【夏のシャープペンシル】(2008/7/31 エフエム岩手わけ:ありナイトクルーザー ONAIR)

彼が高校3年生の夏休みは、大学受験のためだけにあった。
夏休み初日から、高校の補習授業があり、その後は仙台の大手予備校の夏期講習に泊り込みで参加した。
夏休みだというのに、朝から夜中まで受験勉強に追われていた。
それでも、夏期講習のクラスでは、席を並べる数人と友達になれた。
一日の講座が終えた帰り道、その仲間達と喫茶店で一息つく時間が楽しみだった。
その仲間の中に、仙台の女子高に通う彼女がいた。

夏期講習が始まって一週間。いつもの帰り道で彼と彼女は初めて二人になった。
喫茶店の片隅で、お互いの学校の話や志望校の話など、たわいのない話しをした。
初めて二人きりで話しているのに、まるで幼馴染のように不思議と馬が合った。
お互いの志望大学も東京の大学だった事もあり、自然と打ち解けた。
とはいえ、彼も彼女も受験生。恋の話など出来るはずも無かった。
それでも何故か自然に、夏期講習の帰り道、その喫茶店で二人は時間を過ごした。
それが当たり前のようになった頃、夏期講習も最終日を迎えた。

最終日の講座を終えた後の電車で彼が地元へ帰る、と知って、彼女は駅まで見送りに来てくれた。
駅のホームで二人は別れを惜しむように、たわいのない話で時間をつないだ。
電車がホームに入り、いよいよ別れのときが来た。
電車に乗り込もうとする彼に、「ちょっと待って!」と言い、彼女は胸のポケットから愛用のシャープペンを取り出し、彼に渡した。
そして彼は、彼女に手を差し出し、初めて彼女と握手した。
電車のドアが閉まるまで、二人は固く手を握り合った。

走り出す電車の窓の向こうで、彼女は泣き笑いしながら手を振ってくれた。
彼も彼女も高校3年、18歳の夏の事だった。
《海の家をめぐるエトセトラ》(2008/7/24 エフエム岩手わけ:ありナイトクルーザー ONAIR)

いよいよ夏休み!
まさしく恋の季節の始まりですね。
でも、夏の恋は、熱しやすく冷めやすい・・・などとも言われますが・・・・
とある砂浜の海岸にちょっと風変わりな「海の家」がありまして、
そこで毎年、様々な男と女の恋物語をが生まれては消えているみたいです。
今日は、そんな『海の家』でのお話です。


その海水浴場は、長く続く砂浜と優しい波が評判で、毎年沢山の海水浴客で賑っている。
そのにぎやかな海岸の片隅にその海の家はある。
海の家といっても、作りは洋風で、料理のメニューも洒落ていて今時の連中にも人気がある。
どこかアイランド・リゾート風の佇まいと気難しいオーナーのこだわりから一癖ありそうな人間がやたらと集まってくる。

一組目のカップルは、ちょっと濃い・・・・と言うより酒が入るとかなりくどい二人だ。
男は、40代後半、一昔前の「チョイ悪系」を今に引きずる、危ないオヤジ。
それでも、笑いのセンスは心得ていて、仲間内には受けが良い。
車は中古のポルシェで、サングラスもポルシェ・・・・。
しかし、酒はいつも芋焼酎・・・・そのあたりが、どうも憎めない。
女は、自称30代。しかしどう見ても40代の「お水」。いつも香水プンプンでかなりきつい!
海水浴に来てるのに水着にならない・・・と言う事は、たぶん年齢を自覚しているんだろう。
だけど、時折見せる笑顔は、どこか有名女優のようで、確かに良い女だ。

お酒が入る前の二人は、それはそれはお洒落な「大人のカップル」なのだが・・・
ビールに始まり、カクテルから焼酎、やがて冷酒へと進むにつれ、毎回大変な醜態をさらす事になる。
どうやら、ふたりとも相当ストレスを抱えているようだ。

先日は、ついにつかみ合いの喧嘩になり、店から追い出されたが、その後、ビーチパラソルの下で抱き合って眠ってた。
悪い奴らじゃないんだが・・・・と、気難しいオーナーもお手上げ。
ある意味、この海の家の名物カップルでもある。
その海の家に来る若いカップルにも、いくつかのパターンはある。

そのカップルは、いわゆる「レゲエ系」のカップルで、とにかく暑苦しい。
20代の前半らしい女の子は、綺麗な目鼻立ちで、一見グラビア系かと思えるほどの抜群のスタイルなのだが、頭はドレッドでかなりのボリューム。
方や男の子は、彼女よりは年上らしく先輩風の口ぶりだが、どうみても20代後半。
真っ黒に日焼けした顔と身体は、どうにも不自然で、どうやら「サロン系」の焼け方だ。
AV男優かよ!・・・と突っ込みたかったが、立場をわきまえて止めた。
そして男の方も、頭はドレッド・・・・本当に暑苦しい。
ここはジャマイカじゃないだろう!

さらにうっとうしい事に、この二人がラブラブの無法地帯・・・。
人目もはばからずキスするは、ハグするは・・・・暑苦しいったらありゃしない!!
そのうち、収まるだろうと、そこにいた誰もがじっと我慢していたが、ラブラブなバカップルの振る舞いは、更にエスカレートしていった。
おいおい、ここで始めるんじゃないだろうな・・・・?
と、みんなのイライラが頂点に達したときだった。
対外の事には口を挟まない変わり者のオーナーも、流石にそのときばかりは切れて、おもむろにホースを握って、二人に水をぶっ掛けた。
「さかりの着いた猫には水だろう」オーナーはそう言って、ホースを振り回した。

バカップルは、服がぬれたの、どうの・・・と文句言ったが、みんなで、「お前ら海に何しに来たんだ!」
と言ったら、すごすごと帰っていった。

ラブラブも度を越すと、はた迷惑・・・・・という典型だ。
その海の家には、いくつかの掟がある。
その一つに、「かっこよくあるべし」という一条がある。
それはきっと、気難しいオーナー自らが心に決めた事なのだろう。
しかし、なかなかカッコイイ男とか、女は少ないものだ。
でも、ときどきカッコイイと思える人がその海の家には集まってきた。

名前も知らない夕方5時のオジサンは、気難しいオーナーが唯一頭を下げる人で、私的にはかなりイケテルおじさんで、本当にカッコイイと思った。
毎週土曜日の夕方5時過ぎに、大型の四駆で浜辺に乗り付けるような
一見嫌味なオヤジだけど、なんだかとってもセクシーなの。
オーナーの話だと60過ぎのお医者さんらしいけど、とても60過ぎには見えない!
しかも、可愛いゴールデンレトリバーと一緒にやってきて、海に着くと、まず最初に犬と一緒に海で泳ぐ・・・・。しかも本格的に泳ぐ・・・。
それから、おもむろに海の家のデッキでビールを2杯立て続けに飲んで、その後、毎回持参するシングルモルトのウィスキーをロックで飲む。
ここのオーナーと二人で海を眺めながら美味しそうにオンザロックを飲む彼の表情が、物凄く素敵だと思った。
私には、到底入り込めない大人の男達の時間だと感じるし、そんな二人と愛犬のいる風景を本当にカッコイイと思う。

やがて日が暮れて、夜の浜辺に人影もなくなる頃、いい加減に酔っ払った夕方5時のおじさんの部下のような「お迎えの人」が来て、おじさんとワンコと車を連れて帰ってゆく。
ちょっと謎めいた夕方5時のおじさんに、私、かなり惹かれてる。
夏の海といえば、やっぱりマリンスポーツ。
なかでもジェットスキー、水上バイクはマリンスポーツの花でしょう。

彼と彼女が出会ったのも、ジェットスキーがきっかけだった。
しかも、あの海の家でのこと・・・・
内陸育ちの彼女は、その当時マリンスポーツには縁のない生活だった。
一年に2・3回、海水浴に来る程度の普通の女の子。
あの日、たまたま洒落た海の家に、女友達3人で初めて入った。
他にはない雰囲気の海の家で、友達と一緒にテンションが上がった。
そこに軟派してきたのが、ジェットスキーをやってる彼の友達だった。

それまでジェットスキーなんて乗ったこともない女の子達だったから、誘われたらやっぱり好奇心が沸いた。乗ってみたいと思った。
男の子が運転するその後に乗っているだけでも楽しかった。本当に面白かった。
軟派してきた男の子にはあんまり興味わかなかったけど、そのジェットの男達の中でも特に物静かな彼がちょっと気になった。
他の男達とは少し囲気が違う・・・。
勇気を出して彼に近づき、どうしたら自分も操縦できるようになれるのか?と聞いてみた。
彼は思いがけない笑顔で、免許を取れば誰でも自由にジェットに乗れる、と教えてくれた。

その後、なんとなく彼と連絡を取るようになって、ジェットについて学習した。
彼に教わりながら、猛勉強して一発で船舶2級の免許を取れた。

免許を取ってから初めて海でジェットに乗った。
借り物だったけど、初めて操縦したジェットは、海の上を自由に走り回るイルカに乗った気分だった。翼を得た鳥のような感覚だった。
今までに感じた事のない開放感に、なぜか涙が止まらなかった。
こんな素敵な感覚を教えてくれた彼に、心から感謝した。

そして、そんな彼との出会いを作ってくれた、あの「海の家」こそ彼女の「はじまりの場所」だと思えた。

とある海岸のちょっと変わった海の家で、今年の夏もまた様々な物語が生まれるのでしょうね。
《ロスト・ヴァージン・ストーリー 夏編》 (2008/7/17 エフエム岩手わけ:ありナイトクルーザー ONAIR)

若い女の子が、恋をして始めてエッチをするのって、やっぱり夏休み前後が多いようですね。その傾向は、昭和の時代から変わらないスタンダードなパターンのようです。

今日は、そんな「初めてエッチ」、いわゆる「ロスト・ヴァージン」に関する様々な風景をお送りしましょう。
「初体験」って恥ずかしいけど、ちょっと甘酸っぱくて切ない匂いがしませんか・・・・?

私は、この辺の一般企業に勤める極めて普通のOLで、趣味はお菓子作りとカラオケ。
車も好きで、愛犬とドライブするのが週末の定番だった。
高校時代は、結構奥手で高校3年の夏までずっと処女を守っていた。
と言うより、農家の長女として生まれ両親が厳しくて、とても男の子とそんなふうに付き合えるような時間は無かった・・・と言うのが本音。
ところが、高校3年の夏休みに、思いがけず先輩と・・・・初めて・・・しちゃった。
あの頃、長女として大事にされ、厳しくしつけられてたけど、私には「自由が無い」と感じていた。それでも兄弟や親戚の手前、ずっと良い子を演じてた。
それが、高校3年夏に限界を超えた。夏休み直前に家出を決意した。
夜中にボストンバッグに荷物を詰めて、家を出たが・・・・行くところが無かった。
とりあえず、友達の家に身を寄せた。その友達の兄貴が彼だった。
思いつめた私を気遣って、彼は私をバイクで海に連れて行ってくれた。
海に沈む夕日を見ながら、私はありったけの思いを泣きながら彼に話した。
彼は、ずっと私の肩を抱いて話を聞き続けてくれた。私はそれが嬉しかった。
だから・・・その夜、彼に誘われるまま、ホテルに泊った。

しかし、その初体験が凄かった!
それまで抑えていた「何か」が、彼とのエッチで爆発した感じだった。
恥ずかしいんだけど・・・・エッチって、本当に素敵だと感じた。
「初めてのエッチって、痛いだけ・・・」なんて、よく聞くけど、私は初めてのエッチで本当に感じちゃった。私は、それ以来正直エッチが好きになった。
初体験の彼とは、今もたまに会ってはいるけど、そろそろ終わりの予感・・・。

今の本命の彼は、年上のおじさんで・・・・エッチだけの関係だけど、
これはこれで捨てがたいんだなぁ~。
なんだか、みだらな女の話に聞こえるかもしれないけど・・・・きわめて私は普通です。

僕は今、とある工場勤務の27歳。妻一人、娘一人。
趣味はバイクで、休みのたびに仲間達とツーリング。
時には一人で単独ツーリング・・・なんてこともある。
バイク好きとはいえ、けして無茶やヤンチャはした事が無い。
純粋にバイクが好きなだけなんだ。
僕が初めて女性とエッチしたのは、就職して2年目の夏休み。
3人の仲間と4台のバイクで北海道一周ツーリングをした時だった。
普通、バイク乗りの宿は、どこにでもあるユースホステルで、ただ寝るだけの宿だ。
あの頃は、安く泊れるどこにでもある施設で、全国からバイク乗りやバックパッカーが、日が暮れる頃になるとみんなユースホステルに集まってきた。

あの日、僕たちは留萌のユースホステルに辿り着き、一息ついたところに、彼女は一人でその宿にやってきた。
しかも、到底女の子が乗らないようなでっかいバイクで、彼女はそこに乗りつけた。
神戸から来たという彼女は、本当に綺麗なお嬢さんだった。
僕は、一瞬で彼女に恋をした。
いきなり話しかける僕に、最初は警戒していたけれど、同じバイクのりということもあって、次第に打ち解けた。
翌朝、稚内に向かうと言う彼女と再会を誓い、僕達は旭川に向かった。
しかし、僕はどうしても彼女の事が気に掛かり、仲間と別れ稚内にきびすを返した。
どうしても、彼女とこのままで終わりたくはなかった。
宗谷岬で彼女に追いつき、僕は駄目もとで彼女に気持ちを打ち明けた。
彼女は、駄々っ子をいさめるような優しい笑顔で僕を受けとめてくれた。
そして僕達は、その夜、小さなツーリングテントの中で抱き合った。
僕の初体験は、宗谷岬の公園の片隅のテントの中だったが、そこは、僕と彼女にとって記念すべき神聖な場所になった。

その後、神戸の彼女の両親に猛反対されながらも、僕達は結婚した。
新婚旅行は、もちろん・・・北海道のバイクツーリングだった。

私は今、大学4年生だけど、私の初体験は、ちょっと切ない。
私の「初めて」は、中学2年の夏だった。
その頃の私は、思春期特有のわけもない苛立ちの中にあった。
理由もなく両親や学校に反抗し、少々グレていた。
それでも、親にとやかく言われたくないので、そこそこに勉強はしていたし、部活など、やるべきことはちゃんとやっていた。
要するに中途半端な「不良」だった・・・・のかな。
だから、好きになる男の子も、やっぱりちょっと悪っぽい感じに惹かれた。
中学2年の夏休み前っていうのは、なんとも危険なにおいがする季節。
今でも7月になると、何故か心が騒ぎ出す。
あの時もそうだった・・・・・。
夏休み直前の土曜日の夜、塾帰りだった私は、真っ直ぐ家には帰りたくなかった。
だから、夜の公園のブランコでぼんやりと星もない空を見ていた。
その公園の隅で、同じ中学のワルで知られる彼が隠れてタバコを吸っていた。
いたずら半分で、「こらー!」と声を掛けたら、彼は飛び上がって驚いた。
それが可笑しくて大笑いしたら、彼は顔を真っ赤にして怒った。
そんな彼が、とってもかわいくて思わずキスしちゃった。
そしたら、彼も納まりがつかなくなって・・・・・夜の公園で私と彼は初めてのエッチを試みた。
だけど・・・・中学2年生の私たちには、かなりの大事業で・・・・
結局、それは未遂に終わった。
今思えば私、かなり強引だったかも・・・・・。
本物のロスト・ヴァージンは、それから間もなく別の人だったけど、
私としては、あの日こそが「初体験」だったような気がする。
あの夜の出来事が、彼のトラウマになってなければいいんだけど・・・・。

僕は今、40代のおじさんだが、僕にも初体験にときめく若い頃があった。
しかし、最近の若い人たちと違って、初体験は19歳・・・・とだいぶ遅かった。
あの頃は、夢だけで生きていけると錯覚するような何でもありの時代で、僕もご他聞に漏れず、身の程知らずの夢に向かってその日暮らしの毎日を送っていた。
しかし、当然のように夢だけでは食えない日々が続き、現実の厳しさも知った。
夢と現実の狭間に悩んでいた頃、相談相手になってくれたのが年上の彼女だった。
彼女は、僕が勤める仕事場の先輩で、いつも笑顔の優しいお姉さんのような人だった。
だから僕は、様々な悩みや愚痴を彼女にぶつけていた。
彼女はいつも優しい笑顔で、僕の話を受け止めてくれた。
だから僕は、いつの間にか彼女には何でも話せる・・・と思い込んでいた。
ある日の仕事帰り、彼女と居酒屋で飲むことになった。
酒の勢いで、最近気になる女の子の話を切り出してしまった。
彼女は、最初笑いながら、『どんな女の子なの?』などと、聞いていたが・・・・
僕が、その女の子の話ばかりしていたら・・・・急に彼女が泣き出してしまった。
最初は、彼女がどうして泣いているのか、全然分からなかった。
酔っ払った彼女に「この鈍感野郎!」と怒鳴られて、初めて分かった。
僕は、彼女だから甘えられていたんだ・・・・、とそのとき分かった。
その夜、酔った勢いも手伝って、彼女に導かれるまま、僕は初めて男になった。
その時の詳しい成り行きは、酔っていたせいで、残念ながら覚えてはいない。
・・・・・ということにしておこう。
《シングル・マザー物語~其の壱~》
(2008/7/10 エフエム岩手わけ:ありナイトクルーザー ONAIR)

はからずもシングル・マザーになったけど、それでも強く明るく逞しく生きる女性ってやっぱり素敵ですよね。
貴方の近くにもそんなシングルマザー、いませんか?
今日は、思いがけず波乱に満ちた結婚と離婚、そして激変する仕事環境の中を細腕一本で生き抜く愛すべきシングルマザーのお話です。

彼女は今、バツイチ・子供一人。県内屈指のホテルの営業ウーマン。
働く女の鏡のような「強い女」と周りから評価されていた。
しかも、ホテルマンらしく常に笑顔を絶やさない、本当に素敵な女性だ。
もちろん仕事も出来る。
大企業の社長であろうが、政治家だろうが、物怖じしない度胸もある。
同僚や後輩達からも慕われるハンサム・ウーマンといったところ。

そんな彼女だから、若いときから元気で、明るく誰からも好感をもたれる人気者だった。
だから彼女が結婚すると決まったとき、彼女に結婚を決断させた男って、どんなに凄い男なのだろう・・・・と皆一様に興味を持った。
しかし・・・・、これが「礼儀知らずの軟弱な男」と噂される「ショーモナイ男」だった。

彼女と付き合いの長い地元企業の社長さん達は、「おい、本当にあの男でいいのか?」
「あの男だけは辞めとけ!」「考え直せ。」と言った。
みんな彼女のためを思ってそう言った。
「彼なら大丈夫」とは、残念ながら誰も言わなかった。
それでも彼女は、二人きりのときに見せる彼の優しさに心から幸せを感じていた。
まぁ、彼女が決めた男なら・・・・、いつかは変わるだろう。
きっと彼女が彼を変えてくれるだろう・・・と、みな認めざるおえなかった。

彼と彼女の結婚式は、ホテルマンの彼女らしい素敵なものだった。
彼女には幸せになって欲しい。式に出席した誰もがそう願っていた。
しかし・・・・案の定、結婚後わずか1年半、出産後半年で、二人は破局した。

ホテルの敏腕な女性営業マンの彼女と離婚した彼にも、それなりの事情があった。
大学を卒業後、広告会社に就職したくて東京の大手広告会社を受けまくったが、結局中規模の広告会社しか受からなかった。
その会社で2年働いた後、故郷の地元広告会社に親戚のコネで移る事が出来た。
しかし、その会社の得意先は、地元企業が中心で、広告会社の営業マンとはいえ、毎日の仕事は御用聞きのように社長様方のご機嫌伺い。
そしてお付き合いのゴルフ、マージャン、お酒・・・という塩梅。
理想と現実のギャップで、心も身体も少々すさんでいった。
時には、酔った勢いで得意先のお偉いさんにタメ口をきいたり、
接待を忘れてゴルフやマージャンで真剣に勝ちまくった事もあった。
このあたりでかなり評判を落としたらしい。
その後仕事が減り、社内でもくすぶっていた。

そんな時、思いがけず、地元ホテルを会場にしたパーティ・イベントを任された。
そこで窓口になったのが、彼女だった。
久々の仕事らしい仕事に、彼は全力で取り組んだ。
ホテル側の彼女の細やかな協力もあって、そのパーティ・イベントは大成功した。
その達成感を共有した彼と彼女は、その夜・・・・達成しちゃった・・・・らしい。

それまで仕事一筋だった彼女は、恋愛経験も男性経験も少なく、彼の自然な所作や優しさにすっかりと心を奪われた。「結婚するしかない・・・・」
彼女は、そう思い込んでしまった。

しかし、彼には別の一面があった事を、その時彼女は知る由も無かった。
ホテルの女性営業マンの彼女と広告会社勤務の彼の新婚生活は、極めて穏やかで幸福だった。
結婚後3ヶ月で彼女は妊娠した。家族や仲間達は心から祝福し、無事の出産を願った。
彼も最初は彼女を気遣い、家の様々を手伝ってくれたが、しだいに「仕事が忙しいから・・・」と、帰りが遅くなったり、出張が多くなった。
顔の広い彼女は、それとなく広告関係の仲間に彼の最近の様子を相談してみた。
すると、頻繁に出張するような状況でも、夜遅くまで仕事に追われる状況でもないらしい。

ははぁ~、「女だな・・・」と彼女は思ったそうだ。
しかし、妻が妊娠中に旦那が浮気に走る・・・という傾向は、ままあるらしい。
多少の浮気ぐらい、詫びる気持ちがあるなら許してやってもいいか・・・。
それもこれも、まずは無事に出産してから決着をつけよう。
その時は、彼女もその程度の気持ちでいた。

結婚1年目に彼女は、無事に男の子を出産した。
それから子育ての戦いの日々が始まったが、彼の深夜帰宅や外泊は収まる気配がない。
子育てのストレスもあって、ある日彼女はヒステリックに彼を問い詰めた。
「会社に確認したら、出張するような仕事も深夜までの仕事もないらしいじゃない。」
「外に女がいるんでしょう!? 正直に言いなさいよ!」
すると彼は・・・・
「嘘をついてたのは謝るけど、女なんかいないよ・・・  ただ・・・」
「ただ、なによ?!」

「ごめん。俺には『彼』がいるんだ・・・」「俺、彼を愛してるんだよ。」
『彼』がいる・・・・という言葉に、彼女の顔から血の気が引いた。
「彼」を愛してるというその言葉に、ただ・・・・呆れた。
彼は、両刀使いの・・・『ゲイ』だった。
広告会社勤務の彼が、『ゲイ』だと知らされて、彼女は悩んだ。
しかし、彼は今付き合っている男性と別れるつもりはないらしい。
それならば・・・・と、彼女は結婚後まだ1年半で、長男が生まれたばかりだったが、
きっぱりと離婚しよう、と決めた。彼も当然同意した。

それから彼女のシングルマザー生活が始まった。
両親の助けもあって、子育てと仕事の両立はまずまず上手くいっていた。
気を抜けない生活のせいか、仕事にも集中できて会社での存在感は以前にも増していった。
地元屈指のホテルの敏腕女性営業マンとして、彼女は確実に実績を積んでいった。
その頃には、もうホテルの顔にさえなっていた。

しかし・・・不況の波は容赦なく地方経済を巻き込んでいった。
彼女が勤めるホテルも、その波に飲み込まれ、会社ごと身売りする事になった。
非情にも信頼する取締役達は、全員追放された。が、現場の社員達は全員残された。

ホッとするのもつかの間、新しい幹部からいきなり呼び出され、ホテル・グループが関連するリゾート施設への異動を命じられた。
驚いた事に、支配人への大抜擢だった。
新しい経営陣にまで彼女の評判は届いていたらしい。
しかも、その頃長男に喘息の兆候があったので、自然豊かなリゾート施設への異動は願ったりかなったりだった。

旦那だった『ゲイ』の彼は、仙台の会社に移ったと連絡があったが、その後は音信不通だ。
今は、今年4歳になる長男と二人、山小屋暮らし。
リゾート施設の営業はイマイチだが、これからじっくりと盛り返そう・・・・と開き直った。
敏腕で楽天的な女性営業マンの彼女は、今、ようやく一段落ついた・・・と、先日、手紙で知らせてくれた。

頑張れ!シングル・マザー達!!
《依存症な二人》(2008/7/3 エフエム岩手わけ:ありナイトクルーザー ONAIR)

いつもは優しくて頼りになる彼でも時々、どうにも我慢できない癖や習慣がある・・・
という彼への不満をお持ちの方も多いのでは・・・・
もちろん、男性陣もこれだけは勘弁して欲しい・・・という彼女の我慢ならない一面・・・
と言うものもあるでしょうね。
今日の彼女の悩みは、イケメンで優しい彼なのに・・・どうしようもない一面のお話です。

彼女は25歳の美容師。この街でも人気のサロンに勤めて4年になる。
美容師としての腕には店のオーナーからも折り紙つき。
そりゃ、専門学校では遊んでる同級生とは一線をおいて、人一倍修行したつもりだ。
ちょっと見、モデル系の顔立ちとスタイルなんで、その辺も手伝ってお客さんの受けもいい。
最近は、男性のお客さんも増えたような気がする。ウフフ・・・
お蔭様で、最近は給料もかなり上がった。オーナーには心から感謝してる!

美容師になりたての頃は、そりゃぁ~ひどかった!
本当に安い給料で、とてもまともな生活なんて出来なかった。
だから、サロンの仕事が終わってから、パーティ・コンパニオンのバイトしたり、人には言えない電話のアルバイトもした。
友達に誘われてキャバクラのバイトをしてて、そこで偶然、今のオーナーに出会った。
「一流になりたいなら、その道だけを進め!寄り道するな!」と叱られたっけ・・・・。
でも、あの時のオーナーは、素でスケベ親父だったような気がする・・・・。
まぁ、それはそれ。今は心から信頼できる「愛すべきボス」だ。

そして、彼女の彼氏は、そのボスの友達。
10歳も年上だが、これが自分で言うのも恥ずかしいけど・・・・かなりのイケメン。
ジャニーズ系の30代・・・ていう感じかな・・・・・。
オーナーはヘビメタ系だけど・・・なんで二人が友達なのか、ちょっと不思議・・・。
だけど彼は、一度結婚に失敗しているいわゆる「バツイチ」。
でも仕事は真面目に古着屋を2軒経営している。最近は結構人気になってるみたい・・・。
イケメンで、仕事も真面目で、彼女には優しく、頼りになる・・・。
なんの申し分も無い彼なんだけど・・・・ちょっと困った趣味がある。
それが・・・・パチンコ・・・・。
毎日、閉店までパチンコをして帰ってくる・・・。パチンコが悪いわけじゃない。
ほとんど彼女と同棲しているような状況で、なんで、毎日閉店までパチンコなの?
分けわかんない・・・。
彼女の彼は、イケメンで優しく、古着屋の経営者としてもそこそこ・・・・。
だけど、彼女が家で待ってるのに毎日弊店までパチンコ屋に通う、いわゆるパチンコ依存症。
パチンコで勝った日は機嫌良く、負けた日はほとんどDV野郎・・・。
彼女の機嫌の悪い日に、彼が負けて帰ると・・・・そりゃもう・・・修羅場!

先月、その修羅場が最高潮に達し、殴る蹴る・・・ぶつける壊す・・・の大乱闘でついにお隣さんがパトカーを呼んでくれた。
お隣さんは、イケメンの彼のファンだから、おまわりさんに私のヒステリーを吹き込んだらしく警察ではいつの間にか私が悪者になってた。はぁ~・・・・。
一事が万事、二人の間に揉め事があると、年下で強気の私がいつも槍玉に上がる。
問題は、そんなことじゃない。
彼のパチンコ依存症が、全ての原因なのよ!

彼の店の売上は最近好調なので、余計いけない。
どうもこの頃は、昼間仕事をサボってパチンコ屋に行ってるみたいだ・・・
と、スタッフがそっと教えてくれた。
私が休みの日にも「仕事」だといって、店に顔を出すだけで、もっぱらパチンコらしい。
夜11時過ぎに彼が黄昏て帰った日に、
「お願いだからパチンコを止めて」と彼女は泣いて頼んだけど、彼は「俺の唯一の趣味を奪わないでくれ!」と逆切れした。

でも・・・そんなふうに二人で言い争った後は、決まって彼は優しく彼女を抱いて「許しておくれよ・・・」と耳元でささやく。だから、思わずその場を許す事になる。
彼はずるい・・・と彼女は言うが・・・・彼女はゆるい・・・。もとい・・・甘い。
彼がパチンコ依存症だということに、彼女も最近気づき始めた。
彼は、彼女が勤めるサロンのオーナーの友人なので、思い切ってオーナーに彼のパチンコ依存症について相談してみた。
オーナーの話によると、彼のパチンコ好きは、相当なものらしい。
そのキャリアは、高校時代にさかのぼるほどで、20代の不遇の時代にはパチンコで生活してたくらいだという。
古着屋を始める前には、パチンコの何とか軍団のメンバーでもあったとか・・・。
彼からはそんなこと一切聞いたことも無い。

それほどまでにパチンコが好きなのか・・・と改めて知った。
そんなパチンコ好きの彼を愛したのは私なんだ・・・と彼女は気付き、彼からパチンコを奪う事を諦めた。
そして、彼を理解するために彼女は、彼が愛するパチンコをやってみる事にした。

これがまた、面白い!楽しい!
彼女が初めてパチンコをした日、思いがけず数万円も勝ってしまった。
彼の隣で閉店までパチンコに熱中した。
彼はその日、あいにく数万円負けたが、「私が取り返してあげた。」と上機嫌だった。
二人で一緒にパチンコをして、一緒に家に帰る・・・。なんて幸せなんだろうと彼女は思った。
そのまま家に帰るのが惜しくて、二人は居酒屋で飲んだ。

そこで彼女は、彼が愛するパチンコを止めて・・・と言った事を謝った。
「これからは私もあなたと一緒に毎日パチンコ屋さんに行くからね。」と
彼女はこれ以上無い幸せそうな笑顔で彼に言った。
しかし、彼の表情は曇り、嫌な予感が背中を走った。
パチンコ依存症というよりも、パチンコを愛する彼を愛した彼女が、事もあろうにパチンコにはまった!
彼女が始めてパチンコをして数万円勝った日から、二入は毎日のように仕事終わりにパチンコ屋に通った。
当然勝ち続けることなど無く、しだいに負けが込んできた。
時には二人合わせて1日で十万円以上負けた。
彼女はあっけらかんとしていたが、彼は益々嫌な予感を募らせた。

普通に考えて、このままでは二人の生活は「破綻」する。
正直、二人の収入のほとんどをパチンコで使っている。
二人の身の回りのものは、パチンコの景品でまかなっているが・・・・
冷蔵庫の中には、もうビールしか入っていない・・・。
彼女をパチンコに誘い込んだ・・・・いやパチンコに追い込んだのは・・・・俺だ・・・
彼は、そのとき、パチンコ依存症の恐怖を実感した。

このままでは、またしても幸せを台無しにしてしまう。
このままでは、彼女も自分も駄目になる。
パチンコを止めよう!そして彼女にも止めさせよう。
彼はようやくそう決心した。

パチンコに負けた帰り道、いつかの居酒屋で彼女と二人、真剣に話し合った。
「俺はもう金輪際パチンコを止める。だからお前も、パチンコを止めてくれ!」
彼は彼女にそう言って頭を下げた。
二人の幸せのために、もう二人ともパチンコを止めようと彼女に語った。
しかし・・・・
「私は止めないわ。貴方が止めるのは大歓迎だけど、私はこれから取り返さなくちゃ」
そういって、ビール大ジョッキを一気に飲み干した。
「な、何を、取り返すんだろう・・・・」その時彼は初めて、彼女を怖いと思った。

さて、彼と彼女に、本当の幸せは訪れるのだろうか・・・・・。