今日は、あるマダムの若かりし頃のお話です。

彼女は、現在42歳。今は15歳年上で資産家の旦那様と関東で幸せに暮らしている。
そんな彼女だが、20代の頃には身を焦がすような恋愛経験がある。
このお話は、彼女が大学4年生の秋から始まる。

大学4年の頃に、学生時代の思い出に・・・と、
ローカルTV局のアシスタントのオーディションを駄目モトで受けたところ・・・・
なんとマグレで採用された。とはいえ、その他大勢の一人だが・・・・。
それがきっかけで女子アナを目指す事になった。
彼と出会ったのは、そんな頃だった。

TV局アシスタントの先輩から、PRビデオのレポーターのバイトを紹介され、
バイト料に惹かれて引き受けた。
ディレクターは、30前後の妙に調子の良い「業界チック」な男だった。
TV局の人間ではなく、いわゆる制作プロダクションの人間だという。
初めて会ったはずなのに、やけに馴れ馴れしくて最初はひいたが、
話は結構面白いので、なんとなく憎めない感じがした。
それに、いざ現場で仕事になると、一変して厳しいディレクターだった。
なんとなく「プロ」の匂いがした。
彼女は、彼に少なからず興味を持った。

その仕事から1ヶ月が過ぎた頃、彼から突然電話があった。
例のPRビデオが完成したので、見て欲しいというので、週末に会う事になった。
ビデオを受け取り、食事をして話が盛り上がった事もあり、その後二人でお酒を飲んだ。
そして、その夜彼と初めてキスをした。

彼女が大学4年生、22歳の晩秋の事だった。
今から20年前、彼は、映像制作会社のディレクターだった。
仕事柄、女子大生とのパイプも太く、アルバイト・アシスタントやレポーターの手配にも
困らないくらいネットワークが行き届いていた。
あの時も突然の仕事で、急遽レポーターを手配する事になった。
正直、どんな女の子でも我慢するつもりだった。
手配を頼んだ女の子は、結構頼れる奴で、なんとかギリギリ間に合せてくれた。

がしかし・・・・その日、初めて出会った大学4年生の彼女には驚いた。
今時の女子大生にはない清楚な魅力にやられた。
思わずただの軟派な30親父になっていた。

仕事は仕事として、さっさと片付けて、彼女と再び会う口実を作った。
緻密な計画で、食事から、その後を段取った。
そして、目論んだとおりに事は運び、思惑どおり彼女を落としたが、彼も彼女に落ちた。
しかし困った事に、その当時彼には妻と二人の子供がいた。
いわゆる「不倫」・・・・と言う事になった。

平たく言うと、女子大生と子持ちの30男・・・・という構図になるが・・・・
バブル末期の当時、それはごく普通に「ありがちな関係」だった。

そうこうしているうちに、卒業間近で就職先に困っていた彼女に、青森のTV局から契約アナウンサーの話が舞い込んだ。
けして彼が働き掛けた訳ではなかったが、彼女はその話に乗った。
彼と彼女は思いがけず、局アナと制作会社ディレクターの「禁断のカップル」になってしまった。

そのとき二人は、これからはじまる苦難の道は予想できなかった。
大学卒業を目前に、就職活動に苦戦していた彼女は、契約社員ながらも青森のTV局のアナウンサーという話に飛びついた。
条件もそれほど悪くはないし、彼との接点も多く、なによりつぶしが利く。
彼とは多少距離があるけど、お互い仕事があるから月に1~2回会えれば充分だと思った。
TV局近くのアパートを借り、仕事最優先の社会人生活が始まった。

しかし、彼女は仕事第一と考えていても、回りの男達は違った。
先輩アナウンサーやディレクター、更には営業部長から役員まで、
毎日のように食事や飲み会に誘われた。
契約アナウンサーという意味が、そのときようやく理解できた。
その当時のTV局では、女子アナを「女」としか見ていなかった。
女子アナの先輩に聞いたところ、その局の女子アナは長くて5年、短くて1年だという。
更に先輩は、何人かの要注意人物を教えてくれた。
しかし困った事に、その要注意人物の一人が、担当番組のディレクターだった。

ある日、打ち上げの帰りにその要注意ディレクターに飲みに誘われた。
嫌な予感がしたが、お酒だけなら・・・と誘いに乗ったところ、ホテルのバーだった。
こりゃ、ちょいヤバイな・・・・と思ってたら、案の定、口説きが始まった。
その当時は、携帯電話などない時代で、即効で彼にSOSを送れる状況じゃなかったが、
その店から彼に電話はできた。
隙を見て彼に「今、かなり危ない状況なの・・・」と電話したら、電話の向こうで彼が「分かった」と一言言って直ぐに電話が切れた。

どう分かったのか?不安だったが、とりあえずその要注意ディレクターの口説きを
のらりくらりと交わして1時間半・・・・。
もう限界・・・と思ったところに、彼が現れた。
「やぁ、偶然だねぇ~」って彼・・・・そのセリフずっと考えてきたんでしょうけど・・・
かなり不自然だったよ。

盛岡から青森まで1時間半は、早すぎだろう・・・と思ったけど、彼の気持ちが嬉しかった。
そのときはまだ不倫だったけどね・・・。
彼女が青森のTV局で契約アナウンサーになって3年目、
彼と奥さんの離婚がようやくきまった。
それを機会に、TV局を辞めて盛岡で一緒に暮らすことを決めた。
局アナに未練はなかった。
むしろ、彼の会社や彼の仲間達との仕事の方が魅力的だった。
それに彼と一緒に暮らせる事が一番嬉しかった。

二人で部屋を探し、二人で車を選んだ。
嗚呼、これが幸せなのかと思った。

しかし・・・・
幸せは長くは続かなかった。彼には、彼女のほかに「女」がいた。
二人の部屋なのに、彼は1週間に2日しかいなかった。
「二人で暮らしているはずなのに、何故、いつもいないの?」とたずねると
「今、仕事が忙しくてほとんど会社にいる」とか「出張」とか言い訳する。
本当の事が知りたくて、彼の会社の人に率直に尋ねた。
すると・・・・やっぱり女がいるらしい。
しかも、別れた奥さんと別の彼女と三人同時進行だったらしい。
そりゃ、離婚にもなるよ。
その瞬間、一気に熱が冷めた。
「別れよう」・・・・そう決めた。
彼は、思いがけない彼女の決断にうろたえたが、彼女の決意は固かった。

しかし、20代の大切な時間をともにした彼の事はそう間単には忘れられない。
別れたとはいえ、時々は電話したり、食事を一緒にしたりした。
もしかして・・・・モトサヤになるかな?とも思った時期もあった。
だが・・・・彼女が試しに、公務員の男性から交際を申し込まれた事を彼に相談したとき、
「付き合えばいいじゃないか。これで俺も安心だ。」とあっさり彼に言われたとき、この街を離れる決心がついた。
やがて彼女は、一人東京へ行き、彼は一人この街に残された。

あれから16年・・・・。彼女は今、東京の空のした、15歳年上の旦那様と幸せらしい。
あれから16年・・・・。彼は、・・・・・どうしているのだろう・・・・。
今日の彼女は、スタイル抜群でルックスも綺麗系。
今年で26歳になるが、彼氏が落ち着かず、いまだ結婚できずにいる。
そんな彼女には、ちょっとした秘密があった。

昼は一部上場企業の地方支社に勤める普通のOLだが、
週末の夜だけキャバクラでバイトしていた。
もちろん、会社にばれたら大変な問題になる。
だから、今の店は会社の人間が寄り付かないような場所にある。
彼女が、このバイトを始めたきっかけは、けして経済的な理由ではなかった。
本業でキャバ嬢をしている友人から、女の子が足りないので一日だけ手伝って欲しい、と頼まれて、仕方なく一日だけのつもりでキャバクラでバイトした。

最初は、お客さんと話もまともにできなくて不安になったが、しばらくするとお客さんの方から気を使って、私の話に合わせてくれた。
あからさまに下心見え見えで「綺麗だ・・・」とか、言ってくれる。
そりゃ彼女だって普通の女、誉められれば嬉しい。
仕事の関係で、毎日3種類の新聞も読んでいるから、年配の男性とも話が合う。
話が合えば、気に入ってくれて「また週末に来るよ。」と言われ、そうなれば次の週末にも行きたくなった。そして次の週も、また次の週も・・・・。

そんなこんなで、週末限定のキャバクラ勤めも2年になる。
いずればれるだろう・・・っていうスリルも、怖いけど・・・実はたまらなく楽しい・・・。

ムフフ・・・・

昼は一部上場企業の地方支社のOLでありながら、
週末の夜は、一転、知的で怪しいキャバ嬢になる彼女。
そして、彼女を目当てに店に通う沢山の男達。
その男達の中でも、彼女はとりわけ3人の男が気になっていた。
一人は、地方でも大手の印刷会社に勤める30歳のサラリーマン。
毎週末、必ず店に来て彼女を指名し、「綺麗だ」「好きだ」「デートしよう」を繰り返す。
最初は、いきなり挨拶のようにそのセリフを繰り返すから、彼女も辟易としたが、毎度毎度、真剣にそう言われると、だんだん憎めなくなるし、可愛いと思うようになった。

二人目は、45歳の歯医者さん。とにかくカッコイイ。
もちろん、景気のいい飲み方をする。だから・・・女の子にもてる。
しかし、噂ではいろんな店の女の子を食いまくっているらしい。
そして女の子を落としたら、ゲームのように・・「ハイ。さようなら・・・」らしい。
噂が本当なら、最低最悪の男だ。・・・・がしかし、お金持ってそうだし、カッコイイ。

三人目は、50代の建設会社に勤める部長さん。
この人は一癖あって、最初に会った時、いきなり私の気にしている事をズバズバ言い当てて、挙句の果てに彼女が気に触るような事を平気で言ってのけた。
彼女は泣くほど悔しかったが、じっと我慢した。
しかし、そんな事、意に介さぬように、その日は普通に飲んで帰った。
「あんな親父、大嫌い!」と思っていたが、・・・次に店に顔を出した時、「このあいだは、言い過ぎた。」と花束を贈られた。なんだか、キューんとなった。
大嫌いな男からいきなり優しくされると、そのギャップに戸惑う・・・。
そして、急にその男が気になりだす・・・。
でも・・・・これって、あの親父の「口説きの手口」なのかな???

昼間はOLをしている彼女が、週末限定のキャバクラ勤めを始めて1年めの頃、
そんな生活サイクルに慣れたせいか、少々ガードが甘くなっていた。
それまでは、会社の同僚にばれないように、店が終わると、即効でタクシー帰宅だったが、
その週末は気の緩みから、店の女の子たちに誘われるまま、遊びに出た。
深夜の居酒屋でキャバ嬢が4人も集まれば、そりゃお客さんの悪口や噂話で賑やかなもの。
しかも全員ケバい・・・・、普通に分かりやすい・・・。
その深夜の居酒屋に、なんと会社の同僚3人が入ってきた。
とっさに目を伏せたが、そもそも目立つ集団だから、当然見つかった。・・・
「不味い・・・どうしよう」・・・
「なんでまた、こんな時間に女の子だけで・・・」と問いかける同僚に、女の子の一人が機転を利かせて、「私たち今日コンパの帰りなんです。」と助け舟。
「よかったら一緒に飲みませんか?」ともう一人の女の子・・・。
流石、プロのキャバ嬢。あしらいが上手い・・・。
そう言われて会社の同僚達も悪い気はしない。むしろ喜んで、誘いに乗った。
仲間の女の子達には、気を使わせてすまないと思ったけど、正直心から感謝した。
その夜のことは、同僚達にとってはラッキーな出来事だったが、私には悪夢だった。

悪いことは重なるもので・・・
それから数日後、彼女が普通に昼間の仕事をしている会社に、偶然にも印刷会社に務めている30代の彼が仕事の打合せに来た。
知らん顔で、給湯室に隠れたが、チラチラとこっちを見ている。
慌てて給湯室に入った手前、お茶を出さずにはいられない・・・。
覚悟を決めて、きわめて普通に彼にお茶を出した。その時は何事もなかったが、
その週末には、いつものように印刷会社に勤める彼が店に来て、大変な目にあった。
「会社には内緒にするから、デートしよう」と誘われた。
誘われた・・・というよりは、むしろ「脅された」と言った方が正しい。
その時は、そろそろ潮時か・・・と思った。

昼は一部上場企業の地方支社のOLでありながら、
週末の夜は、一転、知的で怪しいキャバ嬢になる彼女。
この2年、様々なアクシデントやあわやの出来事があったが、
それでも、週末のキャバクラ勤めは続いていた。

その後、彼女の周りでは様々な出来事があった。
彼女に言い寄っていた45歳の歯医者は、別のお店の女の子にちょっかいを出して、その彼女の彼氏に制裁を受けたらしい。
しかも、かなり強烈な制裁だったらしく、その後夜の街では見かけなくなった。
もちろん、彼女の店にも姿を見せなくなった。ちょっとガッカリ・・・。

彼女が一番好きだった52歳の建設会社の部長さんは、離婚して独身のはずが、実は奥さんに4人目の子供ができたという。
聞けば、奥さんは30代だそうだ。
彼だったら、一回ぐらいはいいかな・・・・なんて思ってたのに・・・。

そして、禁断のキャバ嬢をネタに彼女を脅してデートに誘った印刷会社のサラリーマンは、何故か、あんまり店には来なくなった。
そのかわり・・・彼女の週末のお勤めが終わるまで、お酒も飲まずに店の近くの駐車場で彼女を待ってる。
そして、お勤め帰りの彼女は、笑顔で彼の車に乗り込んでゆく。
どうやら、いま二人は、付き合っているらしい。
それは、お店の女の子達にも秘密らしい。

いけない事とは知りつつも、2年続いた週末限定のキャバクラ勤めだけど、そろそろ彼女もお年頃。
もういい加減、年貢の納め時かも・・・。
彼女は小さな雑貨屋さんで働いている23歳のフリーター。
店長とは長い付き合いで、大学生の頃からお世話になっている。
同棲している彼氏との付き合いも同じくらい。来月で2年半になる。
彼とは大学の軽音サークルで知り合ったのだが、彼女は楽器なんかやったことがない。
まぁ軽音とは名ばかりの、気が合う仲間の集まった飲み会サークルだ。
でもバンドを組んでライブをしてるときの彼らは格好よかった。
ギターをひく彼の姿はいつもと違っていて、自分とは別の世界にいる人のような感じがした。
そんな彼と付き合ってそう、もう2年半になる。

「あいつホントに私のこと好きなんですかねーぇ」
と店長に言うと、きまって「本人に聞いてみなって」と冷たい反応を返される。
まぁ年中おんなじようなことで悩んでいるから、もう呆れられているんだろうけど。
「それよりあんたはちゃんと好きなのー?」
店長からの予想もできない質問に彼女はちょっとうろたえた。
もちろん「当たり前じゃないですか!」とすぐに返したが、そのあとうーんと悩んでしまったのだ。そして、そんな反応をしてしまった自分にも、驚いた。
なんで私こんな風に思ってるんだろう。


毎日ぼんやりしてるうちに過ぎていってしまう。
春が近づくとその傾向は強くなって、彼女は眠気をこらえながら今日もバイトをしていた。
ちょうど店長が商品の仕入れでお店をあけているから、今はひとり。
彼とのことを考えていたらなんだか気分が落ち込んでしまった。
窓の外に目をやると、朝から降っていた雨は昼過ぎから強くなって、外を歩く人はみな足早だ。
今日は暇そうだな~なんて思いながらガラスを磨こうとすると、ひとりのおばあさんが入ってきた。
その人はおばあさんと呼ぶにはふさわしくないような若々しい服装で、可愛らしかった。
ちょこんとかぶった帽子から見える髪の毛が白かったから、自分の祖母と同年代だとわかったくらいだ。
にこ、と笑ったその人に、写真立てを選ぶのを手伝って欲しいと頼まれた。
なにやらお孫さんとその彼女にプレゼントをするのだとか。
大学の卒業祝いになればと思って、と並んだ写真立てを見ながら言う。
そしておしゃべり好きそうなそのおばあさんは、
お孫さんカップルのことを嬉しそうに話しだした。


お孫さんは友達や彼女を連れて、よくおばあさんのところにやってくるそうだ。
「すごく可愛らしい2人でね、よく旅行に行ったり遊びに行ったときの写真を見せてくれるの」とおばあさんは目を細めながら話す。
お孫さんはカメラマンを目指しているそうで、そんな彼のとった写真を見せてもらうのが、すごく楽しみなのだという。
「そして、そういう思い出をね、この写真立てに飾って欲しいと思って。離れてても、写真を見れば、思い出せるでしょう?」
そう、大学を卒業する2人は、これから遠距離恋愛になってしまうらしい。
大好きな2人に渡すプレゼントを、こんな見ず知らずの私とあーでもないこーでもないって選んでいる。
なんだか不思議な縁を感じて、気持ちがあったかくなる。
たくさんの写真が入るようにと、中がアルバムのようになっている写真立てに決めた。
しあわせになってほしいと思いながら、いつもより丁寧に包装してその写真立てを渡す。
「ありがとう」と言って帰っていくおばあさんの背中は、嬉しそうに弾んでみえた。


おばあさんが帰ったあとも、彼女は見ず知らずの二人のことを考えていた。
あんなにおばあさんに愛されて、それでも離れ離れになってしまう2人。
きっとあの写真立てにたくさんの写真をいれて、毎日お互いのことを思い出すんだろうな。
そうだと、すごく嬉しい。
そんなふうに彼女が、見ず知らずの遠距離な二人に想いを巡らすには、訳があった。

彼女も今の彼と、大学を卒業するときに遠距離恋愛になりかけたのだ。
真面目に就職先を見つけた彼女は、実家に戻ろうとしていた。
けれどその仕事はやりたいことではなかったし、研修期間中に感じた会社の空気は居心地が悪くて最悪だった。
「先輩とかにいじめられそうだよー。やっぱお局とかいるのかな」と彼に話したら、
そんな思いまでして無理して就職しなくてもいい、と言われてしまった。
今思えば、いやいやちゃんと働けよって感じなのだが・・・、
その時も、今の店長はそのまま働いてくれたら嬉しいと言うし、なんだかんだと上手いこと話は進んで、今もこうして彼と暮らしている。

彼と離れる結果にはならなかったけど、
二人の想いが通じ合わなければ、近くにいても遠くに居ても変わらない。
あぁ今私たちは、一緒に暮らしながらも、心が離れかけていたのかも、と彼女は思った。


その夜彼女がバイトから帰ると、彼は部屋でギターをひいていた。
彼のひくギターに耳を傾けながら晩ご飯を作っていると、思わず鼻歌がでた。
「今日なんか機嫌いいね」と彼に言われ、彼女はあのおばあさんの話をした。
こんな風に1日にあったことを話すなんて、久しぶりだと思った。
「あんなに思われて、あのカップルは本当にしあわせだよー」と彼女が言うと、
彼は「俺らもそうだったんだよ」なんて言うから驚いた。
バイト先の店長も、サークルの仲間も、みんな私たちが離れないように、別れたりしないようにって色々してくれていたらしい。
そういえば上手くいきすぎてるなぁとは思ったけど、そんなことにも気づかなかったのか。
「そういうところが可愛いんだよーっ」と彼に頭をぐしゃぐしゃとなでられて、彼女は普段は忘れていた彼の愛情を感じた。

あぁ、私毎日同じことの繰り返しで、わかんなくなってたんだ。
不安なことはなんにもない。彼がそばにいるじゃない。
あのおばあさんに感謝して、それからあの見ず知らずのカップルのことを考える。
ふたりがずっとしあわせでありますように。
不安になったときも、あの写真立てがきちんとふたりをつないでくれますように。
このお話は、私がまだ二十歳の鼻持ちならない小娘だった頃のお話。

彼とは飲みに行った先で知り合った。いわつる「ナンパ」された感じ。
友達二人で飲んでいたところに隣で飲んでいた三人組の男性に声をかけられた。
その三人に特に興味もなく、どちらでもよかったが、
断るのも面倒でなし崩し的に一緒に飲む事になった。


その頃、二十歳になったばかりの私は、毎晩のようにコンパをしまくっていて、特定の男性を作るつもりもなかった。
いつも、その時に会った男性たちと、その場限りの楽しいおしゃべりをしてその場その場で楽しんでいたつもりだったのだが、
たぶん心のどこかで寂しかったんだと思う。


彼と出会ったその場所は、カラオケパブ。
一緒に飲んでいた男性の一人が、浜田省吾の「もう一つの土曜日」を歌っていた。
もちろん私は、浜田省吾世代ではないし、その歌すら知らなかったが、歌の上手な彼の歌声に聞き入ってしまったのだ。
そして歌詞を聞いていると「夕べ眠れずに泣いていたんだろう~」って、すごく切ない歌詞だった。
全然タイプでもなかったその彼に少し興味をもった(ちょっと単純・・・)
その夜は、帰り際メルアドを交換して帰った。


翌日、その彼からメール。
何度かやり取りをしているうちに、彼の住まいが私の自宅のすぐそばだという事がわかった。
食事に誘われ始めて二人でドライブをする事になった。
彼が28歳、私が二十歳の春だった。


私が二十歳の頃、8歳年上の彼から初めてデートに誘われた。
金曜の夜、仕事が終わって二人で食事をしてドライブに出かけた。
なりゆきで秋田方面へ車を走らせることになった。時計を見ると午後10時・・・。
海が見たいといった私のリクエストに応えて彼は、男鹿半島まで連れて行ってくれた。
が・・・別にそこまでの事は望んでいなかったし、
あまりに遠すぎて私は、ただただ早く帰りたいと思ってた。
朝の5時近くにやっと家に到着した。ふぅ~・・・

その後も何度かデートを重ね自然と付き合う事になった。
そして自然に大人な関係も結んだ。
がしかし、相変わらず私は、コンパに行くことは止めず、進んで参加してた。
彼にも平気でコンパに行ってくるといい、帰りには迎えにも来てもらっていた。


当時の私より8歳も年上の彼は、まだ二十歳の私にとってとても大人に思えて、
かなりわがままも言った
職場の関係で、最低週に3回は飲み会があった私は、
いつも飲んだ帰りに彼に迎えに来てもらっていた。
いつの間にかそれが当たり前になっていた。
でも、今考えると、平日の夜中、1時だろうが2時だろうがそれ以降だろうが、
彼を平気で呼び出すのである。
しかも、シラフの彼に対し、私は毎回大量のお酒を飲んでいたので、
かなり不愉快だったに違いない。
でも、彼は文句ひとつ言わないで毎回必ず迎えに来てくれた。
私はというと感謝の一言もなく・・・・、それが大人な振る舞いだと思っていた。
本当に鼻持ちならない二十歳の小娘だった。



そんなこんなで一年が過ぎたある日、私はお友達のお家に遊びにいって夜も遅くなっていた。
次の日仕事もあるし、そろそろ帰ろうかと思っていたら、彼から電話が・・・・。
今、会社の人と飲んでいて今から帰るところだから、
もしまだ外にいたら迎えに来てほしいという電話だった。
初めて彼から迎えに来てほしいという電話。
面倒くさくて嫌だという気持ちの方が大きかったが、いつも迎えに来てもらってるし、
しょうがなくいくことに。


迎えに行くと彼と共に、一緒に飲んでいた会社の同僚もついでにいいかという彼。
(彼は当時会社の寮に住んでいて、その同僚も同じ寮に住んでいるらしい)
八方美人な私はその同僚がいる手前、嫌な顔もできず、作り笑顔で二人を車に迎えた。


寮に到着して同僚はお礼を言って先に車を降りた。
次の日仕事があるため早く帰りたかった私は、
さっさと彼も降ろして、一刻も早く家へ帰ろうとしていたのに、彼は突然同僚に、
「おれは彼女と話があるから、先帰ってて」と一言。


はぁ~!?と思った私は「明日、仕事だしもう帰りたいんですけど」と睨んだ。
その日はお酒が入っていたせいか、いつもは従順でやさしい彼が
「ちょっとくらいいいじゃない」と強気な一言。
それにキレた私は「はぁ~?何であたしがあなたを迎えに行って、しかも同僚まで乗せて
来てあげたのに、その上こんな時間にあなたの相手しなきゃいけないわけ!?」
といい、彼を車の助手席から外に突き飛ばしそのままドアを閉めその場を走り去った。
バックミラーを覗くと彼はただその場に呆然と立ちすくんでいた。


ちょっと悪い事をしたと思いつつも、強気だったわたしは謝ることもせず、それどころか
その後、彼の電話を無視し続けた。
電話が通じないのでメールで謝ってくる彼。本当は自分は何も悪くないのに・・・
そんな彼のやさしさが益々ムカついてイラついて、一週間ほど無視し続けた。
今振り返ってみても、本当に優しさの欠片もない嫌な小娘だった。


意地悪で理不尽な私の振る舞いにもかかわらず、
謝ろうとする彼の連絡を私はことごとく無視し続けていた。
それでも毎日、めげずに連絡を取ろうとする彼。
根負けして、しょうがなく電話に出たのだが、彼の様子がおかしい。
無言が多い・・・
気を使ってわたしが話題をだして会話しようとしているのに
全然キャッチボールができていない・・・。
もしやと思い彼に「もしかしてまた熱だしているんじゃないの?」
彼は「39度あって・・・」と・・・喘ぐように言った。
(体質なのか、いつも彼は風邪を引いては、扁桃腺を腫らして熱をだしていた。)
心では、いたわる言葉を掛けたいのに素直になれない私は、
「馬鹿じゃないの?そんなに辛いならあたしと電話してるよりきちんと寝てなさいよ」
と言って電話を切ってしまった。


その後、彼から何度となく連絡が来たが、結局わたしは電話に出ることはなかった。


どうしてそうしたのかわからないけど・・・・・、
たぶん彼をこれ以上傷つけたくなかったんだと思う。
彼のやさしさに甘え、自分でも止められないくらいわがままで嫌な女になっていた。
わかっていたけど・・・・、
素直になれず彼を罵倒することしか出来ない自分が本当に嫌だった。
それでも、やさしく私を包んでいてくれた彼。
男らしさは、「優しさ」だと言うことに、その頃はまだ気づかなかった。


8歳年上の彼は、鼻持ちならない小娘の私を優しく包んでくれたが、
その時の私は、理不尽にも一方的に彼を拒んだ。
数年後、ある飲み会で、偶然にも彼の関連会社の方たちと一緒になり、
何故か彼の話になった。
もちろんその人たちは私が彼の元彼女とは知らない。


ただ、「やさしい男」というテーマの話題で彼が出て来たのだ。
彼らの話によると・・・・
「優しい男と言えば彼でしょう!あの人、前の彼女がずっと忘れられなくて、
ずっと想い続けててさぁ。でも話を聞くと物凄く嫌な女なわけ。
彼曰く、『本当はすごくいい子なんだよ。ただ不器用な子なんだよ。
自分さえそれがわかってあげられてればそれでいいんだよね。』っていい人すぎじゃない?すごい背が高くてかっこいいんだよその人。
5・6年思い続けててさぁ。たけど最近転勤になったんだよね。

そこで出会った人と結婚するらしいよ。

いやぁ~その彼女の呪縛から解放されて本当に良かったよ。」


彼女の呪縛って・・・、私の事??って思いつつも・・・ 複雑な思いがした。
正直彼の事はもう忘れていた。
その彼が、わたしが忘れていたその何年間ずっと想っていてくれてたなんて・・・。
しかも、最悪な付き合い。そして終わり方をしたのに・・・


今はふとした瞬間。彼の顔を思い出す。
たぶんこの先、私は一生彼の事は忘れないと思う。

今考えてみれば、私は彼に甘えていたし、本当に彼を必要としていたんだと思う。
だけど、それをどう表現し、接していいのかわからなかったんじゃないか・・・と。
彼を拒んでからその後、何人かの男達と出会い、そして別れを繰り返し、今ようやく「男の優しさ」が分かるようになった。
やっと大人の女に近づいたのかな・・・・。
人間関係って難しいですよね。

あの人は優しいけどなんか気が合わないとか、
口では言い表せないけれど、波長が合う合わないってあると思います。
でもどんな人にも好かれるというか、好かれやすい人っていますよね。
今日はそんな私のお友達の話。

好きなところ、嫌いなところ、いいところ悪いところ。
人にはそれぞれ長所短所があるものです。
でも自分のいいところって、案外自分では分からないもの。
悪いところばかり見えてしまって、いやになる。
彼女もまた、そんな自分に悩んでしまったんですが・・・、
私も含め、みんな彼女の笑顔が大好きでした。


彼女は会社の経理を担当する24歳。
休憩時間は大好物のイチゴ大福をほおばりながら、友達とおしゃべりするのがお決まり。
ふくよかな体、といえば聞こえはいいかもしれないが
実際太っているのは自分でもわかっている。でもそこまで問題視したことはない。
まぁ24歳という年で彼氏の一人もちゃんと居たことがないのは
この体型のせいかもしれない、とか最近悩んでいるのだけれど。
でもそれがこの美味しいイチゴ大福を食べない理由にはならなかった。
同僚はみんなスタイルがよくて、お化粧も上手で可愛らしい。
自分とは違う世界にいるような友人たちを見ているのも、彼女はすごく好きだった。
羨ましいとか、ねたましいという気持ちは不思議と抱いたことがなかった。
だからこそ彼女の周りには人の輪ができていたし、
みんな彼女のおおらかな笑顔が大好きだった。
でもそんな彼女が、ある日を境に変わってしまった。


彼女は恋をした。
恋とは無縁な生活をしていたから、最初はそれが恋だと気づかなかったくらい。
ある日の飲み会で仲良くなった後輩の男の子。
ムードメイカー気質な彼は面白くて優しかった。
仲良く話すだけじゃもの足りなくて、自分をもっと見て欲しいと思った。
そんな風に思うのは初めてで、こんな感情を持っていたなんて・・・と自分に少し驚いた。
でも改めて鏡に映る自分をみたとき、その姿はなんだか醜くて、こんな体じゃダメだよね、と自分の生活を振り返って深く反省した。
そこから彼女の断食生活がはじまった。
とにかく食べない。水を飲み、食べるのは野菜と豆腐とこんにゃく。
今まではさらっと読みとばしていた雑誌のダイエット特集もしっかり読んだ。
今まで蓄積されてきた脂肪たちが、どんどん使われていき、見る見るうちに彼女は痩せた。
その痩せ方は驚異的で、周りの友人たちは彼女をとかく心配した。
しかし彼女はどんどん痩せてきれいになっていく自分に感動していた。
今までの24年間がうそのようだ。

こないだは、街で初めてナンパをされた。
嬉しくてつい付いていきそうになって、慌てて冷静を装って振り切った。
なんだか、勝った気分!初めて味わう感覚に彼女はドキドキした。
生活が変わり、世界が変わり、そして彼女自身の性格も変わってしまった。


どんどん痩せていく彼女を心配する友人たちをよそに、彼女のダイエットは続いた。
男たちの自分を見る目が変わったことを彼女は実感していた。
やはり男はスタイルの良い女がすきなんだ、と彼女は思った。
もちろん彼女が好きな後輩の彼も同じだと信じて疑わなかった。
しかし彼女の友人たちはみんな離れていってしまった。
もしかしたら自分がきれいになったから妬んでいるんだろうか。
それは彼女の思い違いで、実際は彼女の態度がまるっきり変わってしまったのが原因だった。
ほがらかで暖かい彼女の笑顔は消え、ツンツンした態度が目立つようになった。
彼女のもつ優しい空気はどこへ?と多くの友人は思い、彼女から離れていってしまった。
そして彼も、例にもれずだったのだが・・・


15キロ痩せてキープしていた体重が、また最近増えだした。
彼女は焦って断食を強化した。
しかし後輩の彼との飲み会は断れなかった。
久しぶりに酔っ払った彼女に、後輩の彼はこういったのだ。

「僕、太ってた頃のほうがすきでしたけどねー」

彼女は思いがけない衝撃をうけ、言葉を失った。
なんで?とハテナマークが頭をまわってるのが分かった。

「だって今の先輩、なんか怖くて・・・前のほうがいいっすよー」

その言葉で彼女は全て悟った。自分が恐ろしい勘違いをしていたことを。
道を踏み外す寸前で彼が止めてくれたことに気づき、感謝した。
あの体型は、彼女が彼女であるためのものだった。
優しくほがらかな彼女の性格を象徴していて、だから彼女はおおらかで居られたし、
その性格に多くの友人が安らぎを感じていた。

それに気づいた彼女。
今でも大好物はイチゴ大福、お豆腐は好きだけどしばらくはいらないかな、
と話してくれる。
もちろん体重はすぐに元に戻ったけれど、彼女はそれをもう気になんかしていなかった。
だってそんな彼女を好きでいてくれる友人がたくさんいるから。

そしてそんな彼女だからこそ好きになってくれた彼も・・・