解釈する認知の歪みです。

 

「モグラの穴が山であるかのように大騒ぎする」という昔ながらの表現がありますが、これを実地で行くのがこの考え方です。

 

ネガティブなことを拡大解釈しがちな人はまた、ポジティブなできごとを過小解釈する傾向があります。この二つの歪みは時として、お互いに関連しあって起きるようです。

 

例:「確かに昇給はあったけど大した額ではないし、私は仕事に関してはまだダメなんだ」

 

 

6. すぐに結論に飛びつく

根拠もなく、誰にも分からないような将来を決めつけ、あるいは他の人の何気ない言動からその人の考えていることを決めつけてしまう思考パターンで、具体的には下の二つの例などが該当します。

 

偶然やその他の原因などの他の可能性を考慮せず、自分の頭の中だけで確信してしまうことが多いと、他の人との関係に悪影響がでることもあります。

 

 

★ 他人の気持ちが読める?
このタイプの人は、まるでサイキックであるかのように他人の考えや感情がわかると考えています。

 

つまり他人の考えがわかると思い込み、外部からの確認情報がないのにもかかわらず、自分の推測が正しいと思い込んでしまいがちです。

 

 

★未来がわかる?
これは未来を予想、特に悲観的な未来を予想し、その予想が確信に近いタイプの認知の歪みです。つまり、物事がうまくいかないと事前に意図的に予想する癖です。

 

たとえば、このタイプの人はコンサートや映画に行く前に、こういった人は「俺たちが映画館に行ったところで、もうチケットは全部売り切れているよ」などと言うでしょう。

 

 

7.  一般化のしすぎ(まとめすぎ)
「一般化」とはさまざまな事物に共通する性質を抽象し、一つの概念にまとめることです。

 

現実には複雑すぎて一般化してまとめることができないようなことでも、一般化をしすぎる傾向のある人は一つか二つなどわずかな事実に基づいて結論を出すことがあります。

 

たとえば友達とランチの約束に来ることができなかった場合でも、その友達はいつも約束を破るとは限りません。

 

一般化をしすぎる人は、「いつでも」「絶対に~しない」「みんなが」「すべてが」などという言葉をよく遣い、ごく一部でみられた「法則」が常に該当するように話しがちです。

 

 

8. 心のフィルター:「ポジティブなことはなかったことに」
これは1番の「白か黒か」の考え方の極端な例の一つで、選択的抽象化とも言われます。

 

業績やできごと、経験などにおいてポジティブな情報を差し引いて、ネガティブな面だけを受け入れる考え方の癖です。

 

こういった考え方の人は、誉め言葉やポジティブな励ましを無視する傾向があります。

 

たとえば学校や職場での課題に対する評価に対し、ポジティブな評価は軽視して、批判的なコメントばかりに意識を集中させるなど。

 

 

9. レッテル貼り
一度二度の偶然、あるいは外的な原因で起きたできごとや経験から、人や物事にレッテルを貼り付ける癖で、一般化のし過ぎの深刻なケースです。

 

このタイプの人は、ただの偶然や間違いだったかもしれないとは考えず、自分自身に対しても出来損ないだと自動的にレッテルを貼り付ける場合もよくあります。

 

 

10. 自分以外を批判してばかり
これは2番の「なんでも自分に関連づける」のとは反対のケースです。

 

すべての事象が自分の責任だと感じるのではなく、批判をすべて自分以外の他人やものに向ける癖です。

 

 

11. 感情を根拠に判断する
このタイプの人は、自分が感じていることこそが現実だと勘違いします。

 

たとえば自分が怖いと感じる場合には本物の危険があるに違いないと考え、あるいは自分が愚かだと考える場合には、それが絶対に正しいというように。

 

この考え方の癖が深刻なものになると、強迫神経症として現れる場合もあります。たとえば、過去1時間の間に2回もシャワーをしているのに、まだ自分が汚いと感じるなどです。

 

 

12. 自分はいつでも「正しい」
自分の意見こそが「事実」であると頭で理解し、議論や話し合いの場で他の人の感情を考慮しないタイプの人は、この考え方に陥っているかもしれません。

 

こういった認知の歪みを抱えたままだと、他の人たちと健康的な人間関係を築き、維持することは難しくなるでしょう。

 

 

13. 自分に都合のよい偏見(自己奉仕バイアス)
よいできごとがあった場合はすべて、自分の性格・性質のおかげだと考え、一方であらゆるネガティブなできごとが起きた場合は自分にはどうしようもない、と考える癖は自己奉仕バイアスと呼ばれます。

 

この考え方が強い場合、自分の過ちや欠点を受け入れることができなくなり、自分のすることはすべて正しいという歪んだ現実の中に生きていることになります。

 

 

14.  自分が幸せになるには他人の変化が必要?
自分が幸せになるためには、他の人が行動を変える必要があると考える認知の歪みです。

 

たとえば、あなたのスケジュールに合うようにするため他の人がスケジュールを変えなければならないと考え、あるいは自分が嫌いだからといって恋人に着ているTシャツを変えるように求めるため、自己中心的だと考えられることが一般的です。

 

 

 

思考パターンと認知の歪みを変える方法


このような認知の歪みのいくつかに心当たりのある人は、たくさんいるでしょう。こういった「思考の罠」のいくつかに自分が当てはまるかもしれませんし、当てはまる他の人が身近にいるかもしれません。

 

しかし嬉しいことに、この認知の歪みが生きる上での重荷になっていても、修正することは可能です。

 

思考パターンは、認知療法における「認知再構築」というプロセスによって変えることができます。つまり、私たちの自動的な考え方を調整することで、自分の感情や行動に影響を与えることができる、ということです。

 

これが認知行動療法(CBT)や論理的感情行動療法(REBT)などの一般的な治療法の基礎になっています。

 

上記の認知の歪みが1つ以上あり、それが不安感やうつ病、その他のメンタルヘルスの問題の原因になっていると思われる場合は、信頼できる有資格のセラピストを見つけることをお勧めします。自分の前進を妨げている考え方や信条を、自分を勇気づけ、元気にさせる考え方へと変える手助けとなるでしょう。

 

 



(抄訳終了)
 

 

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【コメント】

 

何年も前からコメントなどではこの認知の歪みという考え方について言及していましたが、あまり広く知られているようでもないように感じて改めて翻訳してみることにしました。

 

この認知の歪みは基本的には10項目ですが、こちらの記事ではもう少し項目が増えています。

 

内容的には、各項目は相互に関連しあっているところも多くあります。

 

 

簡単に言えば、「思い込みが激しい」「ネガティブな人」「極端な考えの人」などと表現されるものばかりです。

 

 

 

💗今の社会情勢では特に気をつけたい「認知の歪み」

 

何かと極端に正反対の考え方の人が増えている最近では、こういった傾向も強化されがちなので、気をつけたいところです。

 

さらにコロナ自粛やロックダウンなどで、ネット上でのコミュニケーションが以前よりも増えがちですが、ネットで同じ考えの「同士」ばかり集まってお互いに賛成しあっていてばかりいると「エコーチェンバー現象」で考えがより極端に進む場合も。

 

人類の共感力の低下から生まれた世界的な「怒りの時代」・進む分極化

 

政治と宗教の話はタブー?ケンカにならずに本当に大事な話をする方法

 

 

考えが極端に二分している場合、両方共に自らの考えの「正しさ」を主張ばかりし、相手の意見を無視してしまいがちですが、そのまま放置すると二つの極端な考えの間の溝は深まるばかりです。

 

革命の起こし方・考え方の違いを乗り越えて団結すること

 

「陰謀論」について一言

 

 

 

💗もちろん個人レベルでも

 

こういった社会レベルでの問題だけでなくとも、家族や友人などの間でも、もちろん認知の歪みがひどすぎると人間関係にも、自分の精神衛生にとっても悪影響を与えます。

 

 

「コロナの流行」あたりから、この言葉をよく見かけるようになりました。

 

 

 

訳すと「結局のところ、物事は見たままでしかない」というような意味ですが、あまり自分の考えを盛り込まずに事実をありのまま見て、受け入れようということでしょう。

 

日本語訳としては「しょうがない」と訳されるようで、それでは諦めようというような意味にも聞こえますが、私はこれを「事実を、あまり自分の考えで歪めずにそのままの事実として受け入れる」ようにしよう、程度に見ています。

 

「何が正しくて、何が間違っている」と真剣に考えすぎると頭も心も疲れてしまいますが、仏教の「中庸」やギリシャ哲学の「メソテス」などのように、ほどよくバランスを取った中立性や客観性を意識することが、特に今、精神上の安定に大事なのかもしれません。